ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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クラスメイト Part2

「……待て待て待て」

 

俺は思わず弁当箱をテーブルに置いた。蓋ががこんと鳴る。

 

「おい最原。お前いま何て言った?」

 

「え? 僕の夢に出てきた怪物のこと知ってるかって……」

 

「そこじゃない!」

 

俺は前のめりになる。

 

「夢のことを覚えてるのか? 昨晩の?」

 

最原はきょとんとした。

 

「当たり前だろ? 恐怖ってものは記憶に焼き付くものだよ」

 

「ちっ……」

 

舌打ちが出た。これは想定外の事態だ。ソムニウム世界での出来事は通常、目覚めると忘却される。あの超高校級の絶望ナイトメアでさえ夢の中限定の存在のはず。

 

「おかしい……」

 

俺は頭を抱える。最原終一が"例外"なのか? それとも――

 

「やっぱり君は何か知ってるんだね」

 

最原の声が低くなった。探偵の勘が働いたらしい。

 

「教えてくれないかな。僕は夢の中で赤い目の怪物と戦った。そして……」

 

彼は目を伏せた。

 

「君によく似た青年が助けてくれたんだ」

 

俺は凍りついた。

 

さすがは、超高校級の探偵と言うべきか。

 

けれど、ゼッツは基本的に極秘情報。

 

ましてや希望ヶ峰学園の教頭、霧切響子に任命されたという事実は明かせる物ではない。

 

その情報漏洩がどの程度危険なことかなど明白なのだから。

 

「万津くんって言ったよね。超高校級の幸運だって」

 

「幸運は表の顔だよ。正確には幸運を使い果たした不運だ」

 

俺は肩を竦めてみせた。

 

「まあそんなことはいいんだよ。なんで俺に夢の話を聞くんだ? 偶然だろ?」

 

「偶然じゃない」

 

最原が断言する。

 

「僕が夢で見た青年は君に瓜二つだった。服装も動き方も……まるで別人みたいだったけど」

 

最原の推理は冴えている。だが肝心な部分で穴がある。もし本当に瓜二つなら――

 

「他人の空似じゃないのか?」

 

「だったら君はどうして目を見張ったの?」

 

俺の反応を観察されていたらしい。この探偵、侮れない。

 

「単なる偶然……いや、俺が超高校級の不運だからな。不幸体質の顔っていう共通項はあるかもな」

 

苦し紛れの言い訳を並べる。

 

「確かに君の顔立ちは整ってる。美形と言っていい」

 

「何言ってるんだよ。急に褒めちぎるのはやめろ」

 

「でもそれは『顔がいいから不運』という因果関係にはならないよね?」

 

最原の問いかけが鋭利だった。

 

「それとも君自身が『美形ゆえに災難を引き寄せる』と信じてるのかな」

 

俺は黙ってしまった。

 

「沈黙は肯定だね」

 

最原が続けた。

 

「仮に君が超高校級の不運として有名なら、偶然夢に出てきた青年と一致する可能性は低い」

 

「偶然だって言ってんだろ」

 

それと共に、俺はそこで止める。

 

「いや、もう話は終わりにしようぜ」

 

万津が弁当を閉じようとしたとき――

 

「万津君」

 

最原の声が低く響く。

 

「僕が探してたのは……赤松さんの件なんだ」

 

「赤松さん?」

 

突然の名前に、万津の手が止まった。赤松楓。同じクラスのピアニスト。明るくて皆の人気者。

 

「彼女、昨日から登校してないだろ?」

 

「そう言えば……」

 

確かに姿を見ていない。体調不良だと聞かされていた。

 

「実は昨夜、赤松さんが映像で見てから、ずっと」

 

「・・・まさかここで」

 

既に絶望のビデオの言葉が出かけていた万津。けれど、それを遮ったのは最原だった。

 

「万津君。君は……」

 

その続きを促すように、最原の目は真剣だった。

 

「知ってるんだろ?赤松さんが映像を見てしまったことを」

 

「ッ」

 

やはり最原は鋭かった。まるで全てを把握しているかのような視線に、万津は言葉を飲み込む。

 

「昨夜の夢で僕が出会った赤い目の怪物。あれはナイトメアと呼ばれている存在なんだよね?」

 

「・・・なんでそれを」

 

思わず口にした疑問に、最原は。

 

「赤松さんを助けたいからっ」

 

そう強く言った。

 

「……」

 

最原の真摯な瞳が万津を見据えていた。

 

この探偵は全てを察している。赤松楓が絶望ビデオを見たこと。彼女が夢の中でナイトメアに取り憑かれていること。

 

そして、自分がソムニウム世界へ介入する力を持っていることも――

 

「わかった」

 

万津は俯いたまま静かに言った。弁当の蓋に指をかけたまま、それを開けようとする気力すら奪われていた。

 

「……」

 

最原が息を呑む音が聞こえた。

 

「だけどな最原。俺から秘密をバラすのはタブーなんだよ」

 

万津は自嘲気味に笑った。こんな状況で笑うこと自体が馬鹿げていたが、不思議と表情が緩んだ。

 

「・・・詳しい事はとりあえず、相談しなきゃな」

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