ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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メンタルロック Part4

無数の鍵が砕け散る音と共に空間がひび割れた。三つのメンタルロックが解かれた瞬間、天井から崩れ落ちてきたのは──

 

「あぁ」

 

赤松楓の悲鳴に似た呼び声だった。彼女の輪郭が揺らぎ、まるで水面に映る虚像のように分裂する。

 

「あれは」

 

最原が目を細めて呟く。俺の前に現れたのは確かに赤松楓だ。だが髪は乱れ、制服の袖は泥にまみれ、そして何より──瞳に熱がない。

 

「冷めきった目……」

 

俺が声に出すと彼女は嘲笑した。

 

「才能?友情?努力?全部くだらない嘘だよ」

 

彼女の背後で再現される映像は残酷だった。小学校の音楽室。双子の姉妹が同時にピアノを弾く。姉(楓)の旋律は完璧で観客は拍手喝采。だが妹(名は見えない)の演奏が始まると沈黙が広がる。

 

「楓の方がずっと上手い」「妹なんて……」

 

ヒソヒソ声が針のように降り注ぐ。

 

「違うんだ! 私は─」

 

楓が弁護しようとするが画面の妹はすでに退出していた。その後ろ姿は拒絶そのものだ。

 

「トラウマの核心は才能コンプレックスじゃない」

 

最原が推理を始めた。

 

「双子という特殊な関係性において“唯一無二の才能”を持つことは妹にとって“孤独への招待状”だったんだ」

 

俺は胸を押さえた。理解できる。自分と全く同じ姿形の人間が別の道を歩む苦しさ。

 

画面が切り替わる。中学の全国コンクール。優勝を逃した楓が舞台裏で泣き崩れる場面だ。観客席の表情がアップになる。「がっかりした」「所詮あの程度か」

 

失望の言葉が黒いインクのように流れ落ちる。それを見つめるもう一人の赤松が囁いた。

 

「私の中で妹はずっと叫んでる。“あなたさえいなければ自由になれた”って」

 

「違う!」

 

今度こそ俺は叫んだ。

 

「誰も君を責めていない! 妹だって本当は─」

 

「でも世界は違う視線で裁く」

 

彼女の指が俺の襟元を掴む。冷たい指先が命脈を削るように圧迫する。

 

変身ベルトの警告音がけたたましく鳴り響く。身体が鉛のように重い。

 

「万津君!」

 

最原の叫びも遠くなる。意識が薄れる寸前、幻聴のような歌声が聞こえた。

 

♪ ピアノの音色は いつも一人ぼっち

 

♪ 二人分の想いを 消してしまうから

 

「……歌?」

 

崩れゆく意識の中で俺は気づいた。あの冷めた赤松が初めて表情を変えたことを。涙を堪えるように唇を噛む彼女の瞳を見る。

 

「それは違うよ!」

 

突然だった。最原の声が雷鳴のようにソムニウム世界を切り裂いた。

 

現実世界にいる彼は、夢の中にいる赤松のトラウマを。

 

否定するように。

 

「最原君」

 

その言葉と共に、ゆっくりと語り出す。

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