チートハンターズ 〜このゲームのチートは全て狩り尽くす〜   作:新川翔

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熾烈渇望ランクマッチ
条件


 アバタードリフト内、トップクラン『ラウンズ』のうち2人がチーターだったという事実はそれを暴いた『チートハンターズ』の名と共に広がっていった。

 

 各々はSNSに思いの丈を発散したり、黙秘したり、『つまんね』と一蹴したりした。

 

 そしてそれと同時に一人の男についての話も広まり始めた。

 アバタードリフトにて『辻決闘』なるものが発生しているらしい。

 黒衣の二刀流の剣士が、各所でトップレベルのプレイヤーに決闘を吹っ掛けている。

 一々話しかけて決闘の話を取り付けているため『辻斬り』ではなく『辻決闘』と呼ばれている。

 トッププレイヤー同士において決闘はあまり行われない。どうせ戦うのだったらランクマッチを回すからだ。だが、見物客である他のプレイヤーにとって珍しいものであり辻決闘はちょっとした見世物になっていた。

 

 

 水上都市アクヌス。

 巨大な湖の上に建てられた湖上都市。町のあらゆる場所に水路が併設された、白を基調とした曲線的な建造物が並ぶこの場所で一人のトッププレイヤーが決闘を申し込まれた。

 

「ラウンズ 三位(サード)のスピードだな」

 

「お前は、確かキリュウだな?」

 

 辻決闘の首謀者である黒衣の剣士、キリュウは韋駄天に決闘を申し込むために一人でやって来ていた。

 

「知っているのか?」

 

「ホリーから教えてもらってな。何でも俺に勝ち越せるくらいには強いんだって?」

 

 ラウンズ3位の男は彗星の如く現れた自分を倒し得る男にワクワクしていた。

 彼は『極める』ことが大好きな性質だ。何かのために努力し達成する感覚をこの上なく愛している。そして極めるためには目標や競い合う仲間が必要だ。一人で目的地を知らず走ることはつまらない。どうせなら、共に究極へと至る仲間たちと高みへと歩んでいきたい。

 目の前の男は、その仲間の一人として適した存在であった。洗練された剣技、卓越した判断力と戦闘センス、動画を見て確信した。彼もまた『極める者』であると。

 これが一方的な感情であろうと構わない。互いの力をぶつけ合い、より高みを目指す。

 

「それでは試しておくか?」

 

「ああ、ガンガン試すぞ。その決闘、受けた。実りあるトレーニングにしよう」

 

 彼らの前には決闘のルールが表示される。

 

 人数 1対1

  勝利条件 10本勝負

  場外アリ

  制限時間 一試合当たり5分。

       時間切れの場合は残り体力が高い方が勝利となる。

 

 

 

 同時刻、トッププレイヤーが集まるクランの一つ、『ラウンズ』に新たな加入希望の物が加入のための面接を受けていた。

 場所は俺が以前ラウンズの方々と戦った港町『ゲート』にある一番大きな二階建ての酒場だ。

 その一階にある小さな机を3人のプレイヤーで囲んでいた。

 

「君がサム、だな。話は聞いてるよ。ラウンズに入りたいんだってね。どうしてだい?」

 

 俺の目の前にはラウンズのリーダーであり一位(ファースト)の『プエル・バエル』がいる。

 その隣にはシロップさんがニコニコしながら立会人として俺達を眺めている。

 彼はファンタジーなこの世界には似合わない、黒いサングラスに黒いスーツ、黒いロングコートを着用しておりそのシルエットはキリュウさんと重なるところがあった。

 

「それは──「やっぱ言わなくていいや。だって分かってるからね。『チートハンタ―ズ』のサムぅ」

 

 理由を告げようとするとそれを遮ってきた。彼の声色から機嫌が非常に悪いことが伝わってくる。

 

「僕たちの組織にチーターがいないか探りに来たんだろう?あの兄妹はチーターだったから。他にいないかって探りに来たんだろう?まるで、そう。警察気取りかな?」

 

 不機嫌な声色はより強くなっている。

 

(まずい。誤解されているな)

 

 俺は頭の中で口にすべき言葉について考えていた。

 俺がラウンズに入る理由は何も探偵や警察ごっこをしたいからだけではない。それよりも大きい理由がある。

 

「……そんなことはないです」

 

「ほう?どんな理由が?」

 

「強くなりたいからです。チーターを倒すために。ここから先、俺一人でチーターを倒さなきゃいけない場面が来る。そのためにも力をつけておきたいんです。

 

 そうだ。俺がラウンズに入る理由は強くなるためだ。

 人が成長するためには環境も非常に重要だ。

 このトップクランに身を置くことより強いプレイヤーとの交流を通じて俺はより強くなる。

 

