チートハンターズ 〜このゲームのチートは全て狩り尽くす〜   作:新川翔

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アドリブVS台本

枯座鎚(かれくらつい)残響麒麟(ざんきょうきりん)

 

 オータムさんが神話魔法を発動させる。

 雷鳴が最後の戦いの始まりを告げる口火となった。

 先ず、青空から一本の雷が彼女の下に届く。

それは地面に堕ちずに竜へと形を変えて、彼女の背後に鎮座した。巨大で東洋風の電気の竜は、詠唱者を贄として万里を焼き尽くす厄災となる。

 

「さぁ、弾けよう、か」

 

 宿主が指を弾くと、黄色い竜は指定された敵を呑み込もうと、顎を広げて地を這うように飛び出した。

 

「効くか!」

 

 相手は腐ってもラウンズ。

 ただの工夫もなく放たれた一撃を受けるはずがない。

 奴は巨大な攻撃範囲を避けるために飛び上がるという選択をした。

 そして俺は魔法の発動と同時に黒に向かって走り出す。

 

(飛び上がったな……!)

 

 俺達の狙いはただ一つ。

 神話魔法を当てること。

 そのためには、奴をどうしても回避できない状況へ追い込む必要がる。

 

(ということは黒も分かっているだろうな……!!)

 

 奴もその思惑には気づいているだろう。だからこそ、相手の動きを観察し、次の手を判断している。

 

(まず、奴はアドリブ型だ)

 

 仲間より共有されていた情報から、黒の戦い方を分析し始める。

 

(相手を観察し、それに適した策をその場で考案し実行するアドリブ型のプレイヤー)

 

(そして俺は事前組み立て型のプレイヤー。いくつもの策を用意しておいて状況に合わせて選んでいく戦い方をする)

 

 宙に浮かび、オータムへと弓を引く黒に向かって、心の中で啖呵を切った。

 

(さぁ、行くぞチーター。お前のアドリブ全て、想定の範囲内に収めてやる)

 

 放たれた矢は目にも留まらぬ速度でオータムを貫き消滅させた。

 

『任せた』

 

 オータムさんからの最期のチャットにより決意はより強固なものとなる。

 

「ファイアショット」

 

 奴が彼女を倒している間に、炎の剣で奴に追撃をする。

 事前に発動させていた20本の剣が四方八方から降り注いだ。

 不可避の追撃を、チーターは理不尽で強引に対処することにしたようだ。

 奴はその全てを、弓を射ることで叩き落している。

 

(そうだよな。一撃も喰らいえないよな。お前は)

 

 『煌塵(こうじん)』は銃口の先、直線上を瞬時に灰燼にする神話魔法。

 

 少しでも回避できない状態で撃ち込まれたら命中するため、如何なる隙も与えてはならない。

 だからこそ、奴は対処に数秒を使い、俺は飛び上がって近づくことが出来た。

 俺は本で奴の右腕を抑え、そして右足で左手を抑えることで弓を射れない体勢にしながら、右腕の銃口を向けた。

 

「男に抱かれる趣味はねぇ!」

 

 対して奴は俺の腹に足を当てており、そのまま蹴とばすことで距離を取った。

 不味いな。距離を取ったということは、アレが来る。

 回避不可能の一斉射撃が。

 

「ファイアショット・剣壁」

 

 すぐさま俺と奴の間に15本の炎の剣を展開する。

 これはあの連続射撃を防ぐために作った盾だ。これで、一瞬の猶予を作れる。

 と、安心した瞬間、俺の全身に8本の矢が刺さった。満タンだった体力は半分に減り、赤傷の状態異常も喰らってしまう。

 だが焦りはしない。ただ冷静に作戦を実行していこう。

 

 

 これから、ラストチャンス訪れるのだから。

 

 

 そこに全てを賭けるべきだ。

 

「本当に、厄介だな。オータム」

 

 黒に再び黄色の竜が襲い掛かっていた。

 彼女が神話魔法、『枯座鎚(かれくらつい)残響麒麟(ざんきょうきりん)』を使用した理由は二つ。

 

