ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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破壊 Part6

 拳を振るうたび、灰色の影が宙へ散る。

 踏み込むだけで地面がひび割れ、衝撃が波紋のように広がっていく。圧倒している。敵は押し返され、崩れ、形を失う。――それなのに、胸の奥のざわつきが止まらない。

 

「……まだ、足りない……?」

 

 呟いた瞬間、喉が焼けた。

 欲しくない言葉が、自分の口からこぼれた気がした。

 

 ナイトメアが、同時に飛びかかる。

 腕を振るう。まとめて弾ける。骨のない影が空中で裂け、壁に叩きつけられて霧のように崩れる。簡単だ。あまりにも、簡単すぎる。

 

 ――力が、重い。

 

 装甲の内側で何かが膨れ上がる。

 鼓動が速い。呼吸が浅い。視界が濃く染まる。灰色の世界が、赤みを帯びて見えた。

 

「万津君、落ち着いて!」

 

 聞こえたはずの声が、柔らかく歪む。

 

「ふふ……そのままで」

 

 違う。

 最原の声だ。伊達の怒鳴り声も混じっていたはずだ。

 

「止まれ、万津!」

 

「止まらないで、万津様」

 

 重なる。溶ける。

 音が一つにまとまって、黒四館の声になる。

 

 胸が締めつけられる。

 なのに、足は止まらない。

 

 拳を叩きつける。地面が割れる。

 衝撃が前方へ爆ぜ、ナイトメアの群れが一斉に吹き飛ぶ。建物の壁が崩れ、瓦礫が舞い上がる。

 

 ――やりすぎだ。

 

 分かっているのに、腕が止まらない。

 

「俺は……壊れてない……!」

 

 叫ぶ。

 だが声はかすれ、耳の奥で別の囁きが重なる。

 

「壊れていませんよ。だから、もっと壊せるんです」

 

 視界の端で、最原が動く。

 手を伸ばしている。止めようとしている。分かる。

 

 でも、その姿が灰色の影と重なる。

 

 拳を振り上げた瞬間、一瞬だけ迷いが走る。

 目の前にいるのは、ナイトメアか、それとも――。

 

 衝撃が走る。

 地面に叩きつけられた影が崩れ、灰色の煙が立ち上る。

 

 息が荒い。

 胸が熱い。鼓動が暴れる。

 

 ナイトメアがさらに集まる。

 だが、もう恐怖はない。ただ、苛立ちだけが膨らんでいく。

 

「全部、消えろ……!」

 

 両腕を振り抜く。

 空気が裂け、衝撃波が円を描く。周囲の影がまとめて吹き飛び、瓦礫と一緒に宙を舞う。

 

 その中心に立ちながら、気づく。

 

 ナイトメアよりも、自分のほうが暴れている。

 

 拳が震える。

 止めたい。けれど止め方が分からない。

 

「万津様……素晴らしい」

 

 黒四館の声が、甘く絡みつく。

 その言葉が、力をさらに押し上げる。

 

 視界が赤く染まる。

 仲間の姿が遠ざかる。声が届かない。

 

 圧倒しているはずなのに、孤独だけが濃くなる。

 

 拳を振るうたび、世界が削れる。

 地面が崩れ、建物が軋み、灰色の底がさらに深く沈んでいく。

 

 ――これが、俺の力なのか。

 

 そう思った瞬間、背筋に冷たい感覚が走った。

 

 力が強い。

 強すぎる。

 

 そして、このまま続ければ、ナイトメアだけじゃなく――。

 

 拳が、もう一度振り上がる。

 止める声は聞こえない。

 

 聞こえるのは、黒四館の囁きだけだった。

 

「もっと……万津様」

 

 灰色の世界の中心で、俺だけが暴風みたいに動いている。

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