ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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クラスメイト Part6

俺の額には冷たい汗が浮かんでいた。赤松さんはベッドに腰かけたまま、怯えた子羊のような瞳で虚空を見つめている。

 

「万津くん……ナイトメアが……消えたの?」

 

「倒したはず、だけど、なぜ」

 

短く答えながらも、俺の思考は混沌としていた。なぜサウンドナイトメアは完全に消滅しなかったのか。必殺技は間違いなく核心を捉えた。なのに……。

 

「おかしいだろ……?」

 

俺は拳を握りしめた。

 

「確実にヤツを倒した。なのに再生しやがった」

 

赤松さんが微かに震える。

 

「まだ、夢であの音……すごく怖かった。だけど、前以上に少しはマシになったような」

 

「ひょっとして」

 

最原が親指と人差し指をこめかみに当てる。

 

「ナイトメアは赤松さんの深層心理に深くまで入ったんじゃないのかな?」

 

「どういう事なんだ?」

 

「いいかい?」

 

最原が身を乗り出し、冷静に分析し始めた。

 

「霧切先生から聞いたんだけど……」

 

彼の指が宙に複雑な円を描く。

 

「絶望ビデオは最初、ナイトメアの卵みたいなものなんだ。感染初期は宿主とのリンクも浅く、夢の中だけなら排除できる。だけど……」

 

「侵食が進めば宿主の心そのものと融合するってワケか」

 

俺は眉をひそめた。

 

「だったらヤツが再生できたのは?」

 

最原が赤松さんを一瞥し、声を潜めた。

 

「赤松さんが絶望ビデオを見てからかなり経ってる。君が僕の夢で出会ったナイトメアとは条件が違うんだ」

 

「つまりナイトメアには成長段階がある」

 

俺は掌を組んだ。霧切さんが前に言っていた台詞が脳裏をよぎる。

 

『完全侵食された人間は超高校級の絶望になる』

 

「じゃあ赤松さんの夢にいるアイツはもう……」

 

最原が悲痛な面持ちで頷く。

 

「完全侵食間近。しかも彼女のトラウマと深く結びついている以上……」

 

「ただ倒すだけじゃどうにもならないって事か」

 

沈黙が落ちた。赤松さんは青ざめた顔で布団を握り締めている。俺は歯噛みした。

 

「畜生……」

 

俺たち三人を取り囲む空気が澱んでいる。最原がふと気づいたように声を上げた。

 

「待ってくれ」

 

眼鏡のフレームを押し上げながら。

 

「侵食が進めば確かに強固になる。でも逆に言えば……」

 

「宿主の心が完全に切り離されれば崩壊する?」

 

最原の瞳が光った。

 

「霧切先生が言ってたじゃないか。『夢は自我と他者の境界が曖昧になる』って」

 

俺は息を飲んだ。

 

「つまりナイトメアを倒すには赤松さんのトラウマそのものを……」

 

最原が静かに続ける。

 

「心の中で決着させる必要があるって事だ」

 

俺と最原は顔を見合わせた。赤松さんの嗚咽が保健室に小さく響く。

 

「そういう事かよ……」

 

俺は立ち上がった。霧切さんに報告しなきゃならない。この理論が正しいなら……

 

「新しいアプローチを考えなきゃな」

 

最原も頷きながら立ち上がる。

 

「万津君。次の作戦は君に任せるよ」

 

窓から差し込む夕日が二人の影を長く伸ばしていた。

 

絶望ビデオの影響がここまで深刻なものだったとは思いもしなかった。

 

「最原さん」

 

俺はそう言う。

 

「この仮説は間違っていないと思う。俺自身、一度ソムニウム世界で戦ってみてわかったよ。ナイトメアが完全に赤松さんのトラウマと一体化している以上、力ずくではどうにもならない」

 

「ええ……」

 

最原が腕を組んで考える。

 

「絶望ビデオは見る時間が長ければ長いほど侵食が進む。万津くんが最初に戦ったナイトメアは、まだ宿主との結びつきが浅かったからこそ倒せた。でも今回は……」

 

「完全に赤松さんの心と同化してる」

 

俺は拳を握りしめた。

 

「だったら俺たちはどうすればいい? もう一度ソムニウム世界に行って戦う? それとも現実世界で何か出来ることがあるのか?」

 

「ならば、元々のソムニウム世界の攻略をするっすよ」

 

「えっ」

 

それと共に、月夜野さんが話しかけた。

 

「えっ」

 

「ソムニウム世界の攻略?」

 

「えぇ、対象者のメンタルロックを解除していくっす」

 

「メンタルロック?」

 

その言葉に、俺達は思わず聞いてしまう。

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