ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
灰色の群れがなおも押し寄せる。
壊しても、砕いても、次の影が埋める。だが胸の奥で膨れ上がる“崩壊”が、限界を越えようとしているのがはっきり分かった。鼓動が早鐘のように鳴り、視界の端が赤く滲む。
「壊れろぉぉ!!」『カタストロム・クラッシャー!』
足元が低く唸る。
黒い亀裂が走り、地面の奥から巨大な影がせり上がった。展開したデュアルメアカプセムが、骨のようなフレームを広げながら巨大なドローンへと変形し、禍々しい光を放って上空へ跳ね上がる。
「……来い」
声に応じるように、身体が浮く。
装甲が軋み、重力が遠のく。上空へ引き上げられ、灰色の底が一望できた。ナイトメアの群れが蠢き、巨大な合体体がこちらを見上げている。
風が唸る。
黒四館の笑い声が混じる。
「万津様……壊してください」
拳を握る。
内側で膨張する力が、骨まで軋ませる。理性が薄くなる。壊したい衝動だけが、はっきりしていく。
「……壊れろ………!」
身体が落ちる。
一直線に、地面へ。灰色の中心へ。
空気が裂ける。
拳の先に崩壊の圧が凝縮される。まるで雷雲を握り潰したみたいに、力が重く固まる。
落下の衝撃が音を奪う。
ナイトメアの群れが一斉に腕を伸ばすが、接触した瞬間に弾け飛ぶ。
『ゼェッツ! ゼェッツ!! ゼェーーーッツ!!!』
拳が叩き込まれた。
地面が爆ぜる。
衝撃波が円形に広がり、巨大な合体体の脚部が粉砕される。角も翼も、重なり合った悪魔の輪郭も、まとめて裂けた。灰色の影が爆風に乗って宙へ舞い、建物を突き破り、空へ散る。
止まらない。
拳を引き抜き、もう一撃叩き込む。
崩壊の力がさらに広がり、ナイトメアが連鎖的に崩れる。まるで地面の下に埋まっていた絶望が一斉に爆発したみたいに、灰色の底が陥没していく。
「消えろ……全部……!」
叫びと共に、両腕を振り抜く。
衝撃が地平線まで走り、残っていた影が一瞬で砕け散る。灰色の空に裂け目が走り、世界そのものが軋んだ。
静寂が落ちる。
ナイトメアの気配が、急速に消えていく。
巨大な合体体は完全に崩れ、塵となって舞い落ちる。
中心に立つのは、俺だけだ。
だが、止まらない。
胸の奥で崩壊がまだ渦巻いている。
拳が震える。装甲が軋む。視界が揺れ、最原達の姿が滲む。
「……まだ……」
何を壊すつもりなのか、自分でも分からない。
足が一歩、前に出る。
「もういい!」
誰かの声が響く。
けれど耳に届くのは、黒四館の甘い囁きだけだ。
「万津様……素晴らしい」
胸が焼ける。
呼吸が途切れる。力が抜ける。
視界が急に暗くなった。
崩壊の余熱が、一気に引いていく。
膝が折れる。
装甲が重い。
倒れる瞬間、灰色の空が逆さに見えた。
――終わったのか。
意識が、沈む。
最後に聞こえたのは、遠くで最原が叫ぶ声と、重なって消えていく黒四館の笑いだった。
そして、完全な闇。