ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

115 / 250
罪夜 Part2

「変身!」『グッドモーニング! ライダー!ゼ・ゼ・ゼッツ!インパクト!』

 

 光が走り、身体が装甲の感触に包まれる。街の黒が、少しだけ遠のいた。

 同時に返信を完了すると共に、真っ直ぐと見つめる。

 

「……まだ、やるのか」

 

 星君の声が聞こえた。呆れでも怒りでもない。諦めに近い。

 

「やります。任務ですから」

 

 俺は即座に女の方へ走った。影が伸び、足首を掴もうとする。

 

「来るなって言っただろ」

 

「星君、今は……!」

 

 言い切る前に、黒い球が飛ぶ。俺は腕で弾き、火花のような衝撃を受けた。痛みはある。だが止まらない。

 

「……っ、立てますか」

 

 女は顔を上げ、薄く笑った。相変わらず、不気味なほど落ち着いている。

 

「優しいのですね」

 

「違います。巻き込まれた人は守ります」

 

「名前も知らないのに?」

 

「知りません。でも、だから見捨てる理由にはならない」

 

 俺は彼女を抱え上げた。軽い。なのに、妙に温度がある。生きている重さだ。

 

 その瞬間、街がさらに狂った。レンガの壁がせり上がり、住人の影が巨体のように合体して、俺たちを押し潰そうとする。まるで星君から俺を引き離し、同時にこの女も排除するみたいに。

 

「……ほらね。街は、あなたを嫌ってる」

 

 女が耳元で囁いた。

 

「嫌われても行きます」

 

「うん、それがいい」

 

 その声が、ぞわりと背骨を撫でた。助けているはずなのに、観察されている。

 

 俺は星君の方を見た。壁の向こう、影の奥。星君は動かない。自分で留まり、自分で沈んでいる。

 

「星君!」

 

 叫ぶと、星君の目がほんの僅かに揺れた。けれど口は冷たく言う。

 

「俺は……放っておけ」

 

「無理です」

 

「……俺を助けたら、お前も汚れる」

 

「もう汚れてます。生き残ってる時点で」

 

 言った瞬間、胸の奥が軋んだ。星君の罪と、自分の不運が、嫌な形で重なる。

 

 街がまた“語る”。声ではない圧だ。――救うな。――忘れるな。――終わらせるな。罪を保存しろ。闇を沈殿させろ。

 

 俺は歯を食いしばり、女を抱えたまま一歩踏み出した。

 

「星君、ここはあなたの罰の場所じゃない」

 

 返事はない。

 代わりに黒い球が、俺の頬を掠めて壁に突き刺さった。街が笑っている気がした。罪の形をした街が、救いを拒んでいる。

 

 それでも、俺は目を逸らさない。

 

「……行きます。星君が背負っている罪を!闇の中心へ」

 

 抱えた腕の中で、女が小さく笑った。

 その笑みが、助けられた人間のものではなく、何かが壊れる瞬間を楽しみにしているように見えたとしても――俺は今、確かめる術がなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。