ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
俺と最原は急いで保健室へ向かった。
扉を開けると、ベッドに横たわる赤松の姿が見える。シーツに半分顔を埋めたまま、彼女は虚ろな目を天井に向けていた。
「赤松さん!」
最原が駆け寄る。俺も後を追った。
「……最原君?」
弱々しい声で赤松が応じる。彼女の目元には深い隈が刻まれていた。まるで何日も眠っていないような憔悴ぶりだ。
「君が学校を休むなんて珍しいね。一体何があったんだい?」
最原が慎重に問いかける。
「わからないの……」
赤松の指が震えていた。布団を握りしめる爪が白くなっている。
「夜になると……私の夢の中に……」
言葉が途切れる。彼女の目から一粒の涙がこぼれ落ちた。
「……怪物が現れるの」
その瞬間、俺の中で全ての糸が繋がった。
やはりナイトメアが彼女を狙っている。
「・・・これは確かにヤバイ事になった」
万津の呟きに赤松がびくっと反応した。
「どういうことですか?」
最原が鋭く問い詰める。
「とりあえずは移動するか。さすがにこの部屋で寝る訳にはいかないからな」
「寝るってどういうこと? えっ……」
赤松の声が奇妙に裏返る。最原がぎょっとした顔で振り返った。
(あっ……しまった)
万津は自分の言葉を反芻した。確かに今の状況で「寝る」という表現は誤解を招く。普通に考えれば休ませるという意味だが、ナイトメアとの接触を匂わせた直後なのだ。
「ちょ、ちょっと待って万津君! そういう意味じゃないから! 寝るってのは物理的に休ませるってことで! 安全な場所で!」
最原が両手を大きく振って割って入る。その焦り具合が逆に怪しさを増幅させている気がする。
「ふぇ? そそそそうだよね!??」
赤松の頬が明らかに紅潮していた。保健室の静寂が三人の間にどんよりとした気まずさを漂わせる。
「あー……つまり赤松さんを安全な場所に移動させたい。それでナイトメア対策を――」
言いかけた瞬間、万津のスマホが震えた。画面には【霧切教頭】の表示。
「……タイミング完璧ですね」
溜息混じりに通話ボタンを押す。
「霧切さん? 今ちょうど赤松さんのことで――」
『状況は把握してるわ。彼女には直接説明したほうが早いでしょう』
スピーカー越しの声が意外にも穏やかだった。それどころか教師らしい威厳すら感じる。
「赤松さん。ちょっと電話変わりますね」
「えっ? 教頭先生?」
困惑する赤松にスマホを渡す。
「・・・なんだか、別の意味で不運になりそうだったよ」
「僕も、またトラウマになりそうだったよ」
そう呟きながらも、先程までの赤松さんの様子を思い出す。
「・・・絶対に助けないと」