ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
錆びた鉄の匂いが、肺の奥まで染み込んでくる。
ロードファイブが一歩踏み出すたび、地面が“壊れる”音を立てた。ただ崩れるんじゃない。砕けて、歪んで、二度と元に戻らない形に変質する。中核層そのものが、悲鳴を上げながら削られていく。
「……っ!」
ショベルアームが振り下ろされる。
反射的にブレイカムゼッツァーで受けた瞬間、衝撃が腕を突き抜けた。装甲越しでも分かる。これは“斬撃”じゃない。“破壊”そのものだ。
刃が触れた部分から、ゼッツァーの表面が黒ずみ、軋む。使えなくなる一歩手前。あの時のジャンクナイトメアとは、比べものにならない出力。
「……くそ……!」
跳び退いた先で、足元が崩れた。キャタピラ装甲が削った地面は、もう“踏める場所”じゃない。着地と同時に、装甲の一部が悲鳴を上げる。
『……万津君! 装甲損傷率、上昇! このままだと――』
日菜の声が、途中で途切れた。
背中に、鈍い衝撃。
クレーンのワイヤーが掠っただけなのに、背部装甲が裂け、熱が走る。痛みが遅れて押し寄せ、息が詰まった。
傷が、増えている。
今までは耐えていたはずの衝撃が、確実に、身体を削っている。フィジカムインパクトの“強さ”が、純粋な破壊に追いつかない。
「……まだ……!」
前に出る。出なきゃ、終わる。
でも、ロードファイブは焦らない。几帳面に、正確に、俺の逃げ道を潰す。ショベル、キャタピラ、クレーン。建機の残骸が、鎧として、武器として、完璧に噛み合っている。
「……無駄だ」
低い声。
「壊れるまで……続けるだけだ」
次の一撃。
振り下ろされたショベルアームを、今度は受けきれなかった。刃が弾かれ、衝撃が胸部装甲に直撃する。
――視界が白く弾けた。
吹き飛ばされ、転がり、背中から地面に叩きつけられる。呼吸が、うまくできない。装甲の内側で、身体が悲鳴を上げているのが分かる。
立ち上がろうとして、膝が笑った。
限界だ。
ロードファイブが、ゆっくりと近づいてくる。キャタピラが地面を削り、無数のジャンクの欠片が宙に舞う。
「……終わりだ」
その言葉と同時に、無数の鉄の破片が俺に向かって放たれた。
避けられない。
防げない。
――ここまでか。
そう思った、その瞬間。
闇が、割り込んだ。
影。
鋭く伸びた影が、俺の正面を横切ったかと思うと、迫っていたジャンクの欠片が、一斉に叩き砕かれた。破壊の粒子が、空中で霧散する。
「……なっ……?」
ロードファイブが、初めて動きを止めた。
俺の視界の先、崩れた地面の縁に、もう一つのライダーが立っている。
黒と青の装甲。
身体の周囲に、静かに揺れる影。
そして、手に握られた――ブレイカムゼッツァー。
「……遅くなって、ごめん」
聞き慣れた声。
でも、今までとは違う、覚悟の重さを帯びた声。
「ここからは――僕も一緒に戦うよ」