「漫画風に言うと、このクランで修行したいってことか」

 

(漫画風って独特な例えするな)

 

 俺は彼の例えに疑問を持ったが突っ込まないことにしたまま話を聞く。

 

「よし分かった。それでは条件を課そう。これがクリア出来たら、お前をラウンズに迎え入れる」

 

「来週からランクマッチシーズン6が一か月間、開催されるのは知っているな。そこで『グランドヒーロー』まで行ってもらおう」

 

「えっ」

 

 『グランドヒーロー』はランクマッチにおいて上位100位以内に入った限られた人間に送られる称号だ。

 まさにこのゲームにおいて最上位である証だ。

 何故なら、グランドヒーローは初心者が取れるようなものではないからだ。

 

「そうだね。高いハードルだ。でも、これはいわば『普通』のラウンズの加入資格だよ」

 

 彼はニヤリと笑いながら両手を掲げている。

 まるで意地悪をする子供のようだ。恐らく自覚してその難題を課しているのだろう。

 

「まず、僕はクランのリーダーとしてこの基準を下げるつもりはないよ。別に君を入れたところでメリットがあるわけじゃないから。監査員じゃあるまいし、受け入れたらラウンズの信頼が回復するわけないだろう?だから、そう、そのまんま。君にはラウンズに入るための資格を得てもらう。人格面はオーケー、ロード、ホリーハックが君のこと気に入ってるし、話を聞くに悪人って訳じゃなさそうだ。それで、どうかな?やる?」

 

「もちろんです」

 

 彼の問いには即答した。

 迷っている暇など全くない。

 確かに、次回のランクマッチで初心者の俺がグランドヒーローになるのは至難だ。

 しかし無理だとは思わない。不可能を論じることよりも、こんな無理難題をどう征してやろうかということしか頭にない。やはり俺は無理難題に挑戦したがる性格らしい。

 それに、チーターはストーリー攻略よりも対人戦によくいる傾向にあるから、いつかランクマッチには乗り込みたいと思っていた。

 つまり、俺の実力を向上させ、チーターたちも倒すまたとない機会であり目標を達成できればラウンズに入ることができる。これに乗らない手はない。

 

「ほう。即答ね。いいね。それじゃあ期待しているよ。それじゃあ僕は色々初心者に教えなきゃいけないから、失礼するよ」

 

 そう言ったバエルさんは席を立って、酒場を出ていった。

 

「ま、行き詰ったら教えてね。時間あったら教えるよ」

 

 それだけ言い残して。

 

 

 

 

 5日後、アバタードリフトにおいてランクマッチのシーズン6が開始された。

 

 アバタードリフトのランクマッチにおいて、プレイヤーたちはより高いポイントを積み上げていくことで、より高いランクを目指していく。

 

 ランクは八つ。

 アイアン

 ブロンズ

 シルバー

 ゴールド

 プラチナ

 ダイアモンド

 ヒーロー

 グランドヒーロー

 

 ランクには『昇格』と『降格』がある。

 それぞれのランクの中でプレイヤーたちは戦い、ある程度のポイントを獲得すると昇格できる。さらに、負け続けてポイントを失うと各ランクごとに設定されている『下限のポイント』に到達し、その状態で更に負け越すと降格してしまう。

 勝負は一対一で行われ、一つの試合制限時間は3分、2本先取で行われる。

 また、戦いは特別なステージが用いられる。

 

 リリースから半年が過ぎた状況で始まった今シーズンにおいて、高速戦闘ビルドがトレンドになり、それに対するメタ、さらに油断ならない奇策。この三つによって戦況は混沌を極めていた。

 その中でランクを急激に上げる3名の猛者がいた。

 その3名は多少のズレはあれど、かなり早い期間とされる2週間でヒーローに到達している。

 

 プレイヤー名 クレナータ

 ヒーロー到達日数、1週間と4日。

 高速戦がはびこる今環境においてもそれらを凌駕する速度と、それに適応した反射神経を持つ戦闘の寵児。

 その勝負勘には誰もが舌を巻く神速の剣姫。

 

 

 

 プレイヤー名 ヘリオン

 ヒーロー到達日数、1週間と6日。

 一対一には適さない特殊なジョブ『アサシン』で無理矢理ランクマッチを駆け上がる奇人。

 奇天烈な無数の手段で敵を惑わす魔法使い。

 

 

 プレイヤー名 サム

 ヒーロー到達日数 2週間。

 対戦環境ではマイナーであった魔法職において、中距離魔術士の戦法を確立した天才。

 アバタードリフトにおける『戦術の特異点』。

 

 

 そしてもう一つ、アバタードリフトにて大きな事件が起きた。

 チーターによる幾度とないスナイプにより、クレナータがダイアモンドへと降格したのだ。

 

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