チートハンターズ 〜このゲームのチートは全て狩り尽くす〜   作:新川翔

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熾烈すぎる戦い③

 はじめまして!

 私の名前はクラッシャー。

 チーターをやっています。とあるゲームを荒らして欲しいって友人から誘われて、アバタードリフトで荒らしをしているんですけど……

 今、とんでもない女の子に襲われています!

 

「ねぇ!何この子!めっちゃ追ってくるんですけど!」

 

 

 

 

 長い薄緑の髪を三つ編みにした美女が木々を飛び回りながら悲鳴を上げている。服装は動きやすそうなボディスーツを着用しておりその右手には杖が握られていた。

 彼女を追っている者の名はクレナータ。覚醒した天才は的確に魔法を回避しながら神話魔法を即時発動できるチーターを追い回していた。

 

(よし、どんな魔法を発動するためにはその魔法の名前を言わなきゃいけないって仕様は変えられてないみたい。これなら聞いてから回避できる)

 

 彼女はすぐにでも目標が果たせることを確信しながら懐に飛び込んだ。

 

「全く、ストーカーされるの、好きじゃないんだけどね。アトラスの槍、いっぱい(・・・・)

 

 クレナータがチーターの懐に入り込んだ瞬間、彼女の前方3メートルの空間に無数の水の槍が瞬時に展開される。彼女の使用するチートは二つ。一つは『MP無限』。もう一つは『詠唱破棄』。如何なる魔法も無制限かつ即座に連発できる超攻撃的なチート構成。

 

 罠への誘い込みに成果したことを確信するクラッシャーは、ニヤリと笑って串刺しになるであろう天才の絵面を思い描いていた。

 

 

 しかし彼女は思い知る。覚醒した天才は槍の雨程度なら対処してくることを。

 

 

 五感全てを用いて魔法の発動に0.1秒で反応。体をひねることでその全てを回避した。

 

「気持ち悪い……!」

 

 そして対処する間もなく最速の一撃が叩き込まれた。

 

「王道軌跡!!!」

 

 腹に一撃。レイピアが深々と突き刺さる。

 

「まだまだ……!」

 

 突き刺さった剣を引き抜き更なる連撃を試みるクレナータ。クラッシャーはその様子を見たチーターは──

 

 

「…………」

 

 

 

 

 

 心底うんざりした。

 

 

 

 

 

(憎い。絶望しない人間が憎い。嫌い。揺らがない人間が嫌い)

 

 フラッシュバックするのは過去の恐怖。

 

(なんで(チーター)のことを怖がらないんだろう?)

 

 期待を砕かれたクラッシャーの目は酷く暗くなり、ただ無言でクレナータを蹴とばした。

 宙を落下していた二人はそのまま地面に落下して相対する。

 

「……なんで、怖がらないのかな?」

 

 彼女はハイライトの消えた真っ黒な瞳でクレナータに問いかける。

 

「今の私には目指すものがあります。そこに辿り着くためには何かを恐れている暇なんてありません」

 

「そっか、でも怖がって欲しかったなぁ。女の子だしさ。キャー、とか怖がって欲しかったなぁ」

 

「意地でも怖がりませんから」

 

「……ふ~ん。そこまで言うと、怖がらせたくなっちゃうなぁ~~~」

 

 クラッシャーはクレナータの言動を楽しむように顎に手を当てて頬を紅潮させながら微笑んでいる。しかし、その目が笑っていない。

 

「そういう趣味を持つのは結構ですけど、あなたはもう戦場にいる。高みの見物なんてできませんよ」

 

 常軌を逸する表情をしているチーターに警戒するように剣を構えるクレナータ。すると、チーターが予想していなかった光景が移る。突如クレナータの胴体を貫通するように黒い剣が飛んできたのだ。

 

 

 投擲したのはキリュウ。彼は視覚を利用してチーターに奇襲を仕掛けたのだ。

 

 

「言ったでしょう。ここはもう戦場」

 

 剣の投擲をギリギリ反応して杖で弾いている隙に、クレナータが追撃を放つ。

 

「王道軌跡!!!」

 

 再び加えられた刺突。間近で観測するクレナータの輝く瞳。

 その全てが、クラッシャーの癪に、触る。

 

「アトラスの槍」

 

「インペリアルステップ!」

 

 再び彼女の心臓にめがけて放たれた水の槍。詠唱を認識したクレナータはすぐさま移動して距離を取ることで一撃を回避する。

 

