ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
今作は、本日から放送開始の、仮面ライダーゼッツが、ダンガンロンパの世界にて戦う物語となっています。
募集の方も行っていきますので、皆様の応募、お待ちしています。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=330923&uid=45956
「また、この感覚だ……」
僕、最原終一は目を閉じたまま震えていた。眠りについたはずなのに、なぜか意識だけが覚醒している。周りには何も見えない暗闇。
しかし、確かに感じる——誰かに見られている。
背筋が凍るような冷たい視線。それは前方だけでなく、後ろからも、右からも左からも感じられる。まるで周囲を取り囲むように無数の視線が突き刺さってくる。
「また来たのか……僕を責めるつもりなのか?」
震える声で呟くと、さらに視線が鋭くなるのを感じた。これは夢だと分かっているのに、その恐怖は現実よりも鮮明だった。
「お前のせいで……」
低い声が聞こえた。
「お前のせいで!俺の人生は台無しだ!」
それは聞き覚えのある声だった。かつて自分が解決した事件の犯人の眼が。
その視線に、僕はいつものように帽子を深く被り直そうとした。
だが帽子がない。それどころか、ここはどこだ?学校?自宅?いや、何もない暗闇の空間。
「見えるんだよ」
声が響く。
「お前に見られた俺の顔が。あの時の絶望が。全部、お前のせいなんだ」
突然、目の前に浮かび上がったのは巨大な一つの眼。人の頭ほどもある眼球が宙に浮かび、血走った血管が張り巡らされている。その眼は確かに僕を見ていた。
「やめてくれ……違うんだ……」
僕は何度も繰り返した言葉を呟いた。だが巨大な眼は答えない。ただ黙って僕を見つめている。その奥には底なしの憎悪があった。
「あの時、真実を明らかにしなければよかったのか?」
自問自答する声が虚しく響く。
僕があの事件を解決したことで、確かに平穏は訪れた。でも同時に、大切なものが失われたのだ。
真実は時に残酷だ。僕が暴いた真実が誰かの人生を変えてしまった。そして今、その視線が僕自身を追い詰めようとしている。
「見るな……僕を見るな!!」
叫びながら両手で耳を塞ぐが、視線は消えない。むしろ強くなった気がする。
巨大な眼がゆっくりと回転し始め、視界の隅々に映るようになった。右にいても左にいても、上を見ても下を見ても——必ずそこにある。
「僕は……探偵失格なのかな」
暗闇の中、巨大な眼からの憎悪に押しつぶされそうになったその時だった。
「君のおかげで助かった人もいる」
突然、静かな声が響いた。あの憎悪とは正反対の、優しい声音。
「え……?」
驚いて振り向こうとするが、体が動かない。巨大な眼の威圧感は変わらないが、どこからともなく聞こえる声は確かな温もりを持っていた。
「君が真実を明らかにしたことで、不幸な運命から救われた人たちがいることを忘れないで」
声の方角に首をひねると、遠くから何かが近づいてくるのがわかった。輪郭すらない影のような存在だが、確かに人の形をしている。歩み寄るその姿はぼんやりとしているのに、なぜか足音だけははっきりと聞こえてきた。
「あなたは……誰……?」
問いかけた瞬間、巨大な眼が激しく揺れ動いた。まるでその声の持ち主を警戒しているかのように。
影は答えず、ただゆっくりと近づいてくる。少しずつ距離が縮まっていくが、それでも姿をはっきり捉えることはできない。
「君はただの人助けをしていただけなんだ」
影の声が柔らかく響く。巨大な眼の憎悪が揺らめいた。
「でも……僕が真実を暴いたせいで……」
「犠牲者は確かにいたかもしれない」
影は一歩近づいた。
「でも忘れちゃいけない。君がいなければずっと苦しんでいた人たちのことも」
巨大な眼が激しく歪み、暗闇全体が振動し始めた。怒りの波動が押し寄せてくる。
そのときだった。
「俺はコード№7。無敵のエージェントで、仮面ライダーゼッツだ」
