ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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暗黒 Part5

 路地を曲がった先で、気配が変わった。

 

 それまでこの街にいた“住人”たちは、背景に溶け込む影みたいな存在だった。視線を向ければ逸らし、近づけば距離を取る。ただ置かれているだけの人影。

 ――なのに。

 

「迷った?」

 

 声が、はっきりと届いた。

 

 思わず足を止める。

 レンガ壁にもたれるように立っていたのは、一人の女だった。くすんだ外套を羽織り、スラムの住人みたいな格好をしている。服の汚れ方も、立ち方も、この街に馴染みすぎている。

 

 けれど、違和感があった。

 

 この街の住人は、基本的に“関わらない”。

 話しかけてこないし、こちらを測るような視線もしない。

 

 彼女は、違った。

 

「ここ、初めてでしょ」

 

 距離を詰めてくる。

 一歩、また一歩。無遠慮でも敵意でもない、ただ――観察する距離感。

 

「……この街の人にしては、よく喋りますね」

 

 そう言うと、彼女は小さく笑った。

 

「そう見える?」

 

 声色は柔らかい。けれど、目が笑っていない。

 俺を見る視線が、まるで展示物でも眺めるみたいで、背中がむず痒くなった。

 

「珍しいから。ここを歩く人」

 

「歩いてるだけですよ」

 

「それが珍しいの」

 

 彼女は、俺の周囲を半円を描くように歩く。距離は近いのに、触れようとはしない。

 

「普通は、立ち止まるか、座り込むか、消えるか」

 

「……詳しいですね」

 

「長くいるから」

 

 その言葉に、胸の奥がひやりとした。

 この街に“長くいる”という意味を、俺はもう理解している。

 

「あなたは、違う」

 

 彼女は足を止め、真正面から俺を見る。

 

「怖がってるけど、目を逸らさない。重さを分かってるのに、進む」

 

 観察。

 評価。

 ――値踏み。

 

 そんな感覚が、はっきりとした。

 

「何者ですか」

 

 問いかけると、彼女は肩をすくめる。

 

「ただの、住人」

 

 嘘だ。

 この街の嘘は、もっと無機質なはずだ。

 

「……そうですか」

 

 深入りはしない。今は、それより優先すべきことがある。

 

 彼女は、その反応を見て、満足そうに微笑んだ。

 

「いいね。その距離感」

 

 まるで、期待通りだと言わんばかりに。

 

「もう少し、近くで見ていたかっただけ」

 

「……何を」

 

「あなたを」

 

 一瞬、空気が冷えた。

 彼女はそれ以上何も言わず、背を向ける。

 

「邪魔はしないよ。今日はね」

 

 その背中が、街の影に溶けていく。

 気配が消えた後も、胸のざわつきは残ったままだった。

 

(……今の、住人じゃない)

 

 それだけは、確信できる。

 これまでのソムニウム世界との違いで十分に理解出来る。だからこそ分からないのは、彼女の目的だ。

 

 「一体、何が目的なんだ、彼女は」

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