ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
思考が雷のように跳ね上がる中で、浮かんだのは――苗木先生の姿だった。
学園長として穏やかに立っていた、あの背中。
でも、その奥にあるのは、俺が夢で見た“コロシアイ学園生活”の記憶だ。
(あの人は……逃げなかった)
閉じ込められ、疑い合い、仲間が次々と失われていく地獄の中で。
恐怖に震えながら、それでも苗木先生は止まらなかった。
答えが見えなくても、誰かが絶望に沈み切る前に――前へ出た。
(希望は、準備が整ってから出すものじゃない)
絶望は待ってくれない。
迷っている間に完成して、人の心を折ってしまう。
だから、苗木先生の希望はいつも早かった。
雷みたいに、落ちる前兆を待たず、世界を撃ち抜くように。
(……俺が今、こんなに疲れてる理由も、それだ)
この力は、楽をさせてくれない。
全力で考え、全力で選び、全力で走ることを強いる。
誰かの希望に“間に合わせる”ために、限界まで前へ出続ける力だ。
(苗木先生も……同じだったんだろ)
学級裁判のたびに、心を削りながら。
仲間を疑い、それでも信じることを選び続けて。
だから今も、あの人は“希望の象徴”でいられる。
視線の先で、二つの影が距離を取り、時間を稼ごうとしている。
俺の消耗を待つ――それが分かる。
でも、待たせない。
呼吸を一度、深く整える。
雷が、再び身体の奥で鳴った。
(絶望よりも早く。
誰かの希望のために走る)
それが、苗木先生から受け取った希望で。
それを選んだ、俺自身の答えだ。
次の瞬間、世界がまた置き去りになる。
音が沈み、光が引き延ばされる。
俺は、再び――踏み出した。
踏み出そうとした瞬間、右手が熱を帯びた。
いや、熱じゃない。雷そのものだ。
空間に散っていた稲妻が、意志を持ったみたいに引き寄せられてくる。指先から掌へ、掌から前腕へ。逃げ場を失った光が、俺の手の中で渦を巻いた。
「……来い」
小さく呟いただけなのに、雷は素直に従った。
バチバチと弾ける音が近づき、やがて一つの“重さ”になる。
形のないエネルギーが、骨格を得る感覚。
最初に現れたのは、鋭い輪郭だった。
稲妻の刃が重なり合い、湾曲したフレームを作る。
中心には、脈打つ光の核。心臓みたいに鼓動している。
雷は暴れない。
俺の意思に合わせて、武器の形を選んでいる。
最後に、握りが定まった。
掌にぴたりと収まる感触。軽いのに、確かな存在感。
――分かった。
これは、ただの力の塊じゃない。
引き金に指をかけると、内部で稲妻が一斉に走るのが分かる。
撃てば、迷いごと貫く。
溜めれば、次の一瞬を約束する。
俺はそれを構え、前を見据えた。
(絶望よりも早く、希望を撃ち抜くための形……か)
雷が、静かに鳴った。
まるで「任せろ」と言うみたいに。
――行くぞ。
手の中のイナズマブラスターが、応えるように光を強めた。