突然の宣言と共に、赤い閃光が走った。巨大な眼が悲鳴にも似た咆哮を上げる。
『インパクト!メツァメロ! メツァメロ!』
機械的な音声が暗闇に響く。朧げな影が急に光に包まれた。赤い粒子が渦巻き、形を成していく。
「変身!」
『グッドモーニング! ライダー!ゼ・ゼ・ゼッツ!インパクト!』
眩い光の中で、一人の戦士が誕生した。赤を基調としつつも、緑がメインのスーツ。胸部から腹部には腹筋の模様が刻まれている。プロレスのチャンピオンベルトのように左肩から斜めに掛けられたバックルが特徴的だった。
バッタを思わせる複眼がぎらりと輝く。
「悪夢は俺が打ち砕く!」
ゼッツは拳を握りしめた。
ゼッツ。
その名を告げると共に、先程まで最原を見ていた目玉は、怪人へと変貌した。
全身が眼球であり、無数の瞳孔がゼッツを見つめている。
「なるほど、ずっと見られる悪夢から生まれたか」
その呟きと共に怪人、ナイトメアがゼッツに襲い掛かる。
自分の身体から生み出した無数の目玉。
それらが、ゼッツを殺す為に飛来する。
飛来する目玉たち──一つ一つが人間の頭部ほどの大きさだ──が不規則な軌道を描きながら迫ってくる。
「悪いけど、こんな攻撃じゃ俺を止められないぜ」
それと共にゼッツは、地面を蹴った瞬間、爆発的な加速が発生した。
シュンッ!
目玉の隙間を縫うように、まるで空気抵抗など存在しないかのように滑るように移動する。右へ左へと身を翻すたびに残像が尾を引き、ナイトメアの無数の視線が追いかけるのも間に合わない。
「遅い!」
一気に距離を詰めたゼッツの拳がナイトメアの胴体──といっても全て眼球しかない存在だが──に叩き込まれる。
ズバンッ!!
鈍い衝撃音と共に、ナイトメアの巨体が大きく仰け反った。複数の眼球がひび割れて粉々に散る。
「な……何だこの動きは……!?」
最原が息を呑む声が聞こえる。彼にとっては夢の中の出来事とはいえ、目の前で繰り広げられる光景はあまりにも非現実的だった。
「言ったろ?俺は無敵のエージェントだってな」
ゼッツは得意げに言い放つ。
そう、ゼッツがその手に持ったのは、カプセル。
そのカプセルを、胸元にあるドライバーと入れ替えるように装填する。
『ベースボール!メツァメロ! メツァメロ!グッドモーニング! ライダー!ゼ・ゼ・ゼッツ!ベースボール!』
鳴り響いた音声と共に、ゼッツに僅かな変化が起きる。
その赤い手袋の形状はグローブのような形状へと。
「それは一体」
「悪夢に対抗するには、夢の力だろ?それこそ、絶望に立ち向かう為の夢の力でな」
ゼッツは、その一言と共にグローブを構えた。
「夢の力だと?何を言っているんだぁ!」
叫びと共に、周囲の目玉が真っ直ぐとゼッツへと飛来する。
最早全てが自分を狙っている。
死を齎す目玉。
それらを、ゼッツは見据え
「───まずはその口火だ」
小さく呟いたのを最期に。
───全ていとも容易く撃ち落とした。
シュッ───ズバンッ!
放物線を描いたのは拳ではなく。
素早く引いた手袋──グローブが目玉を『捕球』し。
そのままグローブはバットへと形状を変え。
風を切って振るわれた一撃が──目玉を打ち返していた。
キャチャーミットに収まるようなクリーンヒットではない。投げつけられた石礫の如く鋭利な弧を描いて跳ね返った目玉は壁に叩きつけられ粉微塵となり、その衝撃が周囲の同族をも巻き込んだ。
「うおっと危ねぇなぁ……次からはもっといい場所で打つぜ」
地面を抉る轟音が響く中、ゼッツは汗一つかかない笑顔のまま。
足元に散乱した欠片を爪先で軽く蹴り飛ばした。
「なるほど、これが『野球』か。なかなか悪くない夢だな」
そう言って再びグローブをバットへと変えた左手をくるりと回転させる仕草には余裕さえ窺える。
「まだ終わってないぞ!貴様一人で何ができると言うのだ!」
ナイトメアの怒号と共にもっとも巨大な眼球──おそらく本体だろうそれが膨れ上がり裂け目から無数の触手が伸びてきた。それはあたかも捕食器官のごとく蠢き迫る──が次の瞬間。
ガンッ!!!
