ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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電光 Part1

胸の奥で、まだ雷みたいなものが跳ねてる。体が軽いどころじゃない。自分じゃないみたいに動けそうで……正直、怖いくらいだ。

 

「万津くーん? ちょっとこれ、マジであんたなの? 数値バグってるんだけど」

 

 通信越しの日菜さんの声は、いつもの軽いノリのままだったが、裏に焦りが滲んでいた。

 

「えっと……俺です。たぶん。なんか、体の中でビリビリが暴れてる感じで」

 

「暴れてるって……はいはい、そんな適当な説明いらないの。データで見ると全部跳ね上がってんのよ。反応速度なんて今までの五倍超えてるし。普通にヤバい」

 

「俺もヤバいと思ってます。全然ついていけてないですし」

 

「そりゃそーでしょ。こっちだって“何これ?”って言いながら見てるんだから。暴走したらすぐ言いなよ? あたしでも止め方わかんないから」

 

 軽口なのに、本気で心配してるのが分かる声だった。

 

「大丈夫です。危なかったらすぐ言いますし……なんか、感覚も強化されてるみたいで。日菜さんの声が、いつもより近いんですよ」

 

「……ちょ、何その言い方。変にドキッとするっす」

 

 小さく息を呑む音がした。

 

「まあいいや。とにかく任務は続行ね。無茶しないでよ、万津くん」

 

「任せてください。日菜さんが見てくれてるなら、いけます」

 

「おだてても何も出ないけど? ……ほら、行きなって」

 

 雷が脈打つ。

 未知の力でも、日菜さんの声があれば――俺は前に進める

 

 身体が、考える前に答えを出していた。

 視界の端で、二つの殺意が同時に膨れ上がる。羽が裂け、闇が踏み込む――エンジェルナイトメアとノクスナイトが、同時に来た。

 

 次の瞬間、世界が沈んだ。

 

 音が引き伸ばされ、光が粘つく。風は止まり、破片は宙に固定された彫像みたいに固まる。

 ……速いとか、遅いとかじゃない。俺だけが、時間の外に出た。

 

 足裏に電流が走る。床を蹴った感触はあるのに、衝撃が追いついてこない。

 視界の中で、敵の動きが“意図”として見える。次に来る軌道、重心、間合い――全部、触れられる距離にある。

 

 身体が勝手に前へ出た。

 

 世界を横切る。影を置き去りにする。

 蹴り脚が振り抜かれる直前、エンジェルナイトメアの羽根の一枚が、ようやく揺れ始めた。

 

 ――ドン。

 

 雷鳴が落ちた“音”だけが、世界に戻る。

 時間が弾け、色が流れ、空気が爆ぜる。

 

 次の瞬間、エンジェルナイトメアは大きく吹き飛び、宙の建造物を砕きながら転がっていった。

 俺には、ただ一歩踏み込んで蹴っただけ。けど、他の誰かには――雷が鳴った一瞬の出来事にしか見えなかったはずだ。

 

 着地。

 遅れて、衝撃波。

 

 ……分かった。

 この力は、速さじゃない。“先に行く”力だ。

 遅れて、空気が震えた。

 

「……今、何が起きた?」

 

 ノクスナイトの声には、隠しきれない困惑が混じっていた。視線が泳ぎ、空間を見回すが、答えはどこにもない。攻撃は確かに放った。だが、当たった手応えも、避けられた感触も存在しなかった。

 

 一方、宙を転がったエンジェルナイトメアは、ようやく自分の異変に気づいたかのように呻く。

 

「……なぜだ……? いつ、触れられた……?」

 

 羽根の根元に走る衝撃。内部機構が悲鳴を上げ、遅れて痛みが追いつく。攻撃された“瞬間”が、どこにも見当たらない。

 

 二体の視線が、同時に俺へ向いた。

 

 そこに立つ存在は、さっきまでのゼッツとは違う。

 速さではない。力でもない。理解が追いつく前に終わる――その事実が、敵の胸に冷たい確信として落ちた。

 

「……厄介だな」

「……これは、脅威だ」

 

 世界が、再び軋み始めた。

 

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