チートハンターズ 〜このゲームのチートは全て狩り尽くす〜   作:新川翔

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輝かしく勝てばいい

 戦いの始まりを告げるテンカウントが終わった次の瞬間、先程の撫で斬りが予備動作なしに飛んできた。

 

「居合 臓物撫で斬り」

 

 すぐさま反応したホリーハックが防御してくれたおかげで俺たちはその一撃を凌ぐことができた。

 

(予備動作短縮のチートか!?)

 

 居合のような、納刀する動作もない斬撃に相手が使った正体を看破する。

 

「ブラストブレイカー!!」

「アクセラレート・ロードストライク」

「暗刃:紫電」

 

 そこに付け込むようにハンマー男、銀騎士、忍者がそれぞれスキルを発動して彼女に迫る。

 

「骨喰の蛇」

 

 その程度の波状攻撃で彼女は崩せない。

 彼女は再び鞭のようになった槍を振りまわして攻撃を全て弾いてみせる。

 

「俺のコト、無視しすぎだろ。『ヒートマグナム』」

 

 決闘において仲間の攻撃は当たらない。

 その性質を利用した俺は一直線に走ってハンマー男の背に触れて、一番火力の高い魔法を放つ。

 中級火炎魔法『ヒートマグナム』

 魔法攻撃力に振ったこのステータスなら多少ダメージを────

 

「効かん!」

 

 与えられていなかった。

 体力バーは10%も減っておらず、俺は反撃で岩の壁まで吹き飛ばされてしまった。

 レベル100とレベル50では抵抗できない差があるように、レベル30ではまだ、レベル50には対抗できない。

 

「クソっ」

 

 闘志に実力が追いついていないことを実感した俺は、そんな状態でもなんとか勝てないか、策を出そうと脳みそを絞り上げる。

 俺の強みはfpsの経験だ。それを生かせる立ち回りが出来ていない。ただ葵を援護しているだけではこの状況は打破できない。もっと圧倒的な何かを用意しなければならない。

 

 

 そんなものは、ない。ない。ない。ない。

 

 

 焦っても具体的な策は出てこない。

 そして、考えているだけでは絶望的な状況は打破できない。

 ハンマー男が俺を仕留めようとにじり寄る。

 葵は3人のチーター相手に、何とか拮抗状態を作り出している。

 

 一人、フリーとなったドクロ兜はこの勝負に王手をかけた。

 

「白天極陽 灼熱日輪!!!」

 

 バカみたいな大声と共に、俺たちは窮地に立たされた。

 強力な火炎系の魔法が俺たちの頭上に顕現した。

 

「ちっ、面倒なことしやがって」

 

 決闘の範囲内全てを覆う巨大な火球は俺たちを押し潰そうと、徐々に天から降りてきている。ハンマー男は巨大な魔法の発動を察知すると、その足を止めて太陽を見上げて舌打ちをした。

 勝負の決着が脳裏をよぎる。

 たった一人を除いて。

 

伽藍穿牙(がらんせんが)

 

 薄浅葱(うすあさぎ)の騎士は地面から飛び上がって、一撃を以って太陽を貫いた。

 閃光は未だ輝き、そびえる障害の全てを破壊する。

 

「流石ラウンズ、だが、これはどうかな?」

 

 その様子を眺めたドクロ兜はすぐに次の手を打った。

 

「灼熱日輪 惑星流星群!!!!」

 

「…………はぁ」

 

 彼女は無力感からため息を吐いた。

 空から降るのは先程破壊した太陽。それが10個。

 巨大な恒星たちに押し潰されて、俺たちは敗北した。

 

「ハハハハハハハハハハ!!!!!!ざまぁないな!!!!!!ラウンズも!!!チートにかかれば!!!!!!この、ざまだ!!!!!!!!」

 

(どうやったら勝てる?)

