レイ・グレック サーガ   作:ゼル・ユピート

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第10話 西方大陸の回廊

 

 過去と未来が交差する古代遺跡に、不気味に蠢く者たち。レイ達を追い詰め徐々に逃げ道を塞いでいく。壁から出てきたのは、3つ口の巨大なワーム型の金属生命体だった。

 

「これもゾイドなのか?……」

 

「というか、かなり気持ち悪いんですが……」 

 

 そのワームの口はモルガの車輪で出来ており、3つの口がついている。身体は蛇のように長く、通常の野生ゾイドとは異なり、肉塊とパイプが金属皮膚の継ぎ目からはみ出している。

 

「ここはなんだかヤバそうですぜ?……」

 

 次々と穴からヌッと不気味に顔を出す。周りには1つ口の小型ワームがウジャウジャと湧いて出てくる。よく見ると、ワーム達はゾイドコアをその大きな口で噛み砕き捕食していたのだ。

 

「エストポの言う通り、ここはヤバそうだ……逃げるぞ!」

 

「はい!」

 

 逃げようとした時、巨大ワームが正面から勢いよく襲いかかる。

 

「早い!……」

 

 レイは間一髪避ける。ワームはその大きな口で床を掘削するように潜っていく。サヤカのコマンドもかろうじて避ける事ができていた。

 

「危なかったです」

 

「油断するな、奴はまた襲ってくる。早く出口へ向かうぞ!」

 

「出口と言っても何処へ?」

 

「兎に角ここじゃないところだ。急ぐぞ!」

 

 2人はブーストを展開し、来た道へと戻る。すると小型のワーム達が通路にある通気口やにところ狭しと湧いて出てくる。

 

「どれだけいるんだ?……」

 

「身体中が痒くなってきます〜」

 

 サヤカはウジャウジャと集まるワーム達をみるなり背筋を凍らせる。レイ達はそのワーム達を躱しながら遺跡を右へ左へと曲がる。

 

「グレック少尉! 道は本当にこっちであってるんですか?」

 

「分からん! だが恐らくこっちだ!」

 

……頼むぞ、ライガー。

 

 レイは感じていた。初めて来た遺跡にも関わらず、ライガーからは迷わず左右に走るのを。まるで出口を知っているかのように。すると、左右に激しく揺れるコックピットの後部座席から声が聞こえる。

 

「いててて……ん……ここは……」

 

 後部座席の気絶していたフリンが、ようやく目を覚ました。彼は気絶していた事も曖昧に、何が起きていたのか分からず、辺りをキョロキョロと見回す。彼の視線には、暗闇に続く通路の穴の至る所から、気味の悪いワームが溢れ出る様子だった。

 

「うあああ!……」

 

 フリンは群がるワーム達を見るなり、大声で叫ぶ。その後ピタりと声が聞こえなくなった。

 

「フリン?……」

 

 レイは後ろを振り返ると、フリンはあまりの気持ち悪い光景に、再び気を失っていた。

 

「やれやれ……」

 

するとサヤカがあるものを見つける。

 

「グレック少尉! ここに登道があります!」

 

「でかした!」

 

 レイ達は急いで駆け上がる。後ろにはワーム達が追いかけてくる。登道を出ると、宮殿の様な空間があり、奥には外からの光が見える。

 

「あそこだ! 急げ!」

 

 2人は必死に出口を出る。出口には西方大陸の熱い太陽の光が差し、辺り一面に森が生い茂る。レイが後方へ振り返ると、ワーム達は光から避けるように追いかけるのをやめ、突如背を向けて戻っていった。

 

「クーイン少尉。ここなら安全だ。」

 

「いったい何だったんですか?あれは。もう遺跡なんて入りたくないです!」

 

「現在位置は分かるか? エストポ」

 

「俺もここはわからねぇ。初めて来るぜ。だが、あっちに道が続いてるぜ」

 

 エストポの指す方には、石垣で出来た道が森へと続いていた。

 

「これを辿っていくか……」

 

