チートハンターズ 〜このゲームのチートは全て狩り尽くす〜   作:新川翔

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二刀、抜剣

 豪速で迫る少女の斬撃、それにカウンターを仕掛ける二刀流の剣士。

 二つの影が交差した後、ダメージが与えられたことを示すエフェクトが舞う。

 

「………………ちっ」

 

 そのエフェクトは魔剣を持つ少女の首から発せられたものだった。

 それを受けた彼女は呪いの噴射で方向転換を行い、再び男へと斬りかかる。

 再び行われた交差。

 その結果も前回のものと変わらない。

 少女はダメージを負い、男は無傷。

 

「接近戦じゃ勝てない」

 

 二度の交差で、少女は男の強さを看破した。

 彼は空中であっても大剣の一撃を片方の剣で抑え、さらに支えにして移動することで攻撃を回避し、もう片方の剣で首を切っている。

 

 言うは易し行うは難し。

 そもそも、少女の攻撃は豪速である。それを器用に防御し、更に体格の小さな敵の首だけを器用に狙うことなど、絶対的なセンスがなければ成し得ない。

 

「すごいね。おかしい反射速度。ゲームセンス。どこかのプロ?」

 

「いいや、俺はソロだ」

 

 軽い会話の後、両社は地面に落ちた。

 

(とんでもない実力……!多分、ファーストレベル……!)

 

 闇は恐れていた。

 並外れた反射神経。窮地を切り抜ける発想力。それを実現する身体能力。

 この男の持つ性能はチートを使った彼女自身でさえも殺し得ると。

 

「よし、ならこうするだけ」

 

 彼女は再び、剣を地面に突き刺した。

 それを見るや否や。キリュウは飛び出した。

 

 一秒でも早く、目標を切り倒すために。

 

「かかった……!」

 

 突如、彼に無数の呪いの手が襲い掛かった。

 彼女は地面に呪いを打ち込んで、地中で変形させていたのだ。

 百本の以上の腕が男の息の根を止めるためだけに迫っている。

 

「……はぁ」

 

 絶望的な光景に、キリュウはため息をついた。

 

「その程度で、俺を殺せるとでも?」

 

 彼の歩みは呪いでは止まらない。

 速度は一切落とすことなく、直線上にある全ての手を切りながら、次の瞬間には少女の首元に剣を立てていた。

 

「思ってない。ばいばい」

 

 しかし、その剣が首に届くことはない。少女は呪いの手に自身の襟元を掴ませて大きく後ろに飛んでいた。

 

「追いかけっこか?大嫌いだな!流星剣戟(ステラ・ストライク)!!」

 

 すぐにスキルを発動しながら黒い剣を投擲し、走り出した。

 少女に届く前に呪いの手が白羽どりをしたところで彼女の真後ろにはキリュウがいた。

 

彗星拳戟(メテオ・ストライク)

 

 振るわれた拳は間一髪のところで呪いが防御し凌がれたが、呪いの腕ごと彼女は吹き飛ばされてしまう。

 そこから更なる迫撃を試みるキリュウだが、それは叶わない。

 足を呪いの手に掴まれて、そのまま森の奥へと吹き飛ばされてしまった。

 

「なるほど、そういうゲームか」

 

 飛ばされた先、木に寄りかかりながら、男はこの戦いを真の意味で理解した。

 その間にも呪いの手は彼を仕留めようと迫っている。

 

「チェックメイトまで、時間がかかりそう」

 

 対して少女は呪いの手で後退しながら、この戦いの作戦を決定する。

 

「覚悟しろ」

 

 再び男は、衝撃波で木の枝を揺らしながら飛び出した。

 道すがら、黒い剣を持つ手を切り裂いて、二刀流に戻ってから少女を追い始める。

 彼女に到達するまでには、地面と木々から無数の手が進行を阻んでいた。

 

 その全てに意味がある。陽動。けん制。本命。

 

 戦術の洪水に対して、男は二つの剣だけで道を拓く。

 あらゆる行動、あらゆる作戦も圧倒的な性能で斬り伏せる。

 

(まだ、スキルを少ししか使ってない……!)

