チートハンターズ 〜このゲームのチートは全て狩り尽くす〜   作:新川翔

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波乱の講義

「それでは次の第3ウェーブ。私たちがやろうか」

 

 第2の鍵を手にしたその時、マスターさんがバエルさんの肩を持ち強引に俺たちの進行方向へと移動させる。

 

「どういう意図だ?マスター」

 

 サングラスをしているバエルは眉をひそめて疑問を口にしながら両手を目の前に突き出す。するとサイコキネシスが発動。押し寄せてくるチーターたちを受け止めている。

 

「肩慣らしですよ。団長さん。ここからのキーマンは主に私と貴方。貴方が理不尽と正面切って戦って、私が絡め手で足を掬う。その戦い方をここで一旦練習しておきましょう。他の皆さんには自分を守ってもらう。ということで」

 

「なるほど……理解した。やってみよう」

 

 そして再び現れるチーターたちに向かって2人のラウンズが走り出した。

 ぎゅうぎゅうになっていた奴らは雪崩のように一人の最強に向かって押し寄せる。

 

 俺はその光景に絵画的な神秘性を感じ取らずにはいられなかった。

 

 ラウンズのファーストは雪崩の戦闘に対して抜き手を一つ、放つ。

 するとどうだろう。およそこのゲームでは目にすることのできない光景を目にする。

 それはまるでモーセのようにチーターたちという海を割ってしまう。

 

「ふん……」

 

「かっこつけた?」

 

 自慢気に鼻を鳴らす彼に対して、マスターさんはズバっとした物言いで突っ込む。

 

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………つけた」

 

 チーターたちが元の雪崩に戻りさらに彼らの目と鼻の先にまで迫るまで黙ったいたバエルさんは、ようやく喋った瞬間に足をドン、と強く地面に叩きつけた。

 

「図星?」

 

 サイコキネシスに踏み付けられて消滅するチーターたちには目もくれずに、彼が晒した弱点を攻め続けているマスターさん。それを見た俺は────

 

(何をイチャイチャしてるんだ……?)

 

 ただただ困惑していた。

 

「まずいな。マスターのSっ気が出てきた」

 

 すると、まるで解説役のように師匠であるロードさんが俺の隣に現れる。

 

「だがこれも良い機会だ。アサヒ、蹴散らしながら話す余裕はあるか?」

 

「いつも効率的にやっているからな。あるぞ」

 

 さらに彼は片手間でチーターたちを倒しているアサヒさんに手招きをして傍に呼び寄せた。

 

「よし、それじゃあ。協力してくれ。弟子のゲームIQを上げる」

 

「ほう?面白そうだね。いっちょ噛ませてもらおう」

 

 前方で二人のラウンズが荒波を破壊している最中、他の者たちは身に降りかかる火の粉を払いながら、俺の強化を行うことが決定してしまった。

 

「ロード。確か彼に効率よく勝つ方法について教えるとのことだったが、それでいいのか?」

 

「ああ、そういうのはお前の専売特許だ。よろしく」

 

「いいだろう!それではサム。目の前にマスターの戦い方を見てくれ」

 

 俺はアサヒさんに流されるままに、彼女の戦いを眺めることにした。彼女はまるで蛇のような動きで立ち回っている。圧倒的な破壊をもたらしているバエルの倒し漏らした敵に対して攻撃をしているようだ。

 まずはチーターの体に触れ状態異常である毒、もしくは麻痺を付与。動きが鈍ったところにもう何回かボディタッチをして右手の脇差で切り裂いている。

 

「ん?視線を感じる……。お~い。見てます~?見惚れてな~~~~」

 

 所属クラン『ラウンズ』 

 フィフス(5位)

 ユーザー名 マスター

 

 スキル・装備構成

  無惨脇差

   |セットスキル 以毒制毒

  凄惨たる毒手

  壮絶たる麻針

  素早さアップ×3

  MPアップ×2

 

 すると話の話題になっていることに気付いた彼女は手を振りながら戦いはじめた。

 

「さて、今はアレと会話しなくていい。何か戦い方で気付くことはあるか?」

 

 ロードさんはそんな彼女を無視しながら話を続ける。

 

(えっと……どうしよ)

 

 俺は反応すべきか困惑しながらとりあえず小さく手を振り、彼女の戦い方の特長を見出すことにした。

 

「……器用に戦ってるなって感じですかね。とにかく敵とそこまでの最短距離、攻撃方法を導き出すのが上手いって印象です」

 

「その通り。奴はアサヒの言う効率とはそういうことだ。彼女の戦い方は2つの段階に分けられる。①まず、スキルを用いて敵を状態異常にして、②状態異常特攻スキル『以毒制毒』で相手を仕留めるものだ」

 

 するとアサヒさんが気まずそうな顔をしながら会話に入ってきた。

 

「ロードが言ってくれちゃったが、効率がいいってのは、そういう『押し付けられる勝ち方』を持っているということだ。それではお前の強みはなんだ?」

 

「俯瞰視点で戦えるってことです。だから普段は中距離で殲滅するって形をとって戦っているんですけど、中々上手くいかなくて。その戦い方で勝つっていうケースが少ないんです」

 

「そうだな。スピードとの戦いは見たぞ。彼のスピードに後手に回されていたな。まあ、アレに関しちゃあ、ぶっちゃけそれでいい。気にする必要はない。彼に振り回されず戦うというのは無理な話だ。それよりも私としてはお前の直すべき点が見えた」

 

「それは?」

 

「ふふん、言って欲しいか?」

 

 急に彼はもったいぶる態度で俺の反応を楽しみ始める。

 

「はい。勿論です……!」

 

「ふふふふふ、本当に聞きたいか?」

 

「え。あ。はい」

 

 どうしよう。正直、だるい。

 

「アサヒ、もったいぶらない。今時間ないからね!!!配信者でしょ。結論から言って。チャンネルの登録解除するけど」

 

 するとチーターをばったばったと倒していた葵が俺の元に飛んで戻ってきた。兜を外し少々怒りながら槍の穂先を向けている。

 

「ああ!それだけはやめてくれ!!」

 

 すると彼は、兜で表情は読めないものの明らかに嘘めいた声色で言い訳をし始めた。

 

「うん!お前の直すべき点は戦法だ。中距離殲滅ではなく近距離での魔法の戦闘を行うといい」

 

「はえ?」

 

「お前は何を言っているんだ?」

 

「あー」

 

 そして告げられた直すべき点。俺とロードさん困惑、葵は納得していた。

 

「冗談ではないぞ。これがサムに合う最適で効率的な戦い方だ」

 

 こうして波乱の講義は始まることとなった。

 

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