 彼らは石畳を伝って森を抜け、街道に沿ってゾイドを進めると、谷に挟まれた道を進む。すると突き当たりには大きな鉄の門が現れ、脇には城壁のように高い壁で覆われていた。

 

「そこで止まれ。貴様らは何者か」

 

 その口調からして恐らく軍人だ。レイが見上げると壁の上にはコマンドウルフ数機が、彼らを見下ろすかのように見張っている。レイは軍人として毅然とした態度で身分を明かす。

 

「俺はヘリック共和国レオマスターのレイ・グレック少尉だ。そしてコマンドウルフに乗っているのが共和国情報部サヤカ・クーイン少尉だ」

 

「何用でここに来たのだ。ここは許可された者しか通す事はできん」

 

「俺達は盗賊に拉致された女性の足取りを追っている。盗賊の裏道である洞窟を通っている最中に穴に落ち、遺跡を抜け出してここまで来た。いまはここが何処なのか分からないんだ。長居はしない、道案内をして欲しい」

 

「……少し待っていろ」

 

 衛兵らしい男はそう言うと、数体のコマンドウルフを城壁に残し、城壁の裏へと消えていった。

 

「ここ、なんなんでしょうか? 歓迎はされていない感じはしますが……」

 

 壁の所々に砲塔とトーチカが谷を監視するように配置されていた。それはまさに自然の要塞だった。

 

「もしかして、ここはアーカディア王国か?……」

 

 エストポが呟く。

 

「エストポ、何か知ってるのか?」

 

「噂じゃ西方大陸の何処かにアーカディア王国とかいう中立国があるっていうのは聞いたことがある。だが誰も場所は知らねぇ。もしかしたらここがそうかもしれねぇな」

 

「アーカディア王国……」

 

「門が開きましたよ」

 

 分厚く重たい鉄の門が、ギギギと軋んだ音を出しながらゆっくりと開くと、5体のコマンドウルフがレイ達を警戒するように速やかに包囲した。

 

「レイ・グレック少尉とはシールドライガーのパイロット。貴官か? 見たところによるとレオマスターのようだが」

 

 落ち着きの中に威圧感を与える声が、通信機を通して聞こえる。

 

「ああ、そうだ」

 

「私はこの門で衛兵をしているザックス中尉だ。話を聞かせろ。何故ここに来た」

 

 レイは行方不明になったフェルミスや盗賊の事。洞窟や遺跡について説明した。

 

「なるほど……話は分かった。では我々の方でグスタフを用意し、盗賊野営地の近くまで案内するとしよう。貴官達には申し訳ないが頭巾を被ってもらう。この場所は誰にも知られてはならないのでな」

 

「ちなみにここは、アーカディア王国なのですか?」

 

 サヤカは興味津々に尋ねる。

 

「言ったはずだ。これ以上話せることはない。そして、ここで見たことは忘れるんだな。それが貴官達の為だ」

 

 衛兵のザックスはレイ達を冷たくあしらう。

 

「……分かった。とにかく道案内に感謝する」

 

 レイ達は彼らの指示に素直に従いシールドライガーとコマンドウルフをグスタフに乗せると、レイ達4人は頭巾を被され、グスタフの仮眠スペースに押し込められる。何時間か移動の末、ようやく解放された。その間、フリンは依然として気絶したままだった。

 

「着いたぞ」

 

 グスタフが停止し、頭巾を外されると、森の中だった。

 

「この道を北へ進むと盗賊達の野営地に辿り着くだろう。我々のできることはここまでだ」

 

「案内感謝する。ザックス中尉」

 

「雷光のご加護があらんことを。では」

 

━━?……

 

 ザックス達はそう言うとコマンドウルフに乗り、グスタフと共に去っていった。

 

「フリンさん、フリンさん! 起きてください!