 

 少女はキリュウという人間の性能を自身の想定内に収めるために、あらゆる仮説を立てて検証を重ねていく。

 どんな人間にも苦手とされるものは存在する。この男に勝つためにはまずそれを見つけるしかないと、彼女の直感が告げていた。

 

 手で視界を奪った上での攻撃は超反応により切り捨てられた。

 全方位からの攻撃はよりスピードのギアを上げた一点突破により瓦解した。

 同じ方向からの時間差5段波状攻撃も、全て見切られ切り刻まれた。

 蛇のように軌道をうならせ、何個かフェイントをかけた34本の手による攻撃さえも通用しなかった。

 ただし、作戦が通じなかった程度で闇は屈しない。

 

 一通りの戦闘で得たデータをもとに、キリュウという存在のパラメーター(人間性能)が完了する。

 

「反射神経は0.1秒」

 

 人体の限界である。

 

「勘もいい。対戦ゲー、よくやってるの?」

 

 けん制やフェイントを見極めるのに長けすぎていることから、戦闘経験の厚みを見抜いた。

 

「でも、弱点(・・)は見つけた」

 

 その弱点に付け込み勝機とするために、闇は次の策を放つ。

 

「さぁ────『狩り』を始めよう!」

 

 男の辺りにはドーム状に手が展開された。

 そこにフェイントをかけた上で、全方位で、3段の波状攻撃が入る。

 

 今まで試した全ての仮説を用いた攻撃。それらは勿論『おとり』である。

 

 彼女の作戦は0.1秒の反応速度で対処しきれない攻撃を放つことだった。

 

「カース・ドライブ」

 

 それは彼に通用した唯一の攻撃。

 超至近距離での広範囲高威力の一撃だ。反応されようが、対処されなければそれでいいのだ。

 暗いドームに一人の侵入者が現れる。

 巨大な剣を携えて、剣はもう振るう途中で。

 突入時点で既にドームの3分の1は呪いの刀身に呑まれていた。

 

「これで、王手(チェックメイト)!!!」

 

 刻一刻と呪いが男に迫る。

 この一撃はまさに王手。後には何十もの呪いの手が控えている。

 一撃を喰らい、怯んでしまえばあとは手による攻撃で男の体力はゼロに至る。

 

 だから、王手。どうしようもなく、男の命は晒されている。

 

 

 

 

 しかし、逆王手でもあった。

 

 

 

 

流星剣戟(ステラ・ストライク)征天潮流(ヴェーレ)

 

 二つの剣が青く光る。

 男はこの瞬間を待ち望んでいた。

 チーターが己の間合いに入るこの瞬間を。

 左手の剣でスキルを発動させながら呪いの刀身を受け止めると、交互に呪いを受け止め、回転斬りの要領で、呪いを伝って彼女の懐に入り込んだ。

 

 これより放つのは、彼が過去経験したゲームでよく使用していたソードスキル。

 その模倣。

 アバター・ドリフト、仕様の外にある超連撃。

 

「もう夢から覚める時間だ」

 

 大剣の鍔を弾き、無防備なチーターの前に到達。

 すぐさま最高火力を叩き込み始めた。

 剣戟の嵐がチーターを襲う。

 

 

 チーターも、宿主を助けようとする呪いの手も、近づく全てを断ち切りながら敵の体力はみるみる内に減っていく。

 

 チーターの体力が残り3割を切ったその時、この嵐は図らずも終わりを告げた。

 白い3本の矢が飛んできて弾く隙を与えたことにより、闇が脱出できたのだ。

 

「よく耐えたな。我が妹よ!」

 

 彼女が後退した先には彼女の兄が帰還を喜んでいた。

 

「ありがとう。お兄」

 

「ああ、妹よ。こんなに傷ついてしまうとは……!さぞかし奴は強いんだろう?だが安心してくれ」

 

「うん。私も安心した」

 

「「二人が揃えば最高最強!!!」」

 

 兄妹が高らかに笑っている間に、チートハンターズたちも合流をして状況を確認し合う。

 

「どうだ。状況は?」

 

「体力は半分削りました」

 

 ホリーハックがキリュウの隣に立ち、兄妹たちを警戒しながら状況を教えた。

 対してホリーハックの体力は残り1割。オータムの体力は残り2割と言ったところだ。

 

「ああ、そうか。よくやった」

 

 男はそのまま二人の前に立つ。

 

「……そうだな。まずは諦めようか」

 

 おかしなことを口走りながら。

 

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