死神inハイスクールD×D   作:バキュラø

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それではどうぞ





朱乃と一護

 一護とソーナが自分たちの境遇を嘆くのを気にせず、アザゼルは話を戻すように一護に向かって声を掛ける。

 

「それで、随分とまぁデケー魔力を感じるが、お前さんはいったいどういう存在なんだ?」

 その質問に一護は、ほとんどがリアス達に話した時と同じように自分がこことは別の世界から来ていること、そこで起きた異変を調査しに来たことを伝えたのだった。

 まあ、それを告げる声は疲れた気配を漂わせながらではあったのだが…

 

「ふーん…魔力じゃなく、霊力って力があって俺らみたいな存在がいない世界ねェー。それで死神代行というわけか…なるほど、なるほど。通りでこの世界のどこの神話体系の死神達とも話がズレるし、ヴァ―リが戦い以外に強い興味を示すワケだ」

 納得したようにうなずきながら、アザゼルは一護の話に反応した。どうやらアザゼルがここへやってきたのには、少なからず一護のことについて知るという狙いもあったようだった。

 

 

 

「待て待て、オッサンが堕天使の総督とやらなのは、分かったけどよ。なんでこの間の白い鎧のやつとアンタは仲がいいんだ?あいつ堕天使ってわけじゃねーだろ?聞いた話だと、別の種族同士は仲が悪いことが多いって聞いたけど」

 あいつ、ドラゴンを宿してるって話だし、と一護は疑問をぶつける。

 

「う、ウルセー、まだおっさんじゃねーよ‼って言っても、最近は話し合いが出来ないほど仲が険悪ってーわけでもないからな。いろいろ親交はあるわけだ。ま、研究者な俺としては、早いとこ和平が成っちまえばそれに打ち込めるしな!」

 動揺したように言葉をどもりながらも、アザゼルは一護の問いに軽く答えた。

 

「そ、そうなのか…浦原さんに言われたことでもあるし、俺も、もう少しこの世界について知った方がいいかもな」

 その返答と研究者というワードに、二人ほどの顔を幻視しながら、やはり浦原に言われた調査の為にも行動を起こそうかと一護は考えを巡らせ始める。

 

「俺としては知的好奇心が抑えられないからもう少し、お前さんと言葉を交わしていたい気はするんだが……こうもあいつ(バラキエル)の娘ににらまれてたらな………」

 

「娘?………朱乃、どうしたんだ?」

 ふと一護が、肩を竦めたようにして話すアザゼルの視線の先に目を向けると、この世界に一護が来てからよく世話になる朱乃の姿があった。

 

 

 アザゼルと、アザゼルの先にいる何かをにらみつけるようにして…

 

 

 だが、一護の視線に気付くと、朱乃はバツが悪いのか別の場所に視線を逸らしたのだった。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、そっちはそっちで話があるみたいだし、続きは会談の時にでもするか。またな!」

 それだけ口にすると、後ろ手に手を振りながら、アザゼルは来た道を戻るように姿を消したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのすぐ後のことだった。

 

 

 

「一護さん、明日の放課後少し付き合って頂けませんか?」

 そんな言葉を一護が、朱乃から切り出されたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてアザゼルが訪れた次の日、一護と朱乃は、約束通り二人きりで会うこととなった。学校近くで待ち合わせをした一護は、朱乃に連れられ、とある神社へとやってきていた。

 神社につく頃には、もう辺りは日が暮れ、少し薄暗くなり始めていた。

 

「どうぞ、遠慮せず中へ入ってください一護さん」

 辺りの境内を物珍しそうに眺めていた一護は、その言葉に促され朱乃と共に朱塗りの屋根を持つ社殿の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「へえ、ここは朱乃の実家なのか」

 

「はい。もっとも、この家に戻るのは週末がほとんどで、普段は学校の近くに住んでいるんですよ」

 

「そうなのか?」

 

「ええ…」

 一護と朱乃は用意されたお茶を飲みながら、縁側に並んで座り、取り留めない話を続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

「…一護さん、本当は気付いているのでしょう?こんな、なんでもない話をするためにあなたをここへ呼んだのではないと」

 少し時間が経った頃、朱乃は一護にそう、切り出した。

 その声は、少し怯えを含んだもののように一護には感じられていた。

 

「…」

 

「沈黙は、肯定と受け取りますわ」

 

「…昔、ある奴に悩みを無理に打ち明ける必要はないって言われてな。随分、気が晴れた。それからは、悩みとか無理に聞き出さないようにしてんだ。だから話すのが辛いなら言わなくていいぜ」

 朱乃の言葉に困ったような表情を浮かべ、一護はそう口にする。

 その言葉に、驚いたような顔を浮かべ、朱乃は相好を崩す。

 

「それは…とても甘美な提案ですわね……でも、聞いてほしいんです。ワタシのことを。ワタシを救ってくれたあなただから」

 その言葉を皮切りに朱乃は自分のことをぽつりぽつりと語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の母は、とある神社の巫女の家系でした。仕事の内容は、まあ、簡単に言うと退魔を生業としていましたの。ですが、ある堕天使を救ったことから二人は恋仲となり、ワタシは生まれました」

 

「ッ!つまり朱乃は堕天使と人のハーフ?」

 その告白に一護は驚きを露わにした。

 

「そうなりますわ。実をいうと、この神社はもともと私が幼いころまで住んでいた場所なんです」

 朱乃は庭先に視線を向け、懐かしむように話をつづけた。

 

「そうだったのか…ん?それじゃあ、なんで悪魔に転生することになったんだ?」

 

「…それは、ワタシの母親が殺されたからですわ…堕天使と通じ合った私たちを疎ましく思っていた身内に刺客を送り込まれて」

 

「…」

 一護は黙り込み、視線を逸らさず、堰を切ったように言葉を紡ぐ朱乃を見つめていた。

 

「刺客たちが私たちを亡き者にしようとやってきたときは、あいつ(バラキエル)がちょうど、留守にしているタイミングでした」

 

「母さまは襲ってきたものから、必死で私を守ってくれました……あいつが私たちのところに駆けつけたのは母さまが事切れてからすぐのことでしたわ…」

 

「『どうして守ってくれなかったのか』、『すぐに来てくれなかったのか』、そう、詰め寄る私をおいて………あいつは私の元を何も言わず、去りました」

 

「ワタシは憎かった。母さまを殺した奴らも、助けてくれなかったあいつも、そんなあいつがいる堕天使も。自身に流れるこの血も……何もかもすべてが」

 

 

「そんな憎しみに囚われているときに、リアスと出会ったの。いっそのこと、悪魔にでも転生すれば、この薄汚い血と決別できると信じて…でも、結果として生まれたのが堕天使の羽と悪魔の羽、両方を持つおぞましい化け物でした。ふふ、笑えますわよね」

 朱乃は自らを卑下するように自嘲した。それは一護に醜い自分をを見せつけて、どうだ嗤ってくれと言っているも同然の口調だった。

 

 

 

「…」

 

 

 

「奇妙でしょう。不気味でしょう。そもそも、悪魔なんていない世界から来た一護さんにとって、どちらも奇異に、恐ろしげに映るかもしれませんが……つまり、私には悪魔の羽と堕天使の羽があります。…………本当は、本当のワタシは………どうしようもない、おぞましい化け物なんです」

 そう、朱乃はうつむき加減に言い切ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読了ありがとうございます。




自らの秘密を語った朱乃に一護は何を想うのか。
次回 朱乃と一護②


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