ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
その感触は、まるで空気そのものが抵抗してくるようだった。
両腕の籠手が、重力を集めるたびに世界が“押し絞られる”。
重さが流れ、距離が変わる。
しかしそれだけでは終わらない。
鈍い爆風の余韻の中、彼女——ロードシックスがふっと姿を見せた。
空間を制するわけでも
爆発的な力を持つわけでもない。
だが、動きの一つ一つが計算されている。
瞬間、俺の視野の端で床が撓む。
左右どちらへ動けばいいかを探る前に、彼女は位置を変えていた。
「ふ……来ると思ったわ」
声は柔らかい。
だがその中に“観察”がある。
まるで、俺という存在を解体しているかのような視線。
「あなたの、重さの使い方……興味深いわ」
それは誉め言葉にも聞こえる。
だが俺は笑えなかった。
重力を拳に収束させる。
狙いは正面ではない。
距離を切り崩すための“場”を作るための力だ。
その瞬間、ブレイカムブレイカーが光を放つ。
シュートモード、連射。
軌跡の一つ一つが曲線を描き、俺の重力場を切り裂こうとする。
来る。
直線ではなく、狙いを変えながら迫ってくる。
拳の重力を瞬時に反転させる。
衝撃は受けない。
だが、軌道が“ずれる”。
空間が、変わる。
重力と弾道が交錯する中、
俺は彼女の目線を捉えていた。
そこには、戦術以上の何かがある。
「あなたって──重さを知ろうとしているわよね」
観察するように静かに言うその言葉に、心臓の奥がざわついた。
“重さ”
俺が背負ってきたもの
俺が守ろうとしてきた理由
俺が恐れてきた選択
そのすべてを、
彼女は見抜こうとしている。
「重力はね――逃げ場を無くす力でもあるのよ?」
ブレイカムブレイカーがまた弾を放つ。
今度は低い弾道。
まるで俺の重心を叩きに来るような射撃だ。
だが、俺も戦術眼を研ぎ澄ます。
重力の中心を外側へシフトする──
弾道が外れ、代わりに“場”だけが残った。
それを見逃さなかったのが、彼女の微笑み。
「ふふ……あなた、ちゃんと読めてる」
微かな調子で言葉を紡ぐ。
その目は興奮しているようにも、満足しているようにも見える。
……恋愛かもしれない。
この“観察眼”は、戦術でもなく純粋な敵対でもない。
俺という存在を注意深く追いかけている “何か”だ。
「それが──あなたの重さ」
彼女の追尾は、射撃だけではない。
判断、距離、重力の立ち位置——
すべてが“観察された上での攻撃”になっている。
俺は重力操作を瞬間的に変える。
縦の重さを横へ流し、射線を断つ。
そして拳を一点に絞る。
だが、その瞬間。
空気が裂けた。
俺は驚きを飲み込む前に、重力を遮断した。
重さは消え、世界は一瞬で軽くなる。
次の瞬間、弾は俺の目の前を掠めていった。
俺は無意識に言葉を発していた。
「……まだ、終わってない」
振り向くと、ロードシックスの姿がそこにある。
微笑みは消えていない。
だが、瞳の奥に、興奮と執着と、
そして抗えない期待が灯っていた。
「……さて、続きをしましょうか?」