チートハンターズ 〜このゲームのチートは全て狩り尽くす〜   作:新川翔

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亡霊を追って

 

 

 

 

 真実が知りたい。

 きょうだいがいなくなった真実が知りたい。

 そのためだったらなんでもする。

 

 

 

 

 次の日の昼、新しい戦い方を得た俺のレベルは80にまで到達した。

 

「お待たせ。あ、配信してまーす」

 

 街中で葵と共にキリュウさんと他のメンバーであるキリュウさんとオータムさんを待っていると、オータムさんが先にやってきた。

 彼女の服装は一昨日の和服とは打って変わって洋風なカウボーイのようなものになっていた。

 長い髪はショートカットに、髪色は金色に、さらにカウボーイハットを被り、上半身は青いインナーにブラウンのジャケット。腹は露出していてうっすら腹筋が割れていた。また、ジーパンを着用しており、背中には二つのクロスボウがある。

 どうやらこの短期間で装備やスキル、恐らくステータスさえも変えたらしい。

 妖艶な前回の雰囲気とは打って変わり、まさにカウボーイのような陽気な雰囲気があった。

 

「お疲れ様です。色々変えましたね。今度はかっこいいって感じだ」

 

「ははは、ありがとう。どうだい?いいセンスをしているだろう?」

 

「ええ。パリでも食っていけますよ。それで、ステータスとかも変えているでしょう?どういう感じなんですか?」

 

「ああ、今回は支援系でまとめてみたよ。後で詳しいビルドを送っとくね」

 

「ありがとうございます。……それで今、何人見てます?」

 

 チートハンターズの活動の一つとしてチーター討伐をエンタメ化するための配信がある。そして配信は視聴者数が多ければ多いほどいい。まだ始めたばかりではあるものの、現状を知っておきたかった俺は質問することにした。

 

「うーん。56人だよ」

 

 56。

 

「…………」

 

 俺は思わず黙ってしまった。

 

「めちゃくちゃ見てるじゃないですか!?!?!?!?!?!?」

 

「そうだよぉ!?!?!?!めちゃくちゃ見てくれてるよぉ!!!!!!」

 

 思ったよりも見てくれている人がいたから。

 

「え、私さ、あんまり詳しくないんだけど、それってすごいの?」

 

 興奮に置いてかれている葵はその理由を聞かざるを得なかった。

 

「すごいぞ。超すごい。俺とオータムさんはネットで有名って訳でもない。普通に配信を付けたら一桁レベルだ。もしかしたら誰も見ないかもな。でももう二桁、しかも50人台。かなり順調だって言える!!!」

 

「そ、そうなんだ。……てことは、1万人以上集めてるのって、すごいの?」

 

「ああ、1000人でもかなりすごい」

 

 そんな盛り上がっている俺たちを遠くから見つめる黒い影があった。

 

「おー当アカウント、バズりの立役者じゃないか。ほら、こっちに来て来て」

 

 それを見つけたオータムさんが手を振ってこっちに来るように誘導している。

 

「あ、今、配信してるから」

 

「ああ、そうか」

 

 彼はどうしてか不満げだった。明らかにばつの悪そうな、機嫌の悪い顔をしている。

 

「はい、それじゃあ、軽く説明。彼はキリュウ、んで私、本持ってるのがサム、そして今回の協力者ホリーハック」

 

 オータムさんが俺たちの紹介をしていると、キリュウさんが突然不自然な動きをし始めた。手を下げたり上げたり、眉間に皺を寄せ、何をすべきか分からない様子だった。

 

「これは、どうすればいいんだ?ポーズでも取ったほうが良いか?」

 

「何もしなくていいよ~。無理矢理傷跡残そうとするとかえって面白くないし」

 

 どうやらカメラを前に何か爪痕を残そうとしていたようだ。

 

「そうか……そうか……」

 

 彼は真顔に戻って不自然な行動をやめた。

 

 

 

 

 

『新米探偵ワトソンベーカリー 〜亡霊を追って〜』

 それが、チーターの出てくると報告のあったサブストーリーだ。このサブストの終盤、ボスを倒した瞬間にチーターは現れる。俺たちの目的はその終盤に到達し、チーターを倒すことだ。

 

「うん、初めまして、求人で来てくれたのはキミだね!」

 

 このサブストーリーは主人公『ワトソン・ベーカリー』が載せた酒場の求人応募にプレイヤーが応募するところから始まる。昨日レベル上げをした場所の近くにある港町の路地裏が集合場所で、今回は俺がサブクエストを受注し、秋ヶ原さん、キリュウさん、葵の三人が俺のパーティに入る形で攻略する。

 

「私はワトソン・ベーカリー!!人探し専門の探偵だよ!!!よろしくね!!!助手候補君!!!!」

 

 助手候補とは俺のことだ。

 俺の目の前に立つ彼女はこのサブストーリーの中心人物『ワトソン・ベーカリーだ』。

 溌溂な声、髪は輝くような金髪、透き通るような水色の目、一般的な探偵のようなベージュでチェックの鹿撃ち帽、マント、短パン。しっかりとアイロンがけされたワイシャツを着用している。

 

「よろしく、サムだ」

 

「今日の仕事も人探しです!!!!」

 

 彼女はしまいには虫眼鏡を取り出し、目を輝かせながら張り切っている。いかにも新米みたいなフレッシュな様子が思わず応援したくなる。

 

