レイ・グレック サーガ   作:ゼル・ユピート

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第2話 調査

「まさか……このマークは!……」

 

 レイは落ち着いたカフェで、HBと記されたコインを見るやいなや、気が動転し、思わずそれを落とした。

 

「どうか……されましたか?」

 

 手が震えるレイ。そんな動じる彼を不思議に見つめるサヤカ。

 

「すまない、何でもない……」

 

━━きっとなにかの思い過ごしか何かだ………あれは無くなった筈だ……

 

 レイは落としたコインを拾い上げ、机に置いた。彼の引きつったその表情を心配するサヤカ。

 

「大丈夫ですか?……」

 

「ああ……」

 

 レイは思い悩む様子で、コインを眺めている。その様子を見るなり、サヤカは塩たっぷりの熱いコーヒーをグビグビと飲み干すと、マグカップを机に叩きつけた。

 

━━ドン!

 

「ここで悩んでいても仕方ありません! とりあえず聞き込みを始めましょう!」

 

 サヤカは満面の笑みを浮かべた。

 

「え? いや、俺はゾイド乗りで、そんな事はやったことが……」

 

 思わぬサヤカの発言に、戸惑うレイ。

 

「いいからいいから。それに護衛は、騎士様のお仕事ですよね?」

 

 その後、レイはサヤカに半ば強引に聞き込みに協力していると、2人はある噂を耳にした。それは、盗賊がある日突然、共和国領内で大型の帝国製ゾイドを使っては、横柄に町を歩き周り、悪さをしているという事だった。ガイロスへの結びつきを感じた2人は、急いで向かうことにした。

 

━━━

 

「わ〜、綺麗な町ですね」

 

 レイ達は、その噂のもとに、標高の高い山脈沿いにある、小さな町へとやってきた。辺りは綺麗な野原が広がり、町の中央には雪解けたばかりの透き通った小川が流れている。そんな光景を見たサヤカは、目を輝かせていた。

 

「なんだか皆さん、のんびり生活してるって感じでいいですね。都会はなんだかバタバタしていて、疲れてしまいます。 あ、あのゾイド可愛い!」

 

 町の入り口でゾイドから降りると、サヤカは畑で荷車を引く小型ゾイドを指差し、子供のようにはしゃいで行った。辺りに戦闘ゾイドはなく、小ゾイドを活用して穏やかな雰囲気が漂っていた。そんな風景を眺め、レイは少し懐かしい気持ちになっていたと同時に、複雑な感情もあった。

 

「……よし、とりあえず情報の集まる酒場に寄ろう。あと、ここの所休めていなかったしな」

 

「はい、そうしましょう! 塩コーヒーもあるかな〜」

 

 酒場の扉を押し開けると、レイとサヤカは少し視線を感じながらも、空いた丸テーブルに腰を下ろした。

 

「すみませ〜ん。コーヒーと、たっぷりの塩を下さい。あとレモネードを1つ」

 

━━チリン

 

 サヤカが店員に注文すると、2人の大男達がズカズカと乱暴な足音を立てて入ってきた。その姿は町の綺麗な雰囲気とは違い、汚い革のジャケットに、腕には無造作な刺青をしている。

 

「おい、いつものよこせ。早くしろ」

 

 1人の男が横柄な態度でカウンターへ向かって大声をあげた。

 

「早くしろ! ジョリー様がお待ちだぞ!」

 

 もう1人の男はニヤニヤと不敵な笑みを浮かべながら言った。

 

「……お待たせしました」

 

 すると女性店員が、カウンターから大きな木製のジョッキを4つ程持ってくると、酒場の端のテーブルを占領するガタイのいい男たちに、怯えながら届けた。

 

「おい小娘! 俺達と楽しく飲もうぜ!」

 

「ジョリー様の女になれるなんて、光栄じゃねぇか。ははははは」

 

 店員の町娘に乱暴な手を伸ばす。2人組の大男の大声だけが響き、周囲は静まり返っている。皆も怯えて何もいえない様子だ。

 

「もしかして……あれが例の盗賊か?」

 

「かもしれませんね……」

 

 レイ達は警戒しつつ、様子を伺う。

 

「やめてください。本当にやめてください……」

 

「そう言うなって。ははははは!」

 

 ガタイの良いリーダー格の男が怒鳴りながら、嫌がる娘の腕を強引に引き寄せる。周りの人間達は、我関せずな表情で座っている。

 

━━なら、懲らしめてやらないとな……

 

 レイは盗賊にどう懲らしめるか考えた。

 

「よしサヤカ、俺が注意をひ……あれ?」

 

