チートハンターズ 〜このゲームのチートは全て狩り尽くす〜   作:新川翔

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仁義なきダンジョン攻略
火蓋は斬られた


 『強制決闘モード』。

 VRゲーム、アバター・ドリフトにおいて猛威を振るっているチート。

 範囲内のプレイヤーを強制的に決闘モードに巻き込み倒してしまうことでゲームオーバーに追い込むものだ。

 ゲーム体験を著しく阻害するこのチートに対して運営はアンチチート実装による対策を試みた。

 

 

 しかし厄介ことにこのチートは終わらなかった。

 

 

 この2週間、強制チートモードは消えては現れてを繰り返している。

 チートの開発者があらゆる手段を使って何度も強制決闘モードを実装しているのだ。

 この動きはSNSで拡散され、『チーターと運営のイタチごっこ』として脚光を浴びるようになった。

 このイタチごっこの最中、二人のプレイヤーが注目されることとなる。

 

 一人目の名はキリュウ。

 強制決闘モードのチーターを狩り尽くす無敗の狩人。

 

 二人目の名はサム。

 ランクマッチにおいてチーターを謀殺し続ける策士。

 この二名はこれよりゲーム史に残る大事件の中心人物となる。

 

 場所は移り、ユグドラシル遺跡。

 一人の少女がチーターに遭遇していた。

 プレイヤー名を『クレナータ』。

 銀の長い髪。白い鎧に身を包み、太陽をかたどった大きな赤いピアスを着用している。

 アバター・ドリフト史上最速でランク『ヒーロー』に至った神速の剣姫は、とあるチーターに粘着されていた。

 

「おいおい!!!どこに行くんだ!?!?」

 

 弾けるように走る暗い青い甲冑。兜は被らず無精ひげを生やしている中年男性。その手には群青で茨が巻き付いているような装飾が施された槍が握られている。

 そのチーターの名はニヴァーチェ。

 ランク『ヒーロー』に到達したルーキーを狩ることに執着する変人は、あまりにも猪突猛進で輝かしい記録を手に入れたクレナータをえっ者としていた。

 彼の糧は出鼻を挫くこと、足を引っ張り引きずり下ろすこと。

 最速最強の記録を持つ彼女を折り続けることが今の奴の至上の楽しみなのだ。

 

「くそっ」

 

 彼女は悔しさを募らせていた。

 

(悔しい悔しい悔しい悔しい────!!!!)

 

 その原因はどうしようもない理不尽。仕様の外の力による一撃は彼女に背負いきれない無力感を与えていた。

 イグドラシル遺跡に来たのもストレスを発散させるため。

 この遺跡では雑魚を大量に倒すイベントが発生する。

 無双ゲームみたいに爽快感があって気持ちがいい。

 

(だからここに来たのに、どうして理不尽に襲われているのだろう)

 

「はっ──────、はっ──────、はっ──────、はっ──────、はっ──────」

 

 

 イグドラシル遺跡、第一ステージ。

 課題『アース機兵の殲滅』。

 直線、200メートルの道に現れる無数の兵器たちを全て殺し尽くせ。

 彼女の眼前には雑魚敵。

 マツボックリの頭を持つ木製の巨人『アース機兵』が300体。

 背後には天敵。

 剣は構えず、囲まれながら逃げていく。

 

「どこにいくんだぁ~~~~~?」

 

 依然、チーターは彼女を追跡している。彼女は既に数回、チーターの攻撃を喰らっており体力は残り7割。油断は一切できない状況である。

 

「捕まえた!!」

 

 さらにチーターはもう一撃、彼女に向かって攻撃を放った。

 それはただの突き。しかし勿論、通常の攻撃などではない。

 間合いが拡張されている。

 その槍の一撃は本来の判定を大きく超えて、穂先にいるプレイヤーに襲い掛かる。

 この攻撃は神速にて不可視。今の彼女の技術では回避不可能の一撃。

 単独では攻略することなどできない。

 