 

 負けた。どうしようもなく理不尽に殺された。

 

(正攻法では無理だ)

 

「ねぇ、ケイ!何か策ある?」

 

 俺たちは顔を合わせて対策を考える。

 しかし、俺は彼女の目を見ることが出来ない。

 それは絶望的な無力感からだった。

 この場で足を引っ張っているのは俺だ。俺がより有効的な行動が出来なければこの決闘に勝てない。

 

 

 それではどうする。

 

 

 チーターにはどうしても勝たなくてはならない。

 こんな愚行、こんな理不尽、一秒でも早く撃破すべきだ。

 この力で、今ある力で、勝つしかない。

 思考しろ。俺はどうすれば勝てるのだろうか。さっきの戦いだって、fpsの経験は生かせていなかった。ただ、レベル差とチートによる暴力で倒されただけだ。もっと整理しなければならない。Fpsの経験などという抽象的な強みではダメだ。

 

 探れ。探れ。俺の全てを探れ。

 

 この戦いに生かせる俺の────

 

「ケイ!どうしたの!?」

 

 彼女の大きな声で我に返る。

 朧げだった焦点は次第に定まって、俺の目には彼女が映る。

 彼女の声が、目がそこにはある。

 

(そうだ。そうだった。さっぱり忘れていた。俺は1人で戦っているんじゃない。俺の周りには仲間がいて、チーターがいて、フィールドが、建造物が、射線がある。この視点が俺の強みだ)

 

「ごめん。ぼーっとしていた」

 

 もう、軸をぶらすな。

 その意思をより強固にするために、力強く彼女の肩を掴み返す。

 

「ホリーハック、作戦は変わらない。倒すぞ。アイツらを」

 

「おっけ」

 

 俺の目を見た彼女は噛みしめるように笑って鎧を装着し、敵を見据えた。

 カウントダウンは終わり、決戦は始まる。

 

(もう大丈夫だ。勝ち方は見えている)

 

 すぐに地形の三次元マップを頭に叩き起こす。

 

 相手の行動、味方の移動先、全ての選択を予想してコースを作り上げる。

 

「ファイアショット」

 

 それと同時に炎の剣を出現させた。数は100本。

 確実に斃すにはこれしかない。

 

「なんだ、あれ、MP切らすつもりか?」

 

 ドクロ兜が疑問を口にした直後に、全ての剣を射出する。

 剣は一直線に、敵を殺すべく飛び出していく。

 

「避けれ、ば、ホーミング!?」

 

 銀騎士がバックステップで回避をしようとした瞬間、他のチーターを狙っていた剣がギュン、と曲がり奴の喉元へ襲い掛かった。

 

「一々弾道を考えてるのか、コイツ!」

 

 ハンマー男は回避しながらその剣の異常性に勘づいた。この100本の剣の全て、俺が弾道を設定している。お前たちの行動を予測し、その全てに対応できるような特別な弾道だ。しっかりとデザートまで味わってもらおうか。

 

 剣たちは最初にチーターたちが立っている場所を狙い、そこからは四方八方へ他のチーター(・・・・・・)の方へと飛んで行く。20本は彼らを逃さぬように、衛星のように周回させて、残りの80本は奴らを狙い飛び交っている。

 目の前だけではなく、横や背後からの剣を警戒しなくてはならない。

 

「クソっこのままじゃ」

 

 忍者は回避しながらあることに恐れていた。

 この剣自体は彼らにとって脅威ではない。ただ、脅威なのはホリーハック。この剣を受けると軽い『のけぞり』が発生し、彼女へ攻撃を許してしまう。

 そんな警戒を掻い潜るように、蛇が彼らの足元を這っていた。

 

「骨喰の蛇」

 

 彼女は間合いを伸ばすスキルをワイヤーのように使うことで奴らの懐へと飛び込んだ。炎の雨の中、騎士は敵を貫いていく。

 四方八方から迫る刃の嵐は、回避を強要させるだけでなく、奴らの視野を潰すことで最高の舞台を整える。

 

 

 状況開始から3秒。

 

 

 武者を討ち取り、残り全てのチーターの体力を半分減らし、嵐の中でホリーハックは完成する。

 チーターたちはこれから始まる一方的な虐殺へ恐怖した。

 

「来るぞ!どうするんだ?」

 

 忍者が対策を問う。

 

「んなこと言ってる前に攻撃しろ!」

 

