ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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影夢 Part6

 影が、街を満たす。

 

 地面から、壁から、崩れた建物の隙間から、黒い刃のような影が次々と伸び上がり、仮面ライダーノクスへと殺到した。まるで、この世界そのものが彼を拒絶しているかのようだ。

 

 だが――ノクスは、動かない。

 

 攻撃が迫るその瞬間まで、微動だにしない。その姿に、俺は一瞬、息を詰めた。けれど次の瞬間、最原はほんのわずかに身体をずらし、影の刃を紙一重でやり過ごした。

 

「……なるほど」

 

 低く、落ち着いた声。

 

「影の出現位置が、毎回違う。街全体を使っているようで、実際には行き当たりばったりだ」

 

 次の攻撃。

 今度は天井から、巨大な影が落ちてくる。

 

 ノクスはそれを見上げながら、さらに続けた。

 

「つまり――君は、この街を完全には制御できていない」

 

 影が叩きつけられる。

 だが、その直前でノクスの足元から別の影が伸び、攻撃を弾く。

 

 俺は、はっきりと理解した。

 最原は、もう“戦いながら考えている”段階じゃない。

 

 考え終わった上で、検証している。

 

「影は、武器じゃない」

 

 ノクスの声が、街に静かに響く。

 

「痕跡だ。証拠だ。君がどこから力を引き出しているか、その全部が――影として残っている」

 

 次の瞬間、影が暴走した。

 

 ナイトメアは苛立ったように、影を無秩序に増殖させる。街が悲鳴を上げ、視界が黒に染まる。だが、それこそが最原の狙いだった。

 

「……やっぱり、そうだ」

 

 ノクスの足元で、影が円を描く。

 

 それはナイトメアの影と、完全に同質の色。

 次の瞬間、その影が反転した。

 

 地面に落ちていた影が、一斉に立ち上がる。鎖となり、杭となり、刃となって、ナイトメア自身を絡め取っていく。

 

「自分の影に、縛られる気分はどうだい?」

 

 初めて、最原の声にわずかな感情が乗った。

 

 ナイトメアがもがくたび、影がさらに深く食い込む。逃げようとすればするほど、自分の存在を否定する力に締め上げられていく。

 

 ノクスの手に、武器が現れた。

 

 ――ブレイカムゼッツァー。

 

 その姿を見た瞬間、俺は思わず声を上げそうになった。

 

「……あれは……!」

 

 ゼッツが使ってきた武器と、同じシルエット。

 だが、放たれる気配はまったく違う。希望でも、衝撃でもない。冷えた決断の刃だ。

 

 ノクスは剣を見下ろし、短く言った。

 

「同じ道具でも、使い方は違う」

 

 ブレイカムゼッツァーに、シャドウカプセムが装填される。

 

『ブレイカムスラッシュ』

 

 音声と同時に、拘束していた影がすべて剣へと集束する。刃が膨れ上がり、巨大な影の刃となって形を成した。

 

 ノクスは、一歩前に出る。

 

 星を盾にし、選択を奪い、罪を檻に変えた存在へ――

 まっすぐに刃を向ける。

 

「君は、間違っている」

 

 静かに、だがはっきりと。

 

「罪を忘れないことと、選択を奪うことは、同じじゃない」

 

 そして、剣を振り上げた。

 

「――これが、僕の答えだ!」

 

 一閃。

 

 巨大な影の刃が走り、ナイトメアを切り裂く。

 切断されたのは肉体ではない。構造だ。存在理由そのものだ。

 

 影が崩れ、街が静止し、世界が音もなくほどけていく。

 

 ノクスは剣を下ろしたまま、しばらく動かなかった。

 

 その背中を見ながら、俺は確信していた。

 

 最原は、ゼッツとは違う。

 だが――

 

 同じ問いに、別の答えを出したライダーだ。

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