 

 

 ならばもう一人、この状況をひっくり返すことのできる変数を加えればいい。

 二つの青い閃光が彼らの間に入って見えない攻撃を叩き斬る。

 

 

 

 

「お前……お前か。知っているぞ。チーターの敵。キリュウ!!」

 

 黒いマント、黒と青の二刀流。

 チートハンターズ最強の男は強制決闘モードのチートが無くなるその時まで稼働していた。

 

「恐れおののいてもらおうか」

 

 言葉を発した途端、青い閃光が迸る。

 向き合った直後、キリュウは仕掛けていた。

 

流星剣戟(ステラ・ストライク)

 

 スキルを発動させながら間合いに入り斬撃を浴びせる。

 放たれた至上の一撃。

 この二週間で更に洗練されたキリュウのセンスは、最早誰一人真似できない境地に辿り着いている。

瞬きも許されない一撃。チーターは冷汗をかきながら何とか受け止める。

 

「なるほど、多少は強いようだな」

 

 キリュウの言葉にチーターは戦慄する。

 刃を交えただけで理解したのだろう。隔絶した実力差を。

 

「強すぎじゃないか?」

 

 彼は苦笑いとセリフと残してから強引に剣を弾いて距離を取った。

 その表情から享楽は消え去って、緊張迸る戦士の顔となる。

 

「俺だって元グランドヒーローだ」

 

 その強がりは誰から見ても明らかなものだ。

 

(ははは!!やっばいなクソが!!!!)

 

 突如彗星のように現れた強者。その存在はどうしても彼のコンプレックスを刺激する。

 それはニヴァーチェが『チートに逃げた人間』だからだろう。

 

「ムカつくぜ。ムカつくぜ強い奴は」

 

 ニヴァーチェの脳には苦い感情が滲み出ている。

 

 

 

 ランクマッチで勝てなくなったあの日のことをよく覚えている。

 

 このゲームは楽しい。どんなスキル・武装構成でもある程度強くなれるから。

 このゲームは嫌いだ。どんなスキル・武装構成でもある程度強くなれるから。

 

 戦略がありすぎる。

 強い風潮のあるスキル構成はあれど、環境に対するメタなんてあってないようなものだ。流行っていないスキル構成で戦う者たちは己の持ち味でどう対抗するのかを思案している。

 しかも面倒なのはどれも付け焼刃じゃないくらい極められること。

 俺の戦法は環境に適応したメタの戦法を使いこなすことにある。

 俺は付いていけなくなったのだ。この環境のスピードに。

 メタを張る。だけではこの戦いは勝てない。

 だから、『憎い』。

 ロマンだらけの二刀流と圧倒的な実力でチートを狩り尽くす。狩り尽くすことが出来る目の前の男にどうしようもない苛立ちを覚えてしまう。

 

 

 

 

「その悔しさをどうして強くなる糧へと回せなかった?」

 

 チーターの虚勢に対して、男は嘆くように冷たく問いかける。

 

「いいや違うさ。俺は回したさ。このツールを使って強くなった」

 

「……虚しいな」

 

 答えを聞いたキリュウは小さくため息を吐いた後にニヴァーチェの逆鱗に触れるような言葉を放った。

 

「…………」

 

 

 

 言い返すことが出来ない。

 

 

 

 その通り。どうしようもなく言葉をこねても、どんな理論武装をしたとしても、チートを使って強くなったと宣うのは虚しいことだ。

 

「そこの……君」

 

 するとキリュウは首だけ背後を向いて少女に声をかける。

 

「そこから動くな」

 

 その言葉を皮切りに勝負は始まった。

 視線を外した確固たる隙。その隙を見逃すチーターではない。

 踏み込みもせず、すぐさま最短距離で槍を放つ。

 人体の急所。喉に向けられた一撃はチートによって判定が拡張され不可視となり放たれた。

 

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