チートハンターズ 〜このゲームのチートは全て狩り尽くす〜 作:新川翔
俺たちが戦闘態勢に入った途端、サングラスの男たちも走り出す。
横一列に並んだ大軍が一斉にこちら一点をめがけて迫ってくる様はかなり気味が悪い。
「ゴキブリかぁ!!??」
進軍行程と相手の位置、味方の手札、相手が取るであろう手段。それら全てを予測立ててから右手を掲げる。
「さて行くぞ!これから我々が道標となる火を灯す!!!そこに続くのだ!!!解放、
それと同時にオーバーさんが剣を掲げると、轟轟と炎が立ちのぼる。
まずは俺たち二人で道を拓く。
そのための、全てを焼き払う炎の嵐だ。
「ファイアショット!!!」
俺は左手で本を構えながら炎の剣を出力する。
その数50。
目的は小手調べ。
既に前方には理不尽な光景が広がっている。
だがしかしそれは漠然としたものだ。それでは足りない。理不尽を打ち倒すためにどのような理不尽なのかを知らなくてはならない。だからこその小手調べ。
反射。無効。透過。吸収。どれでもいい。
すぐに暴虐を解析し手立てを作ろう。
「バーンズ・ボーン!!!」
「発射!!!」
猛々しい火炎たちが列の戦闘へ音を立ててぶつかった。
山の頂点は大きく欠けて体力がゼロになったスーツ男は消滅している。
どうやら今のところ攻撃は通じている。
無効化、もしくは吸収されたような気配はない。
(防御系ではない?それとも復活するタイプ。もしくは攻撃系か?)
チートの考察をしながら俺たちは隊列を組んでいく。
戦闘はシーロックさん。そのすぐ近くにオーバーさん。中衛にはノースカロアナさん。その背後に俺。そして後衛にはリバナチュラさん。
この形で真正面へ。集めるべきは三つの鍵。まずはそのうちの一つを手に入れるために疾走する。
「
前衛、シーロックさんが拳に蒼い閃光を伴ってから飛び出した。
この戦いはスピード勝負。すぐにでも条件を達成するために拳を振り上げていた。
そして彗星は敵前衛に衝突。
先ほどの火炎の嵐同様、効果がる。やはり奴らは防御系のチートは使用していない。
「これなら……何とかなるかもですか?」
ピンク髪の少女が安心を漏らしたその時、俺達に理不尽が襲い掛かる。
奴らの武装は拳だ。攻撃力が低くリーチは短いが、連発が可能でどのような体勢からでも攻撃を行いやすい。
もしその攻撃が必中だったら?
「……そういうチートか!!!」
納得している盾の前衛に、前方から20の拳が押しかかる。
(だが防ぎきって見せる!)
両腕の盾を器用に用いて危機への対処を試みる。
彼の心には不気味に対する恐怖があった。理由は単純。
スーツ姿の男たちの腕が伸びているから。
迫りくる拳のほとんどを熟練した格闘家のような捌きではたき落としていく。
しかし、一度に迫る20連撃を防ぐ術を彼は持ち合わせていない。
10は叩き落とせた。しかし残りの10はどうしようもならない。
こんな状況。一人では対処できない。
「リーダー!!」
「もちろんだとも!!」
そこで仲間の手を借りる。
残り10の拳は火炎の剣の横なぎによってかき消された。
だがしかしこれで攻撃は終わりではない。
奴らは文字通り山のように雪崩れてきているのだ。
20の攻撃を凌いだところでこれは氷山の一角。次の瞬間には40の拳が迫ってくる。
「ロードファントム!!」
その拳には他の仲間が対処する。
5発の槍撃。10発の矢。10の炎剣が射出されることで合計25の攻撃を止めることに成功した。
そして残る15の攻撃はスサノヲノミコトと盾による殴打で一掃する。
「全員、前衛に集合!!!!」
この事態の対処法について策を見出した俺は簡潔に指示を出す。
(これは行軍を工夫する必要があるな)
攻撃の密度が段違いだ。ただ連携体制を取るための陣形では
密着と言えるほどの距離で近づかなければ各個撃破されてしまうだろう。俺たちの取るべき戦略は超至近距離での超連携。
