ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
「変身!」『グッドモーニング! ライダー!ゼ・ゼ・ゼッツ!インパクト!』
光が走り、身体が装甲の感触に包まれる。街の黒が、少しだけ遠のいた。
同時に返信を完了すると共に、真っ直ぐと見つめる。
「……まだ、やるのか」
星君の声が聞こえた。呆れでも怒りでもない。諦めに近い。
「やります。任務ですから」
俺は即座に女の方へ走った。影が伸び、足首を掴もうとする。
「来るなって言っただろ」
「星君、今は……!」
言い切る前に、黒い球が飛ぶ。俺は腕で弾き、火花のような衝撃を受けた。痛みはある。だが止まらない。
「……っ、立てますか」
女は顔を上げ、薄く笑った。相変わらず、不気味なほど落ち着いている。
「優しいのですね」
「違います。巻き込まれた人は守ります」
「名前も知らないのに?」
「知りません。でも、だから見捨てる理由にはならない」
俺は彼女を抱え上げた。軽い。なのに、妙に温度がある。生きている重さだ。
その瞬間、街がさらに狂った。レンガの壁がせり上がり、住人の影が巨体のように合体して、俺たちを押し潰そうとする。まるで星君から俺を引き離し、同時にこの女も排除するみたいに。
「……ほらね。街は、あなたを嫌ってる」
女が耳元で囁いた。
「嫌われても行きます」
「うん、それがいい」
その声が、ぞわりと背骨を撫でた。助けているはずなのに、観察されている。
俺は星君の方を見た。壁の向こう、影の奥。星君は動かない。自分で留まり、自分で沈んでいる。
「星君!」
叫ぶと、星君の目がほんの僅かに揺れた。けれど口は冷たく言う。
「俺は……放っておけ」
「無理です」
「……俺を助けたら、お前も汚れる」
「もう汚れてます。生き残ってる時点で」
言った瞬間、胸の奥が軋んだ。星君の罪と、自分の不運が、嫌な形で重なる。
街がまた“語る”。声ではない圧だ。――救うな。――忘れるな。――終わらせるな。罪を保存しろ。闇を沈殿させろ。
俺は歯を食いしばり、女を抱えたまま一歩踏み出した。
「星君、ここはあなたの罰の場所じゃない」
返事はない。
代わりに黒い球が、俺の頬を掠めて壁に突き刺さった。街が笑っている気がした。罪の形をした街が、救いを拒んでいる。
それでも、俺は目を逸らさない。
「……行きます。星君が背負っている罪を!闇の中心へ」
抱えた腕の中で、女が小さく笑った。
その笑みが、助けられた人間のものではなく、何かが壊れる瞬間を楽しみにしているように見えたとしても――俺は今、確かめる術がなかった。