ブルアカ×艦これ短編集   作:H2O(hojo)

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桐藤ナギサ×ウォースパイト


戦争を忌むもの

6月。キヴォトス中で雨が降りしきる季節である。ティーパーティーのテラスでは曇天によって薄暗いトリニティの景色を横目に、2人の少女がお茶会を催していた。

 

「本日はあいにくのお天気ですが…こうして貴女とゆっくり紅茶を楽しめること、嬉しく思います。ウォースパイトさん」

 

「えぇ、お招きいただき光栄よ、ナギサ」

 

ナギサが用意した特注の椅子に座り、彼女の淹れた紅茶を嗜んでいるのは、クイーンエリザベス級戦艦2番艦、ウォースパイトである。彼女は同じティーパーティーの聖園ミカ、百合園セイアを除けば、ナギサが対等に会話を出来る数少ない人物である。

 

「この季節は古傷が痛むのですよね?調子はいかがでしょうか?」

 

「お気遣いありがとう。この身体に慣れる前は煩わしかったけれど、もう慣れたわ」

 

「左様ですか。それを聞いて安心しました」

 

彼女は古の戦いの記憶を持つ艦娘であるため、梅雨時になると戦いによって負った古傷が痛むのである。ナギサはそのことを心配していた。だが彼女も艦娘になってそれなりの時が過ぎており、その痛みにも慣れた様子であった。ナギサはそれを聞いて安心する。気遣いのできる彼女は、ここに来るまでに古傷の痛みを感じているのではと心配していたのである。

 

「お茶のお供にお菓子を用意しましたので、どうぞ召し上がってください」

 

「あら、シュークリームかしら?Thank you very much indeed」

 

「えぇ、お好きとお聞きしましたので」

 

「フフッ、相変わらず気が利くわね」

 

ナギサは今回のお茶会のために、ティーパーティー御用達の洋菓子店からシュークリームを注文していた。ナギサはどこからかウォースパイトの好みを聞きつけ、わざわざこのお茶会のために用意したのである。そしてウォースパイトはナギサのその気遣いに、感謝をしていた。

 

「最近色々と業務が忙しそうだけれど…ちゃんと休めてる?」

 

「・・・・・・。」

 

「はぁ…その顔は休めていないのね。少しは業務を分担しないとダメよ?」

 

「ですがミカさんがティーパーティーのホストを剥奪され、セイアさんが万全の状態ではない今、私がホストとしてトリニティを…」

 

「これは重症ね…」

 

エデン条約のごたごたの後始末でナギサに業務が集中しているため、ウォースパイトは彼女がちゃんと休めているのかを心配していた。ウォースパイトの気遣いの言葉に、ナギサはバツが悪くなったのか顔を逸らしてしまう。そしてウォースパイトの予想通り、ナギサはその責任感から他のティーパーティーのメンバーの分の仕事もやっていたのである。

 

「私もTeacherから事のエデン条約の顛末は聞いたわ。いつ見ても嫌なものね…互いに憎しみ、争い合うというのは」

 

「そう…ですね。今後そのようなことが起こる事のないように、努力したつもりだったのですが…」

 

「今回のことは貴女の力不足によるものではないわ。悪かったところは反省して、次につなげるとしても、そこまで気に病むことはないのよ」

 

「はい。そうですね…」

 

ウォースパイトは先生からエデン条約の詳細を聞かされ、争いに対して忌避を抱いていた。多くの戦場を経験してきた彼女だが、その名が示す通り争いに関しては思うところがあるのだ。そして今回の事態はナギサ1人の責任ではないとし、気に病むことはないと彼女を励ますような言葉をかけた。

 

「ミカのことは金剛に任せておきなさい。彼女、あの娘には特別目をかけてるみたいだから」

 

「はい。彼女のことは私も信頼しておりますので、そのつもりです。ですがセイアさんのほうは…」

 

「セイアのことはネルソンに任せたわ。彼女、セイアと仲が良かったでしょう?」

 

「えぇ…まぁ、そうなのですが…。病み上がりのセイアさんには少し刺激が強いのでは?」

 

「そうかしら?あの娘退屈そうにしてたし、心配し過ぎだと思うわ」

 

ナギサが同じティーパーティーであるミカとセイアを心配している様子を察したウォースパイトは、2人のことは金剛とネルソンに任せておけばいいと言って、ナギサを安心させようとしていた。ナギサは金剛のことは全面的に信頼しているようだが、病み上がりのセイアに、あのネルソンと共に過ごさせることを心配していた。

 

「あら…晴れたわね」

 

「本当ですね…流石は幸運艦」

 

「幸運艦と言っても、結局はボロボロになるまで働かされるだけよ」

 

「それでも、あまり運に恵まれない私には羨ましい限りです」

 

2人がテラスで話していると、梅雨の季節には珍しく太陽が顔を出し始める。ウォースパイトがこの場を訪れたことによって、晴れ間が差したのを見て、ナギサは彼女のことを流石は幸運艦だと感心する。だが彼女は二度の大戦をボロボロになるまで戦い、今も古傷が痛むことをやはり煩わしく思っている様子であった。だがそれでも、運に恵まれないナギサにとっては、幸運というだけで羨ましいものであった。

 

「ところで…先ほどから腕に抱えているそちらのキャラクターは一体…?」

 

「ああこれね?Shoppingの途中に見つけたの。Cuteでしょ?」

 

「は、はぁ…?」

 

「この子「ボクカワウソ」って名前らしいわ。名前も素敵ね!」

 

「ヒフミさんもこのようなキャラクターがお好きでしたね…。どうもキヴォトスの流行には疎くて…」

 

先ほどまで真面目な話をしていたウォースパイトだったが、話がひと段落したため、ナギサはようやく彼女がずっと脇に抱えていたぬいぐるみについて指摘する。そのぬいぐるみはカワウソの見た目ながら、何とも言えない表情を浮かべており、可愛いというには疑問の残るキャラクターである。どうやらウォースパイトはその人形を買い物中にたまたま見つけたようで、ボクカワウソのことをいたく気に入った様子であった。そしてナギサはボクカワウソのデザインを見て、ヒフミが大好きなキャラクターであるペロロを連想していた。

 

「貴女の分も買って来たわよ」

 

「あ、ありがたく頂戴しますね…」

 

おしまい

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