ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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電光 Part2

 呼吸を整えようとした瞬間、膝がわずかに軋んだ。

 ……速すぎた。身体は動いたのに、内側が追いついていない。

 

「万津くん、ちょっと待って。数値が……え、これ本気?」

 

 日菜さんの声が、明らかに切り替わる。

 

「……日菜さん、正直に言います。今、かなり来てます。身体っていうより……頭が」

 

「やっぱり。予想通りっす」

 軽い口調なのに、指の走る音がやけに速い。

「肉体負荷は想定内。でも精神負荷が異常。今までのゼッツと比べても、桁が違うっす」

 

「精神……ですか?」

 

「はい。たぶん“速さ”を出してるんじゃない。

 思考そのものを、常に限界まで引き上げてる。判断、予測、感覚……全部フル回転」

 

 視界の端が、わずかに白く滲む。

 確かに、止まると一気に重さが来る。

 

「このまま続けたら……どうなります?」

 

 一瞬、通信が詰まった。

 

「最悪、意識が落ちるっす。

 でもね、万津くん……今の動き、敵は完全に追えてない。脅威としては、圧倒的」

 

「……時間は?」

 

「長くないっす。短期決戦。

 無理に連続使用しないで。“ここぞ”だけで切って」

 

 俺は小さく息を吐き、拳を握る。

 

「了解。……日菜さん、最後まで付き合ってください」

 

「当然っすよ。

 倒れるまで見てるんじゃなくて――“帰ってくる”まで支えるんで」

 

 その言葉に、胸の奥の震えが少しだけ収まった。

 よし。なら、使うのは――次の一瞬だけだ。

 胸の奥が重い。雷が引いた後に残る、鈍い疲労がはっきり分かる。

 それを――あいつらは見逃さなかった。

 

 ノクスナイトが一歩、距離を取った。

 さっきまでの苛立ちや嘲りは消えている。代わりにあるのは、冷静な観察の目だ。

 

「……気づいた、か」

 

 エンジェルナイトメアも、すぐには来ない。翼を広げ、高度を上げ、世界そのものを揺らし始める。

 攻めてこない。いや、攻め方を変えた。

 

 俺の呼吸の間。

 動かない一瞬。

 雷が鳴らない時間。

 

 それ全部を、あいつらは見ている。

 

(長引かせる気だ……)

 

 真正面から潰せないと悟った瞬間、敵は“勝ち筋”を切り替えた。

 速さを恐れ、同時にその終わりを待つ。

 削り、消耗させ、立っていられなくなるまで。

 

 膝に、わずかな震え。

 それを悟られないよう、俺は構えを崩さない。

 

「……日菜さん」

 

 通信を開きながら、視線は敵から外さない。

 

(分かってる。

 この力は、ずっとは使えない)

 

 でも――だからこそ。

 

 あいつらが“時間を稼ぐ”と決めたなら、

 俺は“その前に終わらせる”。

 

 雷は、溜めて使うものじゃない。

 一瞬で、決めるための力だ。

 

 俺は深く息を吸い、次の“一歩”に意識を集中させた。

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