ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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破滅 Part4

 足が触れた瞬間、床がわずかに沈んだ。ゴムみたいでも、砂みたいでもない。踏み返しても音が返ってこないのが、逆に気味が悪い。

 

 校舎の形をした建物が並んでいるのに、窓の奥は暗闇だった。廊下の蛍光灯だけが点いている。けれど光は白すぎて、影を作らない。天井から学生証がひらひら落ち続けていて、名前の部分だけが擦り切れて読めなかった。

 

 耳の奥で通知音が鳴る。一定のリズムじゃない。誰かの息遣いみたいに、早くなったり途切れたりする。

 

「……ここ、変だな」

 

 呟くと、背後で最原が小さく息を吐いた。

 

「集合意識の歪みだと思う。万津君、足元、気をつけて」

 

 影が床に広がり、歪んだ段差を一瞬だけ固定する。

 その横で伊達さんが周囲を見回した。

 

「生きてる場所じゃねぇな。……龍木、反応は?」

 

「多数。増えてます。……来ます」

 

 建物の陰が揺れた。灰色の塊が、ぬるりと顔を出す。蝶みたいな大きな耳。赤ん坊の形をした腕が、地面を掻く。眠っている顔は穏やかなのに、胸の巨大な眼球だけがぎょろりと動いた。

 

 ひとつ。ふたつ。

 影の奥から、同じ姿が次々と現れる。

 

 弱い。圧は軽い。けど数が、異常だ。

 

「……変身!」

 

 ドライバーが鳴り、装甲が身体を包む。反動が脚に戻る感覚で、地面の感触がはっきりした。隣で最原も影をまとい、低い声で言う。

 

「道を開く。奥へ行こう」

 

 群れが一斉に動き出す。よちよちとした足取りなのに、距離の詰め方だけが速い。

 

 ブレイカムゼッツァーを引き抜き、後ろへ放った。

 

「伊達さん、これ!」

 

 受け取った伊達さんが軽く笑う。

 

「お前、素手かよ」

 

「大丈夫です。まだいける!」

 

 続けてイナズマブラスターを龍木さんへ。

 

「龍木さん、後ろ頼みます!」

 

「了解。援護、開始します」

 

 最初の一体が跳びかかる。抱きつくみたいな動き。拳で迎え撃つと、灰が散った。けれど消えない。散ったぶん、陰がまた膨らむ。

 

「万津君、右!」

 

 最原の影が足元を縫い止める。動きが鈍った瞬間、伊達さんの銃撃が群れを裂いた。龍木の光線が胸の眼球を貫き、瞬きが止まる。

 

 それでも、数は減らない。

 

 遠くの建物の奥が、わずかに脈打っているのが見えた。通知音が、そこだけ少し規則的だ。

 

「……あそこだ。孵化の中心」

 

 息を整え、拳を握る。装甲の中が熱い。

 

「伊達さん、龍木さん、ここは任せていいですか」

 

「行け。背中は守ってやる」

 

 短い返事。迷いがない。

 

「万津君、僕も行く」

 

 最原が並び、影が細く伸びる。

 灰色の群れを踏み越えて、俺たちは奥へ走り出した。

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