ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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発明 Part3

「……ああ? この程度で同情か? 笑わせるぜ貧乏人が」

 

 埃にまみれた顔で、入間が挑発的な笑みを作る。だが声は震えている。

 

「世間が認めてくれない発明がゴミだなんて……当たり前じゃねえかよ」

 

 彼女は俯き、足元のガラクタ——寝袋型ベッドと一体になったポータブルテレビを爪先で弄った。ソムニウム世界に反映された「寝たまま〇〇シリーズ」の廃棄品たちだ。

 

「オレ様の最高傑作……なのに……なのに……っ!」

 

 声が詰まる。喉が震える。

 

「『目薬型コンタクト』みたいな便利で綺麗なものだけ評価されて……」

 

 悔しさが滲み出る。彼女の周りには、「役立たず」と烙印を押された失敗作が山と積まれていた。その中に「寝たまま洗顔マシン」の残骸を見つけて俺は唸る。

 

「……お前の本当に作りたかったものは何だ?」

 

「知らねえよ! 才能は評価されるためにあるんだろ? 楽して生きたい欲求なんて……無駄な妄想だと思われるだけだ!」

 

 入間が激昂する。ガラクタの山がゴゴゴと蠢き、針金や金属片が意志を持ったように鋭く尖った——ソムニウムが暴走しかけている。

 

 俺は一歩も退かず、まっすぐ彼女の目を見据えた。

 

「違う。お前の才能はお前自身のものだ」

 

「は……?」

 

「世間が賞賛するかどうかなんて関係ない。お前が本当に楽しいと思うものを作れよ。それが例え怠惰でも、例えガラクタに見えても、それを作れるのはお前だけなんだからな」

 

静寂が落ちる。金属片の唸りも止まった。入間の瞳に怒りとも悲しみとも違う光が灯る。

 

「……ざまあねえよな。こんな俺様が……お前に……」

 

入間は初めて素直な笑みを見せた。汚れたブロンドの髪をかきあげる指先が震えている。

 

「ああもう! いちいちムカつくんだよ! 何でだよ! 何でお前は……簡単にそう言えるんだよ……!」

 

その言葉は怒号ではなく、吐露だった。俺は答えずに、足元のジャンクから小さな電子基板を拾い上げる。表面には「NEMURUMA+DANMASHIN(仮)」と殴り書きされていた。

 

「これ、作ろうとしてたんだろ?」

 

「……チッ。勝手に見んなよ貧乏人」

 

彼女は顔を背けたが、耳朶が赤い。

 

「つまんねー名前だよな。でも……悪くねえ」

 

俺が呟くと、入間の肩が小さく震えた。そして——

 

「……じゃあよ。完成したら最初に見せてやるよ。ただでな」

 

「無料提供かよ。発明家らしくねえな」

 

「うるせえ! これは特別サービスだ!」

 

入間が勢いよく立ち上がる。背筋が伸びると同時に、周囲のガラクタが粒子となって溶け始めた。彼女の才能が肯定された瞬間、ソムニウム世界そのものが緩やかに明るくなり始める。

 

「見てろよ貧乏人。次はお前を楽させてやる発明を作ってやる。寝ながらでも数学の天才になれるとか……そう言うのな!」

 

「それは……ありがたくないな」

 

俺は笑いながