ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
会議室の中央に並べられた三基のブレイカム・モジュラーは、それぞれ異なる色のラインを淡く走らせながら、まだ選ばれていない未来を静かに待っているかのようだった。
赤、緑、紫。
残る三属性。
日菜がモニターを切り替えると、色分けされた波形が壁面に広がる。
「まず、赤系統――フィジカム」
説明は静かだが、空気は重い。
「身体能力の極端な増幅。
反射速度、筋出力、踏み込みの加速度。
単純な破壊力ではなく、“突破力”が本質」
赤いラインが波形に重なる。
「前線に立つ者が必要だ。
だが精神負荷は肉体に直結する」
沈黙。
入間が小さく鼻を鳴らす。
「パワー馬鹿じゃ無理よ。
制御できる奴じゃないとね」
次に、緑。
「エスプリム」
光が柔らかく変わる。
「精神干渉、安定化、他者保護。
単なる回復ではない。
“崩壊を止める”力」
日菜の指が数値をなぞる。
「万津君の内部暴走を抑えるなら、この系統は不可欠だ」
最原が目を伏せる。
「……精神耐久が高い者が必要だね」
最後に、紫。
「パラダイム」
画面に立体構造の歪みが映る。
「空間把握、法則認識、干渉点の特定。
世界の見え方そのものを変える力」
短い静寂。
伊達が腕を組む。
「制御戦に向いてる」
日菜が頷く。
「ただし、適合条件が最も厳しい」
三つのモジュラーが並ぶ。
赤は突破。
緑は抑制。
紫は解析。
入間が机を指で叩く。
「で?
誰がやるのよ」
言葉は軽い。
だが、その裏にあるのは覚悟の確認だ。
日菜は静かに告げる。
「適合スキャンを始める。
才能、精神耐久、干渉耐性」
画面に“候補者未確定”の文字が浮かぶ。
時間がない。
万津の脳波は、まだ異常値を示している。
三属性。
三人。
足りなければ、崩れる。
会議室の白い光の下で、ブレイカム・モジュラーは静かに待ち続けていた。
モニターの隅に表示されたカウントダウンが、淡い光を放ちながら確実に数字を削っていくのを、誰もが無意識のうちに目で追っていた。
残り二十四時間。
猶予は一日。
万津の脳波は依然として安定しているように見えるが、深層ログの振幅はわずかずつ拡大しており、暴走因子が内部で再構築を始めている兆候がはっきりと示されていた。
日菜が静かに言う。
「次の臨界点まで約二十四時間」
短い沈黙。
「それを越えれば、深層構造が固定化する。
固定化すれば、外部干渉は難しくなる」
伊達が眉を寄せる。
「つまり、一日以内に適合者を見つけて、侵入しなきゃならない」
事実だけが重い。
入間が腕を組み、机を指で叩く。
「モジュラーは完成してる。
でも使い手がいなきゃただのガラクタよ」
軽い言い方。
だが、笑っていない。
最原が冷静に整理する。
「赤、緑、紫。
三属性。三人。
一日で選定、調整、接続確認」
無理に近い。
だが不可能ではない。
日菜が画面を拡大する。
万津の深層ログが、僅かに脈打つ。
「これ以上遅れれば、暴走は自律化する」
言葉が冷たい。
伊達が息を吐く。
「だったらやるしかない。
スキャンを今すぐ開始だ」
入間が小さく笑う。
「最高じゃない。
一日で英雄探し?」
その声は強気だ。
だが、視線はモジュラーに落ちている。
残り二十三時間五十九分。
秒針が、音もなく削れていく。
万津を救えるかどうかは、
この一日で決まる。