 ドクロ兜は問いを切り捨て、

 

「無理だろ馬鹿か!」

 

 ハンマー男は仲間割れに嫌気がさして、

 

「おい!誰か盾になれよ!!」

 

 銀色の騎士は自身のことしか考えていない。

 

伽藍穿牙(がらんせんが)

 

 バラバラなチーターたちを、深紅の槍が青い閃光を伴って破壊していく。

 

 吐かれる怨念も、醜い足掻きも、身勝手な空中分解も、ホリーハックによって貫かれた。

 

「は…………?」

 

 最初に倒されたのはドクロ兜。

 初戦のように心臓をクリティカルのエフェクトと共に貫かれて倒された。

 次に銀色の騎士だ。

 上段からの斬りかかりに対して、奴の右側へ滑り込むようにして回避する。ついでに胴体へとクリティカル攻撃を当てることで討伐を完了させた。

 攻撃を終えた彼女に襲い掛かる忍者はノールックの伽藍穿牙で貫かれた。

 

「まだ終わってねぇぞ!」

 

 最後の生き残りは炎の剣の雨を受け止めながら、葵の攻撃範囲外でハンマーを構えている。

 

「いや、もう終わりだから」

 

 奴の腕には既に蛇が噛みついている。

 

「嘘だろ……」

 

「『骨喰の蛇』便利でしょ?」

 

 今度は奴を引っ張り、彼女の間合いに引き込んで最後の一撃を放つ。

 

伽藍穿牙(がらんせんが)!!!!」

 

 この勝負が終わる頃には炎の雨も止んでいた。

 

「ホリーハック!」

 

 こちら側の勝利を知らせる『Victory』の文字が見えた瞬間、俺は葵へ手を掲げながら走り出した。

 

「ケ、サム!」

 

 今度こそ完膚なきまでに勝利できた。

 妨害はない、漁夫はない。

 俺は理不尽に勝利できたのだ。

 ハイタッチの音が辺りに響き、俺たちは歓喜を共有する。

 

「頼みがあるんだ。いいかな?」

 

 やっぱり、彼女と一緒に何かを果たす、というのは嬉しい。

 連携も息はぴったり、

 

「うん、どうしたの?」

 

「俺と、俺たちの仲間とチーターを倒そう」

 

 

 

 

 アタシは夏目慶のことが好きだ。

 それが恋愛感情かどうかは分からない。

 だって、恋愛って、もっと熱いものだと、考えているからだ。

 大好きの理由は、憧れと安心。

 彼はアタシとは全く違うタイプの人間だ。

 でも一緒にいて不快じゃない。

 それはいい感じに距離が遠く、近いからだ。

 第二の家という表現もいい。

 話していると、知らない話が聞ける。彼は結構アウトドア派で旅行の話だとか、面白おかしい話だとかをよくしてくれる。アタシの趣味には共感してくれていて、一緒にゲームをしてくれる。

 彼は冗談もシリアスな話題もなんでも受け入れてくれる。

 そして、一緒にいるのが当たり前というカンカク。

 こんな人好きにならない理由がない。

 そしてそんな好きな人が、私が考えていることと同じことを考えている。

 

 

 だから、この誘いを断る理由なんてない。

 

 

 

「うん!」

 

 葵は即答で俺の願いに同意してくれた。

 

「ま、まだだ」

 

 そんな中、尻尾を丸めて逃げるわけでもなく、しぶとく諦めずに地面を這っている男がいた。

 

「まだ、俺たちは本気をこれっぽっちも出しちゃいない!」

 

 ドクロ兜の闘志はまだ消えていなかった。

 

「そうか、ならばその本気俺にぶつけてみろ」

 

 俺たちの間に一本の青い剣が突き刺さる。

 

(この剣は、まさか……!?)

 

 この剣には見覚えがある。

 剣が投げられた方向を見ると一人の男が黒い外套を揺らしながら立っていた。

 全身黒いコーデ、深く濁った黒い目、見覚えのある二刀。

 

「キリュウさん!?どうしてここに!?」

 

 チートハンタ―ズの最高戦力、諦めた男が何故かこの場に立っていた。

 

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