 ふとサヤカの座っいる方を見るも、彼女の姿は無かった。すると、酒場の端から声がした。

 

「ちょっと、そこの2人! 女の人に乱暴するなんて許せません!」

 

 サヤカは既に大男達の前に立ち、仁王立ちで立っている。

 

「それになんでそんなに偉そうなんですか? 自分達は神様か何かになった気でもいるんですか?」

 

 酒場が一瞬で静まり返る。盗賊たちの視線がサヤカに集中した。

 

「……なんだぁ小娘。俺達を誰だと思ってんだ?」

 

 リーダーが立ち上がり、サヤカに近づいてきた。

 

「ちょっと分からしてやるぜ」

 

 男が有無を言わさず拳を振りかぶる。サヤカは思わず目を瞑ったその瞬間。レイの体が動いた。彼は椅子を蹴り飛ばして間合いに入り、盗賊の拳を受け止めると逆に叩きつけた。

 

「くそ、てめぇ何しやがる!」 

 

 鈍い音と共に男の体が床に転がる。

 

「おいおい。うちのジョリー様に手を出すなんていい度胸してるじゃねえか」

 

 横にいる歯抜けた顔の腰巾着がニヤつくと、酒場一体が張り詰める。

 

「お前達は、最近噂になっている帝国ゾイドを使って暴れ回っている盗賊か?」

 

 レイは肩のホコリを軽く祓い、やる気に満ちている。酒場は騒然となり、ガヤガヤと村人たちが慌てて壁際に避難する。

 

「てめぇその制服、共和国軍か?……俺達に歯向かった奴がどうなるか知ってんのか?」

 

 リーダーが血を吐きながら立ち上がると、レイを睨みつけた。

 

「お前達のようは奴らは、ゾイドに乗っても、弱いものを虐めて勝った気でいる、所詮3流なんだろうな」

 

 レイは毅然とした態度でゾイド乗りとして男達を挑発した。サヤカはその様子を唖然と見ていた。

 

「なんだとコノヤロ! 何もかも気に食わねぇ野郎だ。表に出ろ! ゾイドで勝負をつけてやる。正々堂々と一騎討ちでな」

 

 周囲では動揺でざわめく声がする。隣の腰巾着はニタニタと不気味に笑っている。そんな中、レイは真っすぐに答えた。

 

「いいだろう。受けて立つ!」

 

━━

 

 2人は盗賊が指定する森に囲まれた野原へとやってきた。するとそこには、赤い大型ゾイドがどっしりと立っている。

 

「……レッドホーンか」

 

 シールドライガーのコクピットから、レイは低く呟いた。レッドホーンはスティラコサウルス型の大型ゾイドで、全身に火器を搭載し重装甲を身に纏っている。その姿は正に動く要塞と呼ばれていた。

 

「そのゾイド。ただの盗賊にしては立派なもの持ってるな。何処で手に入れた」

 

「ふん、お前達には関係ない話だ。お前が勝負に勝てたら教えてやるよ。ま、無理だろうがな」

 

 盗賊のリーダーであろうジョリーはメインコックピットからニヤリと笑いながら挑発した。

 

「何で奴らは2人乗りなんてズルい! これじゃあ卑怯じゃないですか!」

 

 サヤカは小高い丘から見守っていた。

 

「サヤカ大丈夫だ。こんな奴ら、俺一人で十分だ。それに一騎は一騎だ。問題ない」

 

 レイは冷静だった。

 

「ははは! たった1機のシールドライガーでこのジョリー様に敵う訳ないだろ! 食らいやがれ!」

 

 腰巾着の火器管制用コクピットに乗る盗賊がそう言うと、レッドホーンの背中にある3連リニアキャノンが轟音と共に火を噴く。直ぐ様回避するレイ。だが突如、機体の横から強い衝撃が走る。 

 

━━攻撃!? いったい何処から?

 

 レイが攻撃がきた横を見ると、ステルスバイパーが低い姿勢で影からビームを撃ってきていた。

 

「あ、あんなところに隠れていたなんて。卑怯者!」

 

 サヤカが怒った口調で叫ぶ。

 

「へ!勝てば良いのよ勝てば。そのシールドライガーも頂くぜ!」

 

━━!

