チートハンターズ 〜このゲームのチートは全て狩り尽くす〜 作:新川翔
「そうだな説明しよう。シーロック説明してやれ」
「了解、リーダー。さて我々の目的は第四層のボスを撃破し装備を手に入れること。この遺跡のボス、叛鎖機獣サジタリウス。奴は強力なボスです。貴方もおそらくこの遺跡で何かを得ることを目的としている。ここはどうか我々と協力しませんか?」
「あー……」
ふと、黒のことを思い出した。彼は突如俺たちと味方になって突如裏切ってきた。
彼らもチートを使っているとは思いたくはないがどうしても頭の中を過ってしまうのだ。
(ま、でもいいか。別にその時倒せばいいし)
「いや、分かりました。よろしくお願いします」
笑いながら返答すると俺たちは一時的な協力関係となった。
「さて諸君、我々には一つ問題点がある。なんだと思う?」
するとオーバーさんが問題を出す。
「はい!!」
勢いよく手をあげるのは弓使いのリバナチュラさん。
「ぶっ飛ばせないこの世の中!!!!」
「間違いだ!そんな、『斜に構えながら全能感をうっすら感じてる若い奴』に刺さる曲みたいなこと言うんじゃない!!!!」
「はい!!」
次にノースカロアナさんが勢いよく挙手をした・
「ボクがかわいい扱いされないことです!!!」
「一体何を言っているんだ!?!?!?!?」
このクランのリーダーは思い切り否定しながら、正解を手を掲げて言い放った。
「正解は今の我々ではサジタリウスに勝つのはやや難しいということだ。この五人での連携は未だ試したことがない。つまりこれより懇親会を開始する!!!」
すると彼は先頭に立ち、一歩踏み込む。
その一歩は第一層の課題を開始の合図となる。
俺たちのいる部屋は高さ10メートル、横20メートル、長さ200メートルの直方体。
壁と床には苔の生えた薄緑色タイルが敷き詰められている。
さらに、現れるのは300体の機兵。
(ん?)
その機兵たちに違和感を覚える。
いや、正確に言えば『敵』に違和感を覚えた。
俺たちの行く手を阻むのは木製の巨人たちであるはずだ。
プレイヤーはいないはずだ。
なのに巨人の間にちらちらとプレイヤーが見えるのは何故だろう。
ここで思い起こすのはキリュウさんからのメッセージ。
『イグドラシル遺跡 チーター 異常事態』
『異常事態』
ただチーターが現れただけではこんな表現は行われない。
何かしらいつもとは違う事態が発生していると踏んだ方が良い。
(ま、まさか……)
目の前で起きている現実。それに対する推測が終わった途端、背筋に汗が垂れた。
恐らくチーターが徒党を組んで妨害をしてくる。
俺たちの敵はシステム上のものだけではない。
「それでは作戦開始!!!!!オペレーションはβだ!!!!」
「待ってください!!!!」
俺の忠告など聞かずに彼らは飛び出した。
機兵の中にチーターが混じっている。それを伝えなければならない。
「待てトム。そう焦ることはない」
すると指示を出したオーバーさんが遅れて飛び出した俺の肩を掴む。
「いや、あの、敵にチーターが……!!!」
「む?なるほど、でもいいさ。気にしなくて。彼らは最高の仲間だ」
彼は全くもって心配をしていない。
その目は青空のように澄んでいる。
前線に飛び出したのはシーロックさん。右手の盾を機兵に向けて振りかぶっている。
「
スキルによって放たれた拳は機兵二体を一気に粉々にした。
しかし、その機兵の影、隠れるように潜んでいたのは。
「隙ありだぜ」
チーターである。
青い服。グレーのズボン、そして右手には短剣。
暗殺特化の装備をした男がシーロックさんへ刃を向ける。
「それはこっちのセリフ」
しかし、その刃は届くことはない。
すぐさまチーターは一矢によって貫かれた。
その弓を放ったのはリバナチュラ。
突然の襲来かつ、視界不良であっても彼女は一射で命中させた。
「頭に風穴開けてやったよぉ~~~~」
見事と表現すべき一撃に彼女自身でさえ恍惚としていた。プレイヤー同士なのに攻撃を喰らった。つまり奴は強制決闘モードのチートを使っている。
そしてに飛び出すのは槍使い、ノースカロアナ。
「ロードファントム!!」
矢を受けたチーターに更なる迫撃が入る。
槍のスキルの中でも出が早く射程が長い一撃はすぐさまチーターの心臓を穿つ。
チーターの体力は残り6割。まだまだ彼は倒れない。
しかし既に決着はほぼついている。
「
この連携を見て俺は確信する。
彼らは強い。
盾による殴打が五発、瞬時に叩き込まれる。
残り体力は3割。そして最後に真打が駆ける。
「それでは仕上げだ。ゆくぞ」
真打とはリーダーのオーバー。
腰に帯びた剣を抜いて最後の一撃を放つ。
「
古代の剣は炎を帯びて抜かれる。
「さぁ!最後だ。行くぞ!!!!『バーンズ・ボーン』!!!」
剣から発せられる赤い炎。その炎は自由自在に操ることのできる魔炎。
今は最も殺傷力が高い形態、七支刀となってチーターへと襲い掛かる。
そして炎刀の一撃は轟音と灰と共にチーターの体力を削り切った。
なんと彼らはチートを発揮させる前に圧倒してしまったのだ。
ただしかし、敵はそれだけではない。まだ何体もの機兵は潜んでいるし、その機兵にチーターが隠れている。
それでも、ウェポンズは止まらない。
目の当たりにしたのは綿密すぎる連携。
コース料理のような完璧すぎる戦いに見惚れていた。
前衛はシーロックさん。盾で攻撃を防ぎながらダメージを与える。
後衛はノースカロアナさん。前衛ではどうしても防ぎきれない攻撃や気づき得ない攻撃を妨害する。
中衛はノースカロアナさん。前衛と後衛、これらが動きやすくなるためのつなぎ。
そして最後にオーバーさんはまとめ役。圧倒的な火力で足りない火力を補いつつも普段は一歩外側からこの戦いを観測して適した判断のもと行動している。
(これは、新しい強さだ……!)
PSによって発揮される理不尽ではなく、視野の広さから発揮される完璧な戦法。
素材の弱点を出さず長所を優しく引き出す高級料理のような立ち回りだ。
俺は今日この世界を観測できたことを誇らしく思う。
この新たな世界は糧になる。
「さて、諸君!!今回は観客付きだ!!張り切っていくぞぅ!!!!」
これより始まるのは超組織的なシステム化された戦闘。
飛び交う拳、矢、槍、そして剣。全てに意味を見出せる。
機兵300体。チーター23人。
このステージにところ狭しと埋め尽くされた敵たちはステージ開始3分23秒で殲滅された。