(コテッコテだなぁ)

 

 それはそれとして、よくあるキャラ付けだな、と思っていた。

 

「元気だな。まぁ、焦らずやろうか」

 

 このゲームでNPCとはAIがサブストーリーに沿って会話をしてくれるので、実際に会話をしているような感覚でストーリーを楽しむことが出来る。ただ、突飛な出来事や言動には無反応らしいが。

 基本的な話の流れはありつつもプレイヤーの言葉にしっかりと返答してくれている。

 

「む、もしかして、私のこと新米探偵だと思ってますか!?」

 

「え、そうじゃないの?」

 

 既に俺はこのサブクエストについて一通り調べている。

 確か彼女はそういう設定だったはずだ。というかサブタイトルに書かれている。

 

「むーーーー」

 

 すると彼女は頬を膨らませて遺憾の意を示してきた。二次元じゃなきゃ成立しない表現方法である。

 

「ああ、悪かった悪かったよ、凄腕探偵さん。とっとと事件を解決しちゃいましょう」

 

 俺は厄介なことになったと考えながら、笑顔で彼女をたしなめる。

 

「ん……。中々トゲがあるけど、確かにそうだね。まぁ、扱いにくい助手さえも見事に扱ってみます!」

 

 すると彼女は大通りの方へ歩き始める。

 

「行くよ、ひねくれ助手君、れっつごーーーー!」

 

 彼女の号令に合わせて俺たちは歩き始めた。

 

「相手NPCだよ」

 

 すぐに、後ろに控えていた葵が、肩をツンツン、と指で叩いて話しかけてきた。

 

「急にどうした?」

 

「ん?お仲間さんも一緒なんだね。全然大丈夫!!!こういうのは人が多いほうが良いからね!!!それじゃあ、改めて現場にレッツゴー!!!!!」

 

 俺たちはサブストーリ―の目的地である森へ到達した。

 

 この森は『黄昏の森』と呼ばれており、深緑の葉を持つ木々が生い茂っている。

 もはや日の光はほとんど入らずに、ゲームの中は昼なのに、日が沈んでいるような錯覚さえしてしまう。

 

「おさらいをしようか。事件の被害者は三人、酒場の店員ラニさん、漁師のシャンさん、主婦のイフさん。彼らはこの森に導かれてそれ以降行方不明になっちゃったんだ。夜、誰もが寝静まった頃、ひとりでに起きて、誰に何も言わずこの森に入っていったんだって。そういう目撃情報が多数あったの」

 

 この森には獣道もなく、俺たちは道なき道を、そこら中に這っている木の根を超えながら歩むことになる。

 

「だから、この森に行方不明の人たちの手がかりがあるんじゃないかなって、踏んでいる訳なんだけど……」

 

 すると目の前に朧げにだが、白い人影が現れた。

 輪郭は朧げでそれが少女の形をしていることしか分からない。

 

「あれは……?」

 

「幽霊ですね」

 

 きっぱりと答える。

 攻略によると、この時点で幽霊が出現して、幽霊に対するリアクションをしてから、主人公たちがそれを追うことになる。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 すると右腕にとんでもない速さで探偵がくっついてきた。

 どうやら新人探偵は幽霊がかなり苦手らしい。距離が近く、目と鼻の先で上目遣いをしてくるので少々照れてしまうが、そんなことは一切顔に出さないよう努めながら、冷静に会話を切り出した。

 今はチーター討伐の最中だ。気を緩めてはならない。

 

「凄腕探偵さん。まさか幽霊、苦手なんですか?」

 

「いえいえいえいえいえいえいえいえいえ!!!!そ、そ、そんなことないですよ。え、助手君、幽霊とか大丈夫なタイプ!?!?」

 

「ええ、めちゃくちゃ大丈夫です。ピエロとか殺人鬼人形とか、全然いけます」

 

「え、私結構無理」

 

 葵はぬるっと会話の中に割り込んで映画の好みを告白し始めた。

 

「そういえばそうだったな。小学校のころだっけか、号泣してたの」

 

「じょ、じょじょじょじょ助手君、今は私と話すターンじゃないかい!?」

 

 するとワトソンが負けじと彼女に対抗してくる。

 視線を感じて振り向くと、その様子を見ているキリュウさんとオータムさんがニヤニヤと笑っていた。

 

(大人たち、楽しんでるな。後で金でも取ろうか)

 

「ほらほら、とにかくあの幽霊を追うよ!!!多分、この事件の手がかりだと思うんだ!!あんな人間っぽい幽霊、余程の理由がないと出てこないし!!!」

 

 俺の腕にくっつく探偵の提案を飲み、勘所を引っ張るような形で進んでいくと、新たな人影が見えた。

 今度の姿は黒いドレスを着た少女だ。

 

(なんだ。アレは……?)

 

 それは俺が調べたストーリーにはいなかった存在だった。

 

「凄腕探偵さん、あの幽霊見えます?」

 

「えっ!!!???どこ!?どこなの!?」

 

 先程とは打って変わって、彼女には黒い幽霊は見えないようだった。

 

 

 この出来事はとある記憶を蘇らせる。

 

 

 ゲームを始めたあの時、ガイドのNPCもチーターには無反応だった。

 NPCはシナリオにないことを認識しない(・・・・・)

 

「チーターか!」

 

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