鋭い金属音とともに触手が薙ぎ払われた。
バットと化した右手が文字通り一振りで数本まとめて切り裂いている。
断面から噴き出る血のような液体が床へ流れ落ちる。
「よし、これくらいならイケそうだ」
振り抜いた勢いのまま更にもう一回転加えて大きく跳躍すると空中で姿勢制御を行い三点着地。
ほぼノーバウンドで停止し反転しつつ再びスイング。
「ふんっ!!」
今度は横殴りの一閃。
唸りをあげる剛腕に導かれるようにバットが半円を描けばそれを受けた幾多の目玉と触手群が木端微塵になり霧散する。
「……すごい……あんな大きな攻撃を……」
呆然と呟く最原に対してニッと歯を見せて笑いかけてみせる。
「どうだ?少しは安心できたかい?」
再び構えを取る。しかしナイトメアもすぐに体勢を立て直した。
「こしゃくな……!」
さらに多くの眼球がゼッツを取り囲むように浮遊し始める。四方八方から狙いを定めている。
「面白い!真正面から受け止めてやるよ!」
ゼッツはニヤリと笑う。
迫り来る眼球を、その間にも新手の攻撃が始まったものの既に防御範囲内であることに気づいていない相手側の方が不利だったと言っていいだろう。
ゴォンッ!!ガシャーン!!!
立て続けに数発重々しい打撃音。
それぞれ違った方向から突進してきた目玉すべてに対して寸分狂わぬ角度で正面衝突させることにより相殺しつつ吹き飛ばしていく技術。
まさに精密機械のごとき動作精度だ。
しかしその表情には一切疲弊感など見えないどころか逆に楽しんでいるようにさえ見える。
最後の目玉を破壊した。
「うわぁあああ!」
ナイトメアの断末魔が夢空間に木霊する。体の大部分を失い、残された巨大な単眼が恐怖に見開かれていた。怯んでいる――完全に戦意喪失だ。
「これで終わりだ!」
ゼッツは先程、使用したカプセルを再度、装填する。
そのまま、のゼッツドライバーに左手を伸ばす。レバー部分を素早く三度押し込む。金属的な機構音が三連続で響く。
カシャッ!カシャッ!カシャッ!
次に右手で装填されている赤いカプセルをグイッと回転させる。内部で何かが高速回転するような駆動音が高まり、赤色に輝くエネルギーラインが全身を巡り始める。
『ゼ・ゼ・ゼッツ!インパクトフィニッシュ!』
システム音声が発動の合図を告げる。
「ハッ!」
短い呼気と共に跳躍。空中で体勢を整え、集約されたエネルギーが赤い光の弧を描く。まるで流星のように一直線にナイトメアへと突進する。
「喰らえぇええ!」
燃え上がるような赤いエネルギーを纏った右脚が、怯むナイトメアの残存部分――中心の単眼に炸裂する。
ゴガァアアン!!
凄まじい衝撃と共にナイトメアの存在が粉々に分解される。無数の小さな眼球の欠片が光の粒子となり四散していく。空間全体が揺れ動き、悪夢の象徴が完全に消滅した。
「……終わった」
着地したゼッツは静かに呟く。周囲の暗闇が徐々に薄れ、色彩が戻り始める。
最原は呆然と立ち尽くしていた。まだ夢の中にいるような表情だが、その瞳には明らかに生気が戻っている。
「君……一体誰なんですか?」
震える声で尋ねてくる。
それに対して。
「言っただろ、最強のエージェントだ」