ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
「……ああ? この程度で同情か? 笑わせるぜ貧乏人が」
埃にまみれた顔で、入間が挑発的な笑みを作る。だが声は震えている。
「世間が認めてくれない発明がゴミだなんて……当たり前じゃねえかよ」
彼女は俯き、足元のガラクタ——寝袋型ベッドと一体になったポータブルテレビを爪先で弄った。ソムニウム世界に反映された「寝たまま〇〇シリーズ」の廃棄品たちだ。
「オレ様の最高傑作……なのに……なのに……っ!」
声が詰まる。喉が震える。
「『目薬型コンタクト』みたいな便利で綺麗なものだけ評価されて……」
悔しさが滲み出る。彼女の周りには、「役立たず」と烙印を押された失敗作が山と積まれていた。その中に「寝たまま洗顔マシン」の残骸を見つけて俺は唸る。
「……お前の本当に作りたかったものは何だ?」
「知らねえよ! 才能は評価されるためにあるんだろ? 楽して生きたい欲求なんて……無駄な妄想だと思われるだけだ!」
入間が激昂する。ガラクタの山がゴゴゴと蠢き、針金や金属片が意志を持ったように鋭く尖った——ソムニウムが暴走しかけている。
俺は一歩も退かず、まっすぐ彼女の目を見据えた。
「違う。お前の才能はお前自身のものだ」
「は……?」
「世間が賞賛するかどうかなんて関係ない。お前が本当に楽しいと思うものを作れよ。それが例え怠惰でも、例えガラクタに見えても、それを作れるのはお前だけなんだからな」
静寂が落ちる。金属片の唸りも止まった。入間の瞳に怒りとも悲しみとも違う光が灯る。
「……ざまあねえよな。こんな俺様が……お前に……」
入間は初めて素直な笑みを見せた。汚れたブロンドの髪をかきあげる指先が震えている。
「ああもう! いちいちムカつくんだよ! 何でだよ! 何でお前は……簡単にそう言えるんだよ……!」
その言葉は怒号ではなく、吐露だった。俺は答えずに、足元のジャンクから小さな電子基板を拾い上げる。表面には「NEMURUMA+DANMASHIN(仮)」と殴り書きされていた。
「これ、作ろうとしてたんだろ?」
「……チッ。勝手に見んなよ貧乏人」
彼女は顔を背けたが、耳朶が赤い。
「つまんねー名前だよな。でも……悪くねえ」
俺が呟くと、入間の肩が小さく震えた。そして——
「……じゃあよ。完成したら最初に見せてやるよ。ただでな」
「無料提供かよ。発明家らしくねえな」
「うるせえ! これは特別サービスだ!」
入間が勢いよく立ち上がる。背筋が伸びると同時に、周囲のガラクタが粒子となって溶け始めた。彼女の才能が肯定された瞬間、ソムニウム世界そのものが緩やかに明るくなり始める。
「見てろよ貧乏人。次はお前を楽させてやる発明を作ってやる。寝ながらでも数学の天才になれるとか……そう言うのな!」
「それは……ありがたくないな」
俺は笑いながら首を振った。すると入間もまた、ふんと鼻を鳴らして笑う。その笑顔は教室で見せる毒のあるものではなく、素朴で温かいものだった。
「覚悟しろよ。オレ様の才能はとまらねえんだからな!」
「ああ。楽しみに待ってる」
俺が頷くと同時に、世界全体が光に包まれ――。
「いやぁ、悪いけどね、そういうのは困るんだよねぇ」
柔らかくも耳障りな声が響いた。反射的に振り返ると――巨大な鉄塊が宙を舞っていた。
「危ねぇっ!」
咄嗟に駆け寄り、入間を突き飛ばす。轟音と共にショベルカーのアームが地面に叩きつけられる。衝撃波で埃が舞い上がった。
「なんだよ!あれは……!」
入間が指さした先には、錆びついた鉄屑の集合体――工事用車両が無秩序に繋ぎ合わさった歪な巨人が立っていた。錆びたフロントガラスがギョロリとこちらを見つめている。ナイトメアだ。
「ナイトメアか!」
ゼッツドライバーを握りしめる。その時だった。
「ふむ、二度失敗したから試しに見に来たんだけど、なかなかに面白いね」
嘲笑混じりの声が割り込む。視界の隅に派手なタキシードがちらついた。金髪に黄色の蝶ネクタイ、不敵な笑みを湛えた男が悠然と歩いてきた。手には細身のステッキ。
「誰だ、お前は」
その問いかけに対して。
「あえて、名乗るとしたら、人類の滅亡を待ち望む者かな」