ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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背中合わせ Part6

 管理室の扉が閉じた瞬間、空気の質が変わった。

 音が吸われる。反響しない。まるでこの部屋だけが、学園から切り離された“別の層”にあるみたいだった。

 

「……ここが、希望ヶ峰学園の中心管理室」

 

 自分の声が、少しだけ遠く聞こえる。

 正面には巨大な円形端末。壁一面に走る光のラインは、脈打つように明滅していて、機械というより生き物に近い。

 

「万津君、ここがアルターエゴの管理領域っす。

 でも……ちょっと待って」

 

 日菜さんの声が、いつもより低い。

 通信越しでも分かる、その“引っかかり”。

 

「ログが……変。

 この部屋、さっきまで誰かが使ってた形跡があるっす」

 

 胸の奥が、ひやりと冷えた。

 

「誰か……って、俺たち以外に?」

 

「可能性は高いっす。

 ケーブルの抜き差し、端末のアクセス履歴……消そうとして、消しきれてない」

 

 円形端末に近づく。

 確かに、表面のガラスに薄く残った指の跡。

 それは俺のものでも、日菜さんのものでもない。

 

「……千尋が、俺を呼んだんじゃなかったのか」

 

 そう呟いた瞬間、端末が自動的に起動した。

 柔らかい光と共に、あの声が流れる。

 

「万津君。来てくれてありがとう」

 

 不二咲千尋の声。

 優しくて、落ち着いていて――それが逆に、不安を煽る。

 

「さっきまで……誰か、ここにいたのか?」

 

 一瞬、沈黙。

 それから、ほんのわずかなノイズを挟んで、アルターエゴは答えた。

 

「……正確には“干渉がありました”。

 私の管理外からのアクセスです。意図は解析できていません」

 

 管理外。

 その言葉が、やけに重い。

 

「万津君。

 このままでは、希望ヶ峰学園の意識領域が不安定化します。

 そこでお願いがあります」

 

 端末の中央に、新しい装置の映像が映し出される。

 見覚えのある構造――希望更生プログラム。

 

「この装置を使用して、意識領域へ来てください。

 あなたの同調値が、現在もっとも安全です」

 

 安全、という言葉を、素直に信じられない自分がいる。

 だが、ここで引き返す理由もなかった。

 

「……罠の可能性は?」

 

 俺の問いに、日菜さんが即座に応じる。

 

「否定できないっす。

 でも、放置したら星のソムニウム世界、もっと歪む。

 それに……この干渉、教団側の匂いがする」

 

 胸の奥で、嫌な予感が確信に変わる。

 

 誰かが、俺たちより先に、

 この“中心”に手を伸ばしている。

 

「……行くしかない、か」

 

 希望更生プログラムの装置に近づくと、床のラインが淡く光り、俺の足元へと収束していく。

 

「万津君。

 私は、ここからナビゲートを続けます」

 

 千尋の声は、どこまでも優しい。

 だからこそ、その裏に潜む“何か”が、余計に見えなくなる。

 

「日菜さん、頼む」

 

「了解っす。

 ――戻ってきてくださいよ、絶対」

 

 装置が起動する。

 光が視界を覆い、世界の輪郭が溶け始める。

 

 最後に見えたのは、

 端末の奥、ログの隙間に残った“誰か”のアクセス痕。

 

 それが誰なのか。

 何を求めているのか。

 

 答えはまだ、意識の向こう側だ。

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