ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
「音の牢獄ってわけか……」
サウンド・ナイトメアの長く伸びた弦が空中で弧を描く。次の瞬間――
ザン!
床板に触れた弦が炸裂した。破片が飛散し、俺のヘルメットを掠める。
「おいおい! 食らってくれよぉ!」
次々と振り下ろされる弦が舞台全体を火薬庫へ変えていく。
俺は足首に力を込め跳躍。ステージ上の椅子を蹴り上がり跳躍。
「くっそぉぉ!!」
爆炎が俺の背中を灼く。熱風がスーツの装甲を叩くが傷一つつかない。これがインパクトカプセムの防御力だ。
「逃げても無駄だ! 全ての物体は音を伝える媒体なんだからなぁ!」
ナイトメアの声と共に、宙に浮いたゴミ屑まで次々と起爆していく。
「なら……!」
俺は舞台上の鉄パイプを掴んだ。
ガキン!
曲げたパイプを槍代わりに突き刺す。しかし触れる寸前で爆発した。
「物理法則を無視しやがって!」
「ハッ! 原理なんて関係ない! 夢だからなァ!」
サウンド・ナイトメアの胴体に取り付けられたドラムスティックが唸りを上げる。叩かれた壁から波紋状の衝撃波が放射された。
ドォォォン!
波紋が俺の胸部に命中し、肺から空気が押し出される。
「ゲホッ!」
吹き飛ばされた身体が壁に激突。コンクリートが粉々に砕け散る。
「弱点を見つけたぜ……」
俺は瓦礫の中から立ち上がる。衝撃波の速度は音速以下。要するに……
「反射神経で避けりゃいいんだよ!」
地面を強く踏み込み加速する。筋肉が千切れそうな痛みが全身を貫くが構わない。インパクトフィジカムのパワーで床材が砕け散る。
「なっ……!?」
サウンド・ナイトメアの表情が初めて歪んだ。迫る俺に対し必死に弦を振り回す。
バリィン!
頭上から落ちてきたシャンデリアが爆発。しかし俺は既に横に跳んでいた。
「捉えたぜ……!」
俺の拳がナイトメアの胴体を直撃する。鈍い音と共に衝撃波が周囲を揺らす。
「ガッ……!」
ナイトメアが後退する。その隙に俺はステージ中央へ飛び出した。
「この程度か……?」
サウンド・ナイトメアが口笛を吹く。その音がトリガーとなりステージ全体が震え始める。
ゴゴゴゴ……
天井のライトが落下し爆発。床下から這い出すように無数の音符型の刃が襲いかかる。
「芸が細かいねぇ!」
俺は両腕をクロスさせて防御姿勢。刃が刺さるたび火花が散る。スーツの装甲が限界を迎え始めた。
「諦めろぉ!」
ナイトメアの咆哮と共に巨大なシンバルが降下してきた。挟み潰されればひとたまりもない。
「諦めるかよ!」
俺は最後の力を振り絞ってジャンプした。
バヂン!
シンバルが轟音と共に地面に激突。その反動を利用し宙返りして脱出する。
「残念だったな!」
着地と同時に足元のタイルが爆発。空中へ投げ出される身体。
「まだまだ終わらないぞ!」
ナイトメアの笑みが広がる。しかし俺の瞳は既に次の一手を見据えていた。
サウンド・ナイトメアの本体に近づけば近づくほど、爆発の規模は大きくなる。だけど逆に考えれば……
「お前自身には音はない」
俺は両手を合わせ祈るように目を閉じた。すると全身のエネルギーが一点に集中していく。
「なんだ!?」
サウンド・ナイトメアが慌てる声がする。閉じた瞼越しに強い光を感じる。これがインパクトフィジカムの最大出力か。
「受けてみろ……」
拳を開いた瞬間――
ドカン!!
凄まじい閃光が閃き視界が真っ白になる。
「ぐわあああ!」
ナイトメアの悲鳴。成功だ! 目の前で眩んだ敵がバランスを崩している。
俺は駆け寄り腰を落とす。
「これでチェックメイトだ!」
渾身の一撃。しかしナイトメアは紙一重で回避した。
「甘いな! 君の攻撃パターンは単純すぎる!」
冷笑と共にサウンド・ナイトメアが回転。その遠心力で周囲の物体が全て弾け飛ぶ。
だが。
《インパクト!バニッシュ!》
「なっ」
「悪いな、夢の中では俺は無敵だからな」
蹴り上げた右足が空を裂く。音のない真空の蹴撃がサウンド・ナイトメアの胴体を穿ち抜く。
バキュゥン!
爆音すら置き去りにする一撃。
しかし俺は驚愕した。
「っ」
「無駄な事を、この絶望の夢の中で私は不死身だからな」
そこには、倒したはずのサウンド・ナイトメアが立っていた。