ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
街が、唸り声を上げた。
俺が一歩踏み出した瞬間、足元の舗道が波打つ。レンガが浮き、歪み、まるで生き物みたいに蠢いた。空気が重くなる。重力そのものが、こちらを押し返してくる。
「……邪魔、するな」
視線の先。
瓦礫と影の向こうに、星君の姿が見える。
動かない。逃げない。拒絶するように、ただそこに“留まっている”。
――近づく。
その意思だけを強く握り締めた瞬間、身体の奥が熱を持った。
フィジカムインパクト。
衝撃の夢を司る、この力は小細工を許さない。
速さも、技巧も、逃げもいらない。
正面から、殴り伏せる。
「来い……!」
俺が構えた瞬間、街が答えた。
レンガの壁が崩れ、黒い塊が押し出される。
球体、杭、拳。形を持たない“罪”が、殴るための形を取って襲いかかってくる。
最初の一撃が来る前に、俺は踏み込んだ。
拳を振るう。
装甲越しに伝わる衝撃が、腕の骨まで震わせる。
――ドンッ!!
空気が爆ぜた。
拳が黒い塊にめり込み、衝撃波が周囲のレンガを吹き飛ばす。
街灯が揺れ、影が千切れ、路地の奥まで衝撃が走った。
「……っ、効く」
フィジカムインパクトは、嘘をつかない。
敵が“概念”だろうと、“街”だろうと関係ない。
殴れるなら、壊せる。
だが、街も黙っていなかった。
足元が跳ね上がり、俺の身体を打ち上げる。
壁から突き出したレンガの拳が、腹部装甲を叩いた。
「ぐっ……!」
衝撃が、内臓に響く。
それでも、俺は空中で体勢を立て直し、地面に叩きつけられる前に着地した。
次の瞬間、四方八方から“攻撃”が来る。
黒い拳、瓦礫の槍、影の塊。
逃げ場はない。
「上等だ……!」
俺は真正面から迎え撃った。
右拳。
左拳。
肩。
肘。
衝突のたびに、爆音が鳴る。
殴るたびに、街が歪む。
フィジカムインパクトは、夢の力だ。
“衝撃”を信じる心が、そのまま力になる。
「邪魔するなら……全部、殴り倒す!」
瓦礫の拳を掴み、引き寄せ、そのまま頭突きを叩き込む。
衝撃波が炸裂し、周囲の建物がまとめて崩れ落ちた。
だが、崩れた先から、また街が再構築される。
罪は、簡単には壊れない。
「……星君は、ここだろ」
俺は前を見る。
衝撃の中、星君の姿は、まだそこにある。
近づこうとすると、街が必死に距離を引き延ばす。
一歩進めば、十歩分の瓦礫が生まれる。
「……どこまで、拒むんだ」
答えの代わりに、最大の攻撃が来た。
路地全体が、拳の形に変わる。
街そのものが、巨大な腕となって振り下ろされる。
避けない。
俺は腰を落とし、全身の力を拳に込めた。
拳を突き上げる。
――――ドォンッ!!!!!!
衝撃が、世界を割った。
拳と拳がぶつかり、衝撃波が放射状に広がる。
空が揺れ、地面が沈み、街が悲鳴を上げる。
巨大な腕が砕け散り、瓦礫が雨のように降り注いだ。
膝が震える。
腕が痺れる。
それでも、止まらない。
俺は瓦礫の中を突っ切り、前に進む。
「……星君!」
距離が、確実に縮まっている。
街はまだ攻撃を続けてくるが、その勢いは鈍っていた。
フィジカムインパクトは、正面突破の力だ。
罪を抱えた街だろうと、殴り続ければ、道は開く。
「放っておけ、なんて……」
息を吐き、拳を握り締める。
「そんなの、出来るわけないだろ」
俺は、再び踏み出した。
衝撃を纏いながら、星君の闇へと、真正面から突き進む。