ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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衝撃 PART7

 雷光を帯びた刃が、俺の両手の中で唸った。

 

 イナズマブラスターを近接モードで構え直す。弓の輪郭が折り畳まれ、刃のラインが露出する。電撃が縁をなぞり、空気が細かく裂け続ける。

 

「行く!」

 

 踏み込む。

 地面に残った回路模様が焼け、足跡が光の傷になる。距離はもう意味を持たない。ロードファイブの目前まで、一息で滑り込んだ。

 

 振り上げ、斬る。

 

 雷をまとった斬撃が、ジャンク装甲の肩口を横薙ぎに走った。金属が裂ける音ではなく、“役割を失う音”が鳴る。装甲表面が黒ずみ、層が一枚、死ぬ。

 

 だが、深くは入らない。

 

「……浅い」

 

 ロードファイブの声は冷静だった。

 

 次の瞬間、ショベルアームが至近距離で振り抜かれる。

 受ける。

 

 イナズマブラスターの刃と重機アームが激突し、雷と錆が弾けた。衝撃が腕を通って背骨まで突き抜ける。押し切られる前に、体を捻って力線を逃がす。

 

 そこへ――銃声。

 

 乾いた連射音が、空間を貫いた。

 

 最原だ。

 

 ノクスはブレイカムゼッツァーを銃モードで両手に構え、二丁拳銃の形で撃ち続けている。左右の射線がわずかにずれ、互いの死角を埋める配置。探偵の射撃は、感覚じゃない。配置だ。

 

「右関節、負荷集中点!」

 

 光弾が、ロードファイブの膝部装甲に連続着弾する。同じ場所に、誤差なく。ジャンク装甲の一部が剥がれ、内部フレームが露出した。

 

 ロードファイブが即座に反応する。足元の瓦礫が浮き上がり、盾のように展開された。

 

 だが、そこで止まらない。

 

 浮いた瓦礫が、そのまま弾丸に再利用される。大小の破片が全方位へ射出された。軌道が読めない乱反射攻撃。

 

「散るぞ!」

 

 俺は低く跳び、横へ抜ける。

 最原の影が地面からせり上がり、壁のように展開して数発を受け止めた。影に触れた瓦礫が拘束され、その場で圧壊する。

 

 俺はその壁を蹴り、再加速。

 

 接近戦に戻す。

 

 雷刃を逆手に持ち替え、装甲の継ぎ目だけを狙って斬撃を刻む。肩、脇腹、腰部。深さよりも、“機能を削る”角度で。

 

 ロードファイブは後退しない。

 代わりに、周囲を壊す。

 

 地面が崩れ、建物の骨組みが引き剥がされ、空中で再構成される。重機の残骸が再装着され、装甲が増殖する。

 

「環境を鎧にしてる……!」

 

『そうっす! あれ、破壊と同時に再武装してる!』

 

 日菜の解析が飛ぶ。

 

 なら、削り続けるしかない。

 

 最原の二丁射撃が止まらない。

 弾道が、俺の斬撃と噛み合う位置に置かれている。俺が切った装甲の“奥”へ、必ず光弾が入る。

 

「万津、三秒後、上!」

 

「了解!」

 

 カウントを信じる。

 

 三。

 二。

 一。

 

 俺は跳んだ。

 

 同時に、下から影が伸びてロードファイブの足を縫い止める。動きが、ほんの一拍止まる。

 

 そこへ、落下斬。

 

 雷光を引きずる縦一閃が、胸部装甲を叩き割った。深部まで届かない。だが、確実に削れている。

 

 ロードファイブが初めて大きく体勢を崩した。

 

 それでも倒れない。

 むしろ――エネルギー反応が上がる。

 

 胸元のロードインヴォーカーが、不穏な回転を始めた。

 

『……出力、段階上昇! 次、デカいの来るっす!』

 

 俺と最原は、同時に距離を取った。

 

 互いに息が荒い。

 装甲のあちこちが焦げ、裂け、光が漏れている。

 

 だが、目は死んでいない。

 

「……削れてる」

 

 俺が言う。

 

「うん。装甲値、確実に落ちてる」

 

 最原が答える。

 

「なら――」

 

 言葉は途中で止める。

 まだ早い。だが、同じ考えが共有されているのが分かる。

 

 

 ロードファイブの装甲が軋みながら再構築を始める。ジャンクの残骸が磁石のように引き寄せられ、欠けた部位を埋めていく。時間を与えれば、また硬くなる。

 

「――今だ」

 

 最原の声が低く響いた。

 

 俺も同時に理解する。

 削り切った。次は、貫く番だ。

 

 ノクスドライバーに手が伸びる。

 影が足元で濃度を増し、地面一帯を黒く染めた。

 

『シャドウ!リデンプション!』

 

 音声が鳴ると同時に、ドライバーが再回転する。影が一気に広がり、ロードファイブの足元を完全に覆った。

 

 影が“面”ではなく、“手”になる。

 

 何本もの影の腕が地面から伸び、ジャンク装甲の脚部へ絡みつく。拘束というより、固定。重機のような重量を、地面そのものに縫い止める。

 

「動きは、ここで止める!」

 

 最原が跳ぶ。

 

 影が収束し、彼の脚部へ集中する。装甲の縁取りが黒く発光し、蹴りの軌道がはっきりと見えるほどエネルギーが凝縮される。

 

 その瞬間――俺も動いた。

 

 イナズマブラスターを引き、全力で跳躍する。

 空気を裂き、さらに上へ。

 

 世界が一瞬、止まったように見えた。

 

 未来の軌跡が、視界に閃く。

 落下点。角度。貫通ライン。結果。

 

『プラズマ!バニッシュ!ゼ・ゼ・ゼッツ!』

 

 音声が空を震わせる。

 

 雷光が脚部に集束し、蹴りの形へと固まる。落下はもはや重力じゃない。雷撃だ。

 

 上下から、同時。

 

 最原の影のライダーキックが、横から心臓部を狙い、

 俺の雷のライダーキックが、上空から中核を撃ち抜く。

 

 衝突。

 

 音が、消えた。

 

 次の瞬間、爆ぜる。

 

 光と影が交差し、ジャンク装甲が内側から砕け散った。重機の残骸が粉末化し、粒子となって吹き飛ぶ。

 

 胸元のロードインヴォーカーが露出する。

 

 そこに、二撃目の余波が叩き込まれた。

 

 ――亀裂。

 

 ジャンクカプセムが、中心から割れる。

 

 光が漏れ、ノイズが走り、形が崩壊する。

 

「……ばかな……」

 

 丑寅の声が、初めて乱れた。

 

 ロードファイブの輪郭が揺らぐ。

 装甲が透過し、影の残像だけが残る。

 

 まるで映像が巻き戻されるみたいに、存在が薄れていく。

 

「……計算外、か」

 

 最後にそう呟き――

 

 ロードファイブは、幻のように消えた。

 

 静寂が落ちる。

 

 瓦礫の動きも止まり、空気の腐食臭も消えていく。中核層の回路光が、ゆっくりと安定色へ戻った。

 

 俺は着地し、よろけながらも踏みとどまる。

 

 最原も数メートル先に降り立ち、肩で息をしている。

 

 しばらく無言。

 

 それから、同時に顔を上げた。

 

「……終わった、な」

 

「うん。今回は」

 

 俺たちは歩み寄り――

 

 パチン、と音を立ててハイタッチした。

 

 雷の焦げ跡と、影の残滓が、その間で静かに揺れた。

 

 勝利は、確定した。

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