 

 レイの目が鋭く光る。そして突如として現れたステルスバイパーに襲いかかろうとした瞬間、ジョリーが叫ぶ。

 

「今だ! かかれぇッ!」

 

 すると、周りの森から6機のゾイドが一斉に襲いかかってくる。ステルスバイパー1機、モルガ3機、イグアン2機。どれも旧式だが、盗賊にしてはかなり豪華なゾイドたちであった。

 

「どこまでも卑怯な真似を……行くぞ、ライガー!」

 

 シールドは大きく咆哮すると稲妻のごとく動いた。レイはスナップスイッチをあげ、シールドを展開。前方からくるイグアンのビームを跳ね除け、ストライククローで腕を斬り落とす。

 

「すごい……さすがです! 私も加勢します!」

 

 サヤカは慌てて操縦桿を握る。しかし、彼女のコマンドウルフは急旋回でバランスを崩し、派手に丘を横滑りし、くるくると転げ落ちた。

 

「きゃあああ!」

 

 くるくると転げ落ちるコマンドウルフは、その衝撃で背中のビーム砲が暴発し、あちこちにビームを撒き散らす。

 

「おい、危ない!」

 

 咄嗟にしゃがむレイ。すると偶然にも、岩陰に隠れようとしていたステルスバイパーや、レイへと突進しようとするモルガに、次々とビームが当たる。

 

「……今の、狙ったのか?」

 

 レイが呆れ気味に言う。

 

「も、もちろんです!」

 

 サヤカは慌てて胸を張った。直ぐ様姿勢を取り戻す。

 

「さささ、気を取り直して、いっきますよー!」

 

 サヤカは辺りの小型ゾイドと交戦し始めた。先ほどの光景が嘘のように、華麗にコマンドウルフを走らせ、イグアン1機をビームで倒すと、辺りにスモークディスチャージャーを撒き散らし、敵の目を眩ませた。

 

「でかしたサヤカ。行くぞ!」

 

 レイは、一瞬怯んだレッドホーンへと向かっていく。

 

「おいエストポ! 奴が正面から来る!早く撃て!」

 

 レッドホーンの弾幕がシールドに襲うも、華麗に捌いていく。

 

「なら俺達もやってやるぜ!」

 

 レッドホーンが地面を蹴り出し、シールドの真正面に突進していく。頭部のクラッシャーホーンに熱が帯び、背中からリニアキャノンやミサイルが一斉に飛んでくる。

 

「食らいやがれ!」

 

 レッドの突進がシールドに突っ込む。

 

「その動きが、3流だって事だ」

 

 レイはレッドホーンの突進を華麗に躱し、右へ入り身。レッドホーンの左側面へと回り込む。

 

「エストポ! 何をやってやる! さっさと撃て!」

 

「ま、間に合わない!」

 

 レッドホーンの火器の回転より早く動くシールドを捕らえられない盗賊達は焦りだす。

 

「貰った!」

 

 シールドのストライククローがレッドホーンの脇腹に叩き込んだ。するとレッドホーンは吹き飛び、横転。そして止まった。

 一方サヤカは、スモークディスチャージャーを活用してモルガの射線にイグアンを誘導。わざとミサイル撃たせて躱し、イグアンに直撃。続けてモルガをストライククローで倒した。

 

「よし。」

 

 すると1機の別のモルガがレイの最後から狙っているのを発見した。

 

「あ、危ない!」

 

 急いで向かおうとすると、足元にあった岩陰に思わずつまずいて前に転倒した。

 

「あわわわわ」

 

 勢いよく転倒した先のモルガに当たり、その衝撃でモルガのガトリングが暴発。またしても運良く周囲のゾイドを次々と薙ぎ払った。

 

「お……おいおい、こりゃ凄いな……」

 

 レイが振り返ると、初めての光景に言葉を失った。気がつくと辺りは動かなくなった盗賊のゾイドが転がっていた。

 

「いてててて……」

 

 残りの盗賊達は勝ち目がないと分かり、残ったゾイドとビークルを使って素早く逃走していた。残ったゾイドをコマンドウルフで探索すると、サヤカがある物を発見した。

 

「あ、グレック少尉、これを見てください!……」

 

 サヤカが示したステルスバイパーのコックピットには、盗賊の持ち物であろう、まさしく《HB》のコインを発見した。

 

「これは決定的ですね! さ、早く追いかけますよ!」

 

 サヤカはコインを手にし、爽やかな笑顔で言うと、コマンドウルフを盗賊が逃げる方角へと向け、足跡を追って走り始めた。

 

「まったく、敵わないな」

 

 レイはそんなサヤカの調子を眺め、ウィナーやバディターにレオマスター達の姿、そして幼少期のあの頃を思い出す。そして少し胸のざわめきを感じながら彼女の後を追った。

 

〜続く〜

 

 




結局コインについては深く触れず、先延ばしに。
今後明かされるので、次回からの展開をご期待下さい。
そしてサヤカのキャラクターについては、今後のシリアスな展開に重要な役割となってます。このキャラクターについてもFB知ってると、より楽しめるかもしれませんね 
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