中衛、後衛に控えていた者たちは前衛に追いつくことで集合する。
そして一つの弾丸となって鍵を目指して走り出す。
目標まで100メートル。だがこの100メートル、10キロくらい遠い。
放たれた弾丸はその勢いを徐々に減らしていく。
進んだ距離は20メートル。
経過時間は30秒。一分も満たない時間でウェポンズの者たちの心の端っこに諦観が漂い始める。
いくら何でも攻撃が多すぎるのだ。きっとこのチートを使用しようと考えた人間は性格が悪くて、性根が腐っていて、イかれている。
何故なら、嬲るためにチートを使っているのだから。
敵を排除したいのなら攻撃性能の高いチートを使えばいい。
壁として圧倒したいのならば防御系のチートを使えばいい。
だが奴らが使用しているのは必中のチート。敵の攻撃力も防御力も並なのだ。だからこそ『もしかしたら攻略できるかも』なんて希望が見えてくる。確かに理論上はクリアすることは可能だ。相手の攻撃はただ『必中』であるだけなのだから全ての攻撃を弾いてしまえば問題ない。だがそれは机上の空論の話。そんなことが出来るのはほんの一握りの人間だけだ。
どんな視野をもってしても、どんな作戦をもってしても、どんな手練手管をもってしても、全方位から放たれる高密度の攻撃は防ぎきれない。
俺たちの体力は徐々に、徐々にと削られ始めている。
既に全員の体力は残り八割。
このままだと一つ目の鍵を手に入れたところで、誰か一人は欠けてしまうだろう。そうなれば負けは確実だ。何故なら、この進行は5人の連携によって成立できている。一人でも欠けてしまえば瞬く間に全滅してしまうのだ。
「ふむ。これは不味いな!!シーロック!!策はあるかね??」
最悪の未来を予見したオーバーさんが参謀に声を荒げながら尋ねる。
「残念ながらありません。このままだと我々は圧倒されてしまいます」
「むぅ。ならば他に何か策はないのか?」
この状況は絶望的。このままでは勝利は望めない。
俺は今すべきことを刹那の間に整理した
現状、有効的な手段は見当がつかない。あと三つの鍵を手に入れる気がしない。
それではこのまま負けてしまっていいのか。
──────断じて、そんな訳がない。
負けるなんて考えられない。この後どうなるかなんてどうでもいい。せめて抵抗はしなければならない。首だけになっても噛みつくぐらいの執念と意地でチーターは殲滅しなければならない。
(後先なんて、考えない……!!!)
「策はあります!!!これから30秒で一つ目の鍵を取りますよ!!!」
俺の言葉はウェポンズ達に衝撃を与えると同時に勇気を与えたようだった。
彼らの目が明らかに光を増している。
ここまでその策を隠していた意図、足りないものを補えるのかという疑問、それがよぎらなかったという訳ではない。
だがしかし、そんな余計な感情はこの行動で駆逐する。
そして、本を開き秘策を発動させた。
今はただ、一人でも多く目の前のチーターを倒すために。
「アポカリプスモード 30秒。起動」
既に俺は
もう一度挑んだのはキリュウさんからの連絡があったから。
前回ダンジョンに挑んだ際は間が良かったのか運が良かったのか、チーターには遭遇しなかった。
だからなんの邪魔もなくこのダンジョンをクリアし、報酬である『モードのスキル』を獲得できた。
モードの起動を宣言するとどくん、と心臓が跳ねるような音が聞こえた。
視界は赤く染まり視界の上中央には30秒のカウントが表示される。
目元には深紅のマスクが現れてこれより起こる変化を辺りに知らしめた。
これより俺は体力を犠牲にして机上の空論へ手をかける。
「行きますよ!!!」
所属クラン『チートハンタ―ズ』
ユーザー名 サム
装備・スキル構成
ファイアショット
炎の魔導書(スキル枠拡張本)
セットスキル ヒートマグナム
アポカリプスモード
素早さアップ×2
魔法攻撃力アップ×2
MPアップ×2