 一つ目は射程を他の魔法よりも断然長く設定できること。故に同じ場所を戻らせてもう一度攻撃することが可能である。

 そしてもう一つ。この魔法は例え発動したプレイヤーが倒れても指定された命令を完遂するまで存在し続ける。

 この一撃は回避するしかない。黒は再び、空中へ飛び上がって、空中で俺を射抜こうと弓を構えた。

 

 そこに俺は右腕の標準を合わせる。空中では殆ど身動きは取れなくなる。神話魔法を当てるなら、奴が空中にいる時を狙うしかない。

 

 そして、炎の光線を発射した。

 不可避の一撃は真っ直ぐチーターへと突き進み、標的へ敗北を知らせようとしている。

 この一撃により、体力は消し飛びチーターは倒される。

 

 

 なのに、黒は大きく口を歪ませ、勝利を確信した笑みを浮かべていた。

 

 

 

「なっ──────────────────」

 

 

 

 目の前の光景に思わず息を呑んだ。

 奴は既に身体を捩じることで光線のギリギリ射程外へ逃げたのだ。

 まさにそれは、キリュウが奴の攻撃を回避した時と同じ動きだった。相手の動きを見てすぐに取り入れる目とセンスは素晴らしいものだ。

 曲芸により、奴は光線の射程外に逃げた。後は俺を射抜くだけで勝負が決まる。

 

 

 

 

 

「勝った」

 

 

 

 

 

 ただ、俺は勝ちを確信した。

 黒は光線が発射されてから違和感を覚える。

 

 

 何故なら、まだ目の前に光線が在るからだ。

 

 

 煌塵(こうじん)はこんなにも遅い(・・)魔法ではない。

 

 

 俺が銃口から発動させたのは煌塵(こうじん)ではない。ヒートマグナムだ。

 

「ちっ」

 

 

 黒は舌打ちをしながら体を捩じり、いざという時、万が一のために、弓を構える。

 ただ、そんな万が一も起こるはずはなく。本命の攻撃がチーターの体を貫いた。

 

煌塵(こうじん)

 

 神話魔法は発動してすぐに直線上にいる敵を滅ぼした。

 

「…………」

 

 神話魔法はチーターを貫き、青空へと勝鬨のように飛んで行った。

 誰もいなくなった森の中で、立ち上がり、辺りを見回す。

 どうやら増援はいないらしい。

 

 

「「「よっしゃぁぁぁあぁああああああああ!!!!!!!!」」」

 

 

 

 それを確認した直後、腹の底から、体の端まで喜びの感情があふれ出した。

 

「いや~いい作戦だったね、サム君」

 

「さすがだね。ケイ。このままどんどんチーター倒していこう!」

 

 ボイスチャットから仲間からの賞賛が聞こえてくる。

 前回に続けて連続で俺たちはチーターに勝利を収めた。

 その達成感は俺の人生の中で最高なものだった。

 

「ああ、今回で自信が付いた。このまま、このゲームのチーター全員を倒していくぞ」

 

 最後の場面、仲間の支援はあれど、俺は奴の動きを完全に読むことが出来た。

 これは非常に大きな一歩だ。シロップさんと戦った時にも実感したことだが、それが確固たる自信へと変化した。この脳みそであればどんなチーターとも戦いの場に立つことは出来る。

 

『ちょっといいか、まだ、時間はあるだろう?今日のうちにしておきたいことがある』

 

 などと自己分析をしていると、キリュウさんからDMが飛んできた。

 

『ここに来て欲しい』

 

 そこには東京都の住所が記されている。

 そのままコピーして調べてみると、どうやら目黒区のマンションの一室らしい。

 

『秋ヶ原も来る。お前も是非来てくれ。それと、ホリーハックは絶対に連れて来ないように』

 

『どういうことですか?』

 

 彼本位で話が進むので、まずこの誘いの意図について聞きだすことにした。

 こんな喜ぶべき場面で、こんなに冷たい文面を送るのは、何か訳があるはずだ。

 

 

 

『黒に会いたくないか?』

 

 

 

 その提案は予想していないものだった

 

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