ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
「メンタルロックっというのは」
月夜野は人差し指を立ててくるくる回しながら説明を始める。
「夢ん中で対象者の心にアクセスするための鍵みたいなもんや」
「鍵……?」
「そや。例えば赤松さんみたいな場合は『音楽』や『過去の失敗』なんかが該当する」
最原が眉を寄せた。
「つまりトラウマの核に至るための障壁ってことか」
「その通りや」
月夜野がニヤリと笑う。
「メンタルロックは複数存在してな。一つずつ解除していけば最終的に『心の真相』に辿り着けるっちゅうわけや」
赤松さんの手が微かに震えている。彼女自身がその鍵の存在を無意識に感じているのだろう。
「具体的にどうやって解除するんだ?」
月夜野は肩をすくめた。
「それはそれぞれのケースによるんや。赤松さんの場合は……」
彼女は保健室のピアノに目をやる。
「おそらく『コンクールの敗北』と『聴衆の失望』あたりが有力やね」
「なるほど……」
俺は納得した。赤松さんが最も傷ついた記憶こそがメンタルロックの本質だ。
「そしてな」
月夜野の声が一段低くなる。
「すべてのメンタルロックを解放したら……」
最原が息を飲んだ。
「対象者のトラウマそのものを可視化できるってわけやな」
赤松さんが唇を噛む。彼女の瞳には恐怖と希望が交錯していた。
「そ、それで……?」
かすれた声で尋ねる。
「トラウマがわかればどうなるんですか……?」
月夜野が指を一本立てる。
「そこで重要になってくるのが、そのトラウマの克服かな」
「トラウマの克服って」
「本来ならば、心の傷はかなりデリケートで扱い方が難しい。だけど」
月夜野さんがさらに続ける。
「万津君が戦っていった事で少しずつ彼女の心が改善されてる。もし全てのメンタルロックを解除できれば、対象者が完全に絶望してしまう前にトラウマを克服するチャンスがあるんだ」
「チャンス」
「まぁ、自分はナビゲートしか出来ないですけどね。何よりも、この1件で最も力になるのは、最原君だと思うっす」
月夜野の言葉に、俺と最原は思わず顔を見合わせた。
「最原君が……鍵?」
「そう」
月夜野は人差し指をくるくる回しながら続ける。
「赤松さんの心のトラウマを解錠するための最重要人物。だって考えてみてよ――」
月夜野はにっこり微笑んだ。
「彼女が絶望ビデオを見た後、最初に助けを求めたのが誰か?」
その言葉を聞いて、最原は。
「・・・僕が力になれるのかな」
「・・・まだ、私自身も分からない。けれど、もしも最原君が見守ってくれるなら」
赤松さんは、そうして最原を見つめる。
「お願い出来るかな」
その言葉を聞いた最原は少し迷った様子を見せる。
けれど。
「分かった、僕なんかで役に立てれるなら」
「最原君だからこそだよ」
そう呟いた赤松さんの表情を見て、俺も月夜野さんも察する事は簡単だった。
「それじゃ、今度がラストチャンスっすね」