ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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繋がり Part4

スキャン装置の解析ログが高速で流れ続けるモニターを前にして、日菜は指先でキーボードを叩きながら静かに呼吸を整えていたが、赤・緑・紫の三系統の候補者リストが何度も更新されるその画面の中で、突然ひとつの数値が他とは明らかに違う動きを見せ始めた瞬間、部屋の空気がわずかに変わったのを誰もが感じ取った。

緑色の波形が、静かな湖面に落ちた石の波紋のようにゆっくり広がりながら、他の候補者データを押しのけるように上昇していく。

エスプリム適合値のグラフが、まるでそこだけ別の意思を持っているかのように跳ね上がった。

 

「……出た」

 

日菜の声が、静かな室内に落ちた。

 

短い一言。

だが、それだけで全員の視線がモニターに集まる。

 

最原が画面を見つめ、わずかに目を細める。

 

「適合反応……緑。

エスプリム系統ですね」

 

伊達が腕を組みながらモニターを見上げる。

 

「精神系か」

 

モニター中央のデータが更新される。

候補者名の欄に、一つの名前がゆっくりと浮かび上がった。

 

最原が、思わず声を漏らす。

 

「……え?」

 

入間も身を乗り出す。

 

「ちょっと待って。

今の、もう一回表示して」

 

画面に表示された名前。

 

ゴン太

 

数秒の沈黙。

 

誰も何も言わない。

 

入間が先に吹き出した。

 

「はあ!? ちょっと待って!?

エスプリムよ!? 精神系よ!? なんでゴン太なのよ!?」

 

日菜は慌てる様子もなく、数値を確認している。

 

「適合率……九十六パーセント」

 

淡々とした声。

 

伊達がモニターをじっと見つめたまま、眉を寄せる。

 

「……いや待て」

 

腕を組み直す。

 

「ゴン太って、あの」

 

少し言葉を探す。

 

「……身体能力の塊みたいな奴だろ」

 

入間が机を指で叩く。

 

「そうよ! どう見てもフィジカム担当でしょ!

筋肉でドア壊すタイプでしょあいつ!」

 

最原が苦笑する。

 

「でも、ゴン太は……すごく優しい人ですよ」

 

日菜が画面を操作する。

 

新しいグラフが表示された。

 

「精神安定値が極めて高い。

恐怖耐性、ストレス耐久、共感指数」

 

数値が並ぶ。

 

どれも高い。

 

伊達がそれを見て、小さく息を吐いた。

 

「……なるほどな」

 

納得しかけた瞬間。

 

ガチャッ。

 

勢いよく扉が開いた。

 

「呼ばれましたか!」

 

大きな声が部屋に響く。

 

振り返ると、そこにはゴン太が立っていた。

背が高く、肩幅も広く、まるで山のような体格。

 

完全にフィジカル。

 

伊達が思わず呟く。

 

「……いや絶対違うだろ」

 

ゴン太が首をかしげる。

 

「違う?」

 

入間が画面を指差す。

 

「あんたよ、あんた!

エスプリム適合者って出たの!」

 

ゴン太はモニターを覗き込む。

 

しばらく真剣な顔で見つめる。

 

そして、ゆっくり言った。

 

「……ゴン太、よくわからないけど」

 

胸を張る。

 

「困っている人を助けるのは、紳士の仕事です!」

 

静寂。

 

最原が思わず笑う。

 

伊達も、肩をすくめる。

 

「……ああ」

 

小さく頷く。

 

「それだな」

 

入間が額を押さえる。

 

「見た目に騙されたわ……」

 

日菜はモニターを確認する。

 

「精神安定指数がさらに上昇」

 

ゴン太が目を輝かせる。

 

「ゴン太、役に立てますか!」

 

日菜が静かに答える。

 

「エスプリム適合率、九十六パーセント。

現時点で最も安定した候補者」

 

伊達が小さく笑う。

 

「……決まりだな」

 

最原も頷く。

 

「ゴン太、お願いできますか」

 

ゴン太は背筋を伸ばす。

 

「はい!

ゴン太、紳士として頑張ります!」

 

会議室の空気が、ほんの少しだけ軽くなる。

 

最初の適合者。

 

エスプリム担当、ゴン太。

 

筋肉の塊のような男が、

精神系ライダーの候補者だった。

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