 

 そして回避した先、そこには背中を向けた黒衣の剣士がいた。

 彼らは背中合わせの状態となり、チーターに包囲されている。

 

「はい、落とし物です」

 

 彼女はクラッシャーから離れる際についでに拾っていた黒い剣をキリュウに手渡しする。

 

「ありがとう。さて、条件は揃ったな。ここにいるプレイヤー全員が同じ戦場に立っている。……いくぞクレナータ。乱戦だ」

 

 その言葉を皮切りに3対2の乱戦の火蓋は斬られた。

 

 まず二人はクラッシャーに向かって走り出す。 

 エンド、クライハートはそれを追う。

 

 自身が追われる状況であると嫌でも察しがつく彼女は取る策は一つ。

 逆の、前進(・・)

 

「「!?!?」」

 

「アトラスの、槍!2本!」

 

 その驚きに付け込むように神話魔法が炸裂する。

 キリュウはその脅威の反応速度で回避するがクレナータは遅れてしまう。

 

「くっ」

 

(まずい……!)

 

 強化された神話魔法は彼女の心臓を貫き、体力の半分(・・)を削った。

 

(まずいまずいまずいまずい……!!反応が遅れた。目の前の光景に集中しちゃった!)

 

 彼女は『足を引っ張ってしまった』という焦りから思考が真っ白になる。

 

「……やっと!」

 

 クラッシャーは弱りを視界に入れや瞬間、頬を紅潮させる。

 ここでチーターたちのターゲットが絞られた。敵味方が入り乱れる乱戦ではその混雑とした状況を打破するために各々が狙いを定めて動き出す。この場合の最も手早い乱戦の解消方法は弱き者を狩ることだ。

 

 

 今この場で一番の弱者はクレナータ。

 

 

 チーターたちの狙いが一点に絞られる。

 

「ガンズロック!!!」

「アトラスの槍!!!」

「鬼神合掌!!!」

 

 チーターたちはキリュウとクレナータの連携を恐れていた。

 彼らにとってアレは脅威だ。戦いの最初、クライハートがその餌食となった際にはみるみる内に体力を減らされていた。乱戦中にそんなことを許しては1人1人潰されるように倒されてしまう。だからこそ、連携のピースであるクレナータの撃破は急務だった。

 

「「「取った(キルだ)!!!!」」」

 

 彼らはそれぞれが必殺に繋がる技を放ち一人の少女を倒すことに躍起になる。

 

(…………ん?)

 

 チーターたちの内、クライハートの脳裏に疑問がよぎる。

 

(おい、キリュウを無視していいのか……?)

 

 その疑問は巨大な後悔へと変貌する。

 

流星剣戟(ステラ・ストライク)潮流(ヴェーレ)

 

 チーターたちに剣の激流が襲い掛かる。

 迸る青い流星の数々。それに反応できたのはクライハートのみ。

 彼は何とか防御できたものの、他二名は有無を介せず切り刻まれることになり残り体力は4割となった。

 

「……俺がそっぽ向いたからって必死になりすぎだぜ」

 

 クライハートの残りの体力は7割。彼はこの状況に焦りながらも黒衣の剣士に羨望の眼差しを向けていた。

 

(ああ、やっぱりお前は、俺が生涯を賭けて倒すべき……)

 

 対してキリュウの体力は9割。

 だが油断はない。相手はスキルに発動なタメ(詠唱)をチートで破棄して攻撃をしてくる。それらの強力なスキルは、どれも一度受ければ形勢がひっくり返ってしまうものだ。

 

「ありがとうございます。キリュウさん」

 

「気にするな。次は反応するぞ」

 

 危機を脱したクレナータはインペリアルステップでキリュウの隣に立った。

 思考は段々と色を取り戻しており、たった一つの不安を除いて意識は戦闘に向かっている。

 体力差があるとはいえ状況は拮抗と言える。

 

「間に合ったか。サム、ホリーハック」

 

 丁度その時、この部屋に新たな侵入者が現れた。

 サム、ホリーハック、ラウンズの面々とウェポンズの者たち。彼らは第2層をクリアしてここに辿り着いた。それを足音とSNSでの情報共有で察知したキリュウは視線を送らずに彼らを制止する。

 

「俺達で彼らを斬り捨てる。無駄な体力は使用しないほうが良い」

 

 1分と5秒後、勝敗は決することとなる。

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