おーい!」

 

 サヤカがフリンのほっぺをペシペシと軽く叩く。

 

「う、うーん……ここは?」

 

「もうすぐ盗賊の野営地に着きますよ」

 

「なんだか変な夢を見ていた気がする……遺跡の中に気持ち悪い虫がウジャウジャ湧いていて……」

 

「そりゃ怖い夢だったな」

 

 レイはフリンの必死な様子にクスッと笑う。

 

「はあ……それにしても、もしアーカディア王国なら美味しいパンを食べれると思ったのになぁ……」

 

「それは諦めた方が良さそうだな」

 

 食事を済まし、4人はエストポの案内でジョニー達の野営地の見える森に到着した。辺りはすっかり夜になり、暗闇の中で盗賊達の野営地の光が目立つように光る。

 

「あそこにフェルミスが?……」

 

 暗闇の森に潜み、遠くから双眼鏡でジョニー達の野営地を双眼鏡を覗いて監視するレイ達。野営地には焚き火を中心に酒を飲む者や、数人の盗賊達が作業をしている。野営地の中央には檻があり、その中には老若男女関係なく人が押し込まれていた。押し込まれていた人々は皆、顔を俯き、生気を感じない。

 

「拉致したのはフェルミスだけじゃないってことか……」

 

「これは酷い……彼らはこれから何処に連れていかれるのです?エストポ」

 

「す、すまねぇ。そこまではわからねぇ」

 

「ジョニーの護衛隊なのに何も知らないのね…こりゃ共和国に戻ったら待遇を変えなければいけないかもしれませんね」

 

「ちょっ……ちょっと待ってくれ! 道案内はしたろ?」

 

「危ない道だったけどね。本当にあの道だったかも怪しいわ」

 

 サヤカはムスッとした表情でエストポを見る。

 

「お、おい。俺を疑ってるのか?」

 

「2人とも静かに。動きがある」

 

 彼らは改造したモルガのコンテナに檻を乗せると、続々とゾイド達に乗り込み、どこかに出発しだした。

 

「よし、これから奴らを尾行しよう」

 

「!?……ちょっと待ってくれ! いま早くフェルミスを助けてくれるんじゃないのか!?」

 

「逸る気持ちは分かる。だがこのままフェルミスを助けたとしても、その先の足取りが分からなくなる。そうなれば第二のフェルミスが増えるだけだ。根幹をやっつける。それまで済まないが耐えてくれ」

 

「くっ……」

 

「それにあのゾイドを見てみろ」

 

「アイアンコング? レオマスターならイチコロだろ?」

 

「いや、背中には機動力を強化したスラスターに、大型長距離ミサイルを近・中距離用の多弾頭追尾ミサイルに改造されている。それはつまりガイロス技術がしっかりと入った代物だ」

 

「武装が違うだけだろ? レオマスターなら何とかなるんじゃないのか?」

 

「いや、そんなに甘くはないだろう。そんな改造アイアンコングを渡されるくらいだ。恐らくパイロットもある程度の実力者だと伺える。どの道油断は禁物だ」

 

「そんなゾイド乗りが何故盗賊にいるんだ? エストポはそのパイロットの事を知ってるのか?」

 

「共和国の兄ちゃんの言う通り、奴はただのゾイド乗りじゃねえ。ジョニー様も強いが、ありゃ別格だ。ガイロスのエースパイロットだって話だぜ」

 

「これでガイロスとの繋がりは確実ですね」

 

「ああ。見つからないように距離をおいて尾行するぞ」

 

「はい!」

 

 彼らは盗賊に見つからないよう、レーダーの探知から遠く離れた位置から慎重に尾行を開始する。

 

━━あの時と似ている……

 

 尾行の間レイは嫌な予感を感じていた。過去に起きた彼にとって忘れることの出来ない、あの出来事と似ている事を。

 

━━だとすれば、俺が……

 

 レイはぶつけようのない怒りで操縦桿をギリッと握りしめると、シールドがグルルルと喉を静かに鳴らし、目が赤く光る。その2人の静かな怒りが、暗い森をゆっくりと駆けてゆく。

 

〜続く〜




今回の話は移動やオリジナルの設定が多く、正直面白くなっているか不安です。
ですが、今後の話に重要な回だったので、どうしても簡略化する事が出来ませんでした。
さて次回の話ですが、徐々に明らかになっていく盗賊の背景と、過去と現在が交差する展開をお楽しみ下さい!
(より複雑になってきて話を作るのに時間がかかってます)
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