チートハンターズ 〜このゲームのチートは全て狩り尽くす〜   作:新川翔

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チーターたちの結託

『オータムさん。なんかとんでもないことになっています』

 

 キリュウが第2層を攻略し、夏目慶が1層をウェポンズと攻略している丁度その時、オータムこと秋ヶ原楓はチーターたちのとある動きを察知していた。

 メッセージの差出人はヘリオン。今期ランクマッチでてありえない速度でヒーローランクに至った3人の内の一人。彼はオータムの個人的な協力者としてチーターたちの集まるコミュニティにスパイとして潜入していた。

 

 潜入したのは閉じた環境でメッセージのやり取りを行うSNSツール『ディストート』。

 ここはいわばチーターたちの情報交換の場。どこにどんな奴がいるか、だとかサムがランクマッチに現れただとかそんな情報が共有されている。

 このサムの通知とと彼からの『チーターたちが徒党を組んでいる』という情報が同時に来たタイミングで自身が事態の核心にいると考えた彼女はさらなる情報の収集に徹していた。

 

『どうしたの?』

 

 自室でパソコンに向き合っていた彼女は事件のにおいを嗅ぎつけてそのメッセージにすぐ返信をする。

 送られてきたのは数枚の画像。そこには彼らが結託しとあるダンジョンを荒らす作戦が話し合われていた。

 

『それじゃあ今回はイグドラシル遺跡で荒らそう』

 

『こっちも参加します。遺跡のどこで荒らしますか?』

 

『私も参加します!!!』

 

 その中でも特に注意すべき投稿がある。

 その投稿はこんな文章から始まった。

 彼女は黒い画面に浮かぶアイコンと白い文字に釘付けになる。

 

《チャットルームに『セカンドマキ』さんが参加しました!!》

 

『こんにちは。セカンドマキです。今回は皆さんにプレゼントがあります』

 

『マキさん!後で個チャにください!!!』

 

『分かったよ。それでプレゼントについてなんだけど』

 

 そしてチャットに正体不明のファイルが貼りつけられている。

 

『AI player』

 

『これだね。よろしく』

 

『これは?』

 

『そのままんまだよAIのプレイヤー。自動で動いてくれるんだ』

 

『ありがとうございます!!!』

 

『他のメンバーも使えるようにしてるから自由にダウンロードしてね』

 

(!?!?!?!?!?!?!?!?!?)

 

 楓は動揺が隠せなかった。

 

(セカンドマキが普通に会話している!?!?!?)

 

 彼女が追っている存在が突如何事もなかったかのように表れたのだ。

 セカンドマキは彼女の所属する公安の情報網をもってしてもその足取りを掴めなかった。勿論、このコミュニティでも登場まで名前の影もなかった。

 現れた黒幕らしき存在。ソレに対する考察は留まるところを知らない。

 

(しかも、口調的にはメンバーと面識があるようだった。だがこのコミュニティには初めて出てくる。つまり、彼らどこかで面識があり『セカンドマキ』の名前を伝えているということだ)

 

 ここでこのセカンドマキと会話をしているプレイヤーについての全てを調べることが決定した。すぐにその指示をヘリオンとは別の協力者に、スマホで連絡を飛ばす。

 

『どうしますか?ダウンロードします?そのファイル』

 

 するとヘリオンからメッセージが届く。彼も協力者として非常に前向きに活動してくれている。だが、危ない橋は渡らせない。ここでセカンドマキが登場するのはまたまた想定外だが、この盤面を操ってみせよう。

 彼女の心はひどく冷めきっていると同時にひどく燃え上がっている。

 テロリスト容疑者を骨の髄まで調べ上げて、社会に仇成すのならば相応の処置を行う。

 

 

 

 それを被害者を(・・・・)出さずに(・・・)

 

 

 

 使命で彼女の意志は駆動している。

 

『絶対やめて。怪しすぎるから。ハッキングされちゃうかも。というか、この報告でこのコミュニティから抜けて欲しいくらい』

 

 ヘリオスに念押しのメッセージを送ってからセカンドマキ登場の意図を考えることにした。彼は引き際を弁えている人間で忠告をすればその通りに動いてくれるだろう。

 

(さて、どうしてセカンドマキがいるかどうか。そこについて考えろ)

 

(今まで名前を出してこなかったのにここで出してきた。つまり、バレてもいい。もしくはバレさせるために登場したということだ。何かしらの準備が出来ている。もしくは奴の狙いの一部は完了していると見ていいだろう)

 

(状況は恐らくあちらが一歩リードと言ったところだ)

 

 

 

 

(さて、私はどうすればいい?)

 

 

 

 彼女はセカンドマキと言う人物の像を考え始めた。

 

(奴がインスパイアされている存在、かつてVRデスゲーム事件を巻き起こした犯人、『マキ』は隠ぺいに長けていた。そのノウハウを受け継いでいるのならデメリットがある状態で正体を現さないはず)

 

 マキはデスゲーム事件が起きるまでの準備段階では、一切の証拠や煙を立てずに活動していた。そのことから、楓はこの登場にさえ意味があるのだと考えている。

 

(ということは、一歩リードされている。私はどうする?ここから奴の裏をかくことは出来るか?)

 

 しかしその思惑は不可能であることを悟った。

 

(出来ないな。そもそも奴が描いている全体像を私は知らない。下手にそれを把握しようとすると後手に回ってしまう可能性がある)

 

 

 

 

 ならば、すべきことは一つ。

 

 

 

(背後を、裏をかかれる可能性を最大限警戒しながら、今分かっている計画を完膚なきまで叩き潰す!!!)

 

 彼女に出来る一手はこれしかない。

 

 そもそも、あんな奴をおめおめと泳がせて何かをさせる訳にはいかないのだ。

 さらに彼女の立場はその一手を実現させるに足るものである。

 

『ヘリオス君、ちょっといいかな?』

 

 既に彼女はキリュウからの連絡は確認している。既にイグドラシル遺跡では異変が発生していることは認識していた。

 そしてその異変はセカンドマキが関与している。

 この計画を破滅させることセカンドマキが何を考えているのか知れる可能性さえある。

 

『私これからイグドラシル遺跡に行くんだけど、君はどうかな?』

 

 打破のためにはとにかく人手が必要だ。

 彼女が特に危機感を覚えたのは『AIplayer』。

 名前からして自動的に操作されるAIのプレイヤーであると推察する。

 ならば相手の作戦はすぐに予測できる。

 

(相手は『チート+物量』で攻めてくるだろう。ならこっちも多少の物量は用意しなければ押しつぶされてしまう)

 

『行きます!!!これ祭りっぽいし!!!!いい『バズり』のネタになりそう!!!』

 

 楓の問いにヘリオンは文章からでも伝わるほどの元気で応えてくれた。

 そして秋ヶ原楓はオータムとしてアバター・ドリフトにログインした(乗り込む)

 

 

 行うのは『調査』と『戦闘』。

 

 

 ディストートのチーターコミュニティと特定のプレイヤーについて調査を指揮しながら、イグドラシル遺跡で戦闘を行う。

 

「さぁ─────」

 

 舌なめずりしながらVRゴーグルには二つの画面が表示される。

 一つはアバター・ドリフトの画面。

 もう一つは捜査用の情報共有掲示板。

 

「おもったより、この事態は本件に関わっている。恐らく、いや、絶対、この件を堀裂ければ捜査が進展する……!」

 

 脳みそはフルスロットル。

 彼女は戦地に飛び込んだ。

 

 

(ここで全て暴くぞ。セカンドマキ!!)

 

 

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