ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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破壊 Part7

 灰色の群れがなおも押し寄せる。

 壊しても、砕いても、次の影が埋める。だが胸の奥で膨れ上がる“崩壊”が、限界を越えようとしているのがはっきり分かった。鼓動が早鐘のように鳴り、視界の端が赤く滲む。

 

「壊れろぉぉ!!」『カタストロム・クラッシャー!』

 

 

 足元が低く唸る。

 黒い亀裂が走り、地面の奥から巨大な影がせり上がった。展開したデュアルメアカプセムが、骨のようなフレームを広げながら巨大なドローンへと変形し、禍々しい光を放って上空へ跳ね上がる。

 

「……来い」

 

 声に応じるように、身体が浮く。

 装甲が軋み、重力が遠のく。上空へ引き上げられ、灰色の底が一望できた。ナイトメアの群れが蠢き、巨大な合体体がこちらを見上げている。

 

 風が唸る。

 黒四館の笑い声が混じる。

 

「万津様……壊してください」

 

 拳を握る。

 内側で膨張する力が、骨まで軋ませる。理性が薄くなる。壊したい衝動だけが、はっきりしていく。

 

「……壊れろ………!」

 

 身体が落ちる。

 一直線に、地面へ。灰色の中心へ。

 

 空気が裂ける。

 拳の先に崩壊の圧が凝縮される。まるで雷雲を握り潰したみたいに、力が重く固まる。

 

 

 落下の衝撃が音を奪う。

 ナイトメアの群れが一斉に腕を伸ばすが、接触した瞬間に弾け飛ぶ。

 

『ゼェッツ! ゼェッツ!! ゼェーーーッツ!!!』

 

 拳が叩き込まれた。

 

 地面が爆ぜる。

 衝撃波が円形に広がり、巨大な合体体の脚部が粉砕される。角も翼も、重なり合った悪魔の輪郭も、まとめて裂けた。灰色の影が爆風に乗って宙へ舞い、建物を突き破り、空へ散る。

 

 止まらない。

 

 拳を引き抜き、もう一撃叩き込む。

 崩壊の力がさらに広がり、ナイトメアが連鎖的に崩れる。まるで地面の下に埋まっていた絶望が一斉に爆発したみたいに、灰色の底が陥没していく。

 

「消えろ……全部……!」

 

 叫びと共に、両腕を振り抜く。

 衝撃が地平線まで走り、残っていた影が一瞬で砕け散る。灰色の空に裂け目が走り、世界そのものが軋んだ。

 

 静寂が落ちる。

 

 ナイトメアの気配が、急速に消えていく。

 巨大な合体体は完全に崩れ、塵となって舞い落ちる。

 

 中心に立つのは、俺だけだ。

 

 だが、止まらない。

 

 胸の奥で崩壊がまだ渦巻いている。

 拳が震える。装甲が軋む。視界が揺れ、最原達の姿が滲む。

 

「……まだ……」

 

 何を壊すつもりなのか、自分でも分からない。

 足が一歩、前に出る。

 

「もういい!」

 

 誰かの声が響く。

 けれど耳に届くのは、黒四館の甘い囁きだけだ。

 

「万津様……素晴らしい」

 

 胸が焼ける。

 呼吸が途切れる。力が抜ける。

 

 視界が急に暗くなった。

 崩壊の余熱が、一気に引いていく。

 

 膝が折れる。

 装甲が重い。

 

 倒れる瞬間、灰色の空が逆さに見えた。

 

 ――終わったのか。

 

 意識が、沈む。

 

 最後に聞こえたのは、遠くで最原が叫ぶ声と、重なって消えていく黒四館の笑いだった。

 

 そして、完全な闇。

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