ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
先程の少女がいた場所。
そこにある証拠品を探る事にした。
一面に広がる古い写真群が壁を覆いつくしていた。どれも女子学生時代の赤松楓を写したものだ。だが奇妙なことに一枚だけ、彼女が幼い少女と一緒に写っている写真があった。顔が丁寧に消されているものの服装から年齢は推測できる。
「これは……幼稚園の頃か」
俺が呟くと最原が懐中電灯を向けた。
「背面に日付がない。でも使用カメラのモデルナンバーから……」
「九三年製だよね?」
「その通り。つまり被害者が八歳くらいのときだ」
最原の指摘通りだとすると隣の少女は六歳前後。
だが問題はそれ以上だった。床に落ちていたメモ帳が破れている。開くとそこには:
『●●ちゃんは今日もピアノ上手だったよ!』
名前部分は黒く塗りつぶされていたが筆跡は赤松楓本人のものだ。
「苗字は消されてるが……」
「下の名前だけ読めるな」
俺は喉元まで出かかった違和感を飲み込んだ。最原が顎に手を当て思考する。
「筆跡鑑定の結果と照合すれば特定可能かもしれない」
しかしすぐに彼は頭を振った。
「いや待て。むしろこれは意図的に残されたメッセージじゃないか?」
最原がメモ帳を裏返す。ページの隅に小さく走り書きがある。
《忘れたくない約束》
「これが第三のメンタルロック……?」
「間違いない。赤松楓の心の奥底で封印された記憶だ」
薄暗い写真室に舞い落ちる埃が、まるで雪みたいに思えた。懐中電灯の光が天井で踊る中、最原がメモ帳を掲げる。
「筆跡から見て間違いなく赤松さん本人のものだ」
彼の声には確信が混じっていた。名前が黒く塗りつぶされたメモ書きが僕の手元でかすかに震える。
「忘れたくない約束……」
唇を噛み締めた。ソムニウム世界の重圧が肌にまとわりつく。壁一面に並ぶ赤松さんの写真はどれも笑顔だったはずなのに、いまや無彩色の怨嗟に見えて仕方がない。
「万津君」
「彼女にとって“消したい”過去と“忘れてはいけない”約束が矛盾しているんだ」
「……つまり封印された記憶は彼女自身の意志なのか?」
最原がゆっくり頷く。
「そしてこの筆跡……幼少期のものだと仮定しても筆圧の強弱に明らかな自己検閲がある」
「自己検閲?」
「無意識に“書き殴ってしまった”部分が見受けられるんだ。普通の子供なら感情の赴くままに書くはずなのに」
指先で文字をなぞる彼の動作は熟練した職人のようだった。赤松さんの心の闇を暴く行為自体が罪のように思えてきて胃の腑が疼く。
「最原」
「赤松さんは誰を“忘れよう”としてる?」