ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
灰色の腕が、さらに強く締め付けた。
胸が押し潰される。呼吸が浅い。雷光が細く散り、プラズマイナズマの速度さえ鈍っていくのが分かった。
「……まだ、動ける……離せ……!」
力を込めても、腕はほどけない。
その時だった。
「万津様、もう――抵抗は十分です」
耳元で囁く声。
視線を動かすと、黒四館がすぐそばに立っていた。灰色の群れの中なのに、触れられていないみたいに静かに笑っている。
「……何する気だよ」
「決まっています。あなたを“先”へ進めるんです」
彼女の指が、ドライバーの前で止まる。
同時に、俺が装填されているカプセムを取り外した。
これによって、俺の変身が解除される。
そのはずだった。
「あなたに相応しいのは、このカプセムですから」
「何をっ」
その次の瞬間、彼女がスーツケースから取り出したのは、見た事のないカプセム。
「なんだっそれはっ」
触れていないのに、装置が低く唸り始めた。
「ぐっ」
『メツァメロ… メツァメロ…』
空間が歪む。
黒い煙が、足元から湧き上がった。
「……やめろ、勝手に――」
言い終える前に、黒四館が一歩踏み込んだ。
笑みのまま、俺のすぐ目の前へ。
「万津様は優しすぎる。だから、私が背中を押してあげます」
その瞬間、彼女の身体が煙に溶けた。
黒いモヤが腕の隙間を縫うように広がり、俺の周囲を包む。赤、青、緑、紫――四色の光が風車のように回り始めた。
「……おい、待て……!」
右手が勝手に動く。
左下から右上へ、空気を引き裂くように振り上げる。
「変身……!」
声が、自分のものじゃないみたいに響いた。
握った拳で、メアトリガムを叩き込む。
『パルバライズ! ライダー!』
衝撃が身体を貫いた。
黒い煙の中で、黒四館の声が重なる。
「大丈夫。壊れませんよ、あなたは」
強化被膜が膨れ上がり、装甲が軋む。
腕が、肩が、胸が、別の形へ盛り上がっていく。
『ゼッツ・ゼッツ・ゼッツ!』
雷じゃない。
重たい圧力が、内側から押し出してくる。
煙が竜巻のように巻き上がり、俺と黒四館を一つに包んだ。
巨大ナイトメアの腕が押し寄せるが、渦に触れた瞬間、弾かれる。
息が詰まる。視界が暗い。
でも――胸の奥で何かが目を覚ました。
竜巻が、急に収束する。
すべての光が、身体へ吸い込まれた。
複眼に、緑の光が満ちる。
『カタストロム!』
灰色の拘束が、音もなく砕けた。
地面に降り立った瞬間、重力が変わったみたいに世界が静まる。
拳を握る。装甲がきしむ。視界の端で、黒四館の声だけが残った。
「――ようこそ、万津様。本当の舞台へ」
巨大な影を見上げる。
さっきまで感じていた焦りが、妙に遠い。
群れの奥で、ナイトメアの腕がゆっくりと持ち上がった。
「破壊する」