ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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混乱 Part7

『グッドモーニング! イ・ナ・ズ・マ! ライダー!ゼッツ・ゼッツ・ゼッツ!プラズマ!』

 

雷光が弾け、視界が一瞬で白に塗りつぶされる。次の瞬間、蒼い稲妻が装甲の継ぎ目を走り、脚に込めた力が地面を穿った。空気が焦げる匂い。遠くで街の輪郭が歪み、ナイトメアの影が波打つ。

 

ナイトメアはすぐに反応した。空をねじ曲げ、建物を傾け、人影を操る。舗道が裂け、標識が鎌のように変形し、俺を包囲する。体力は底を打ちかけている。息が浅い。それでも、指はベルトを離さない。

 

『プラズマ!バニッシュ!』

 

発動の気配に、ナイトメアが街そのものを盾にした。操られた人々が前へ押し出される。瓦礫が雨のように降る。選べ、と言わんばかりに。

 

「ゴン太が、皆を傷つけさせない!」

 

低く、しかし確かな声が震えた。

 

巨体が割って入る。両腕で人影を抱え込み、背中で瓦礫を受け止める。鉄骨が肩を打ち、ガラス片が腕を裂く。制服が破れ、血が滲む。靴底がめり込み、地面に亀裂が走る。

 

「なっ……!」

 

ナイトメアの声がわずかに揺れた。

 

「ゴン太を踏み台にして!」

 

「あぁ!」

 

踏み込む。ゴン太の背中に足を掛けた瞬間、筋肉が沈み、次の瞬間、弾む。跳躍。雷光が尾を引く。空中で一回転、街の歪みを見下ろす。影が絡みつこうとするが、蒼い閃光が焼き切る。

 

『ゼ・ゼ・ゼッツ!』

 

落下。雷鳴が一点に凝縮される。蹴りが接触した瞬間、音が消え、次の瞬間、爆ぜた。ナイトメアの胴体に亀裂が走り、内部から黒い核が露出する。

 

「なっがぁぁ――」

 

叫びは途中で裂ける。街の歪みがほどけ、操られていた人影が地面に落ちる。核が崩れ、影が霧のように散る。

 

その最後、ナイトメアはかすれた声で吐いた。

 

『……優しさは、壊れる……はず、だった……』

 

思想が崩れる音がした。

 

光が貫く。核が砕ける。雷光がすべてを洗い流した。

 

着地。膝が軋む。視界が揺れる。振り向くと、ゴン太がまだ立っている。肩から血が滴り、片腕がわずかに震えている。それでも、人影を守るように立っている。

 

俺は親指を立てる。

 

「助かったぜ、ゴン太」

 

声が少し掠れる。

 

ゴン太は息を荒くしながら、同じように親指を立てる。

 

「ゴン太、紳士だから……友達、守る」

 

その言葉に、胸が熱を帯びる。

 

この世界で助けに来たはずだった。だが、守られたのは俺のほうだ。雷の残響が消え、空が本来の色を取り戻す。

 

ゴン太の肩から落ちる血が、ゆっくりと光に溶けていく。

 

優しさは壊れない。

壊れそうでも、踏み出せば、崩れない。

 

ナイトメアは消えた。

だが、残った痛みが、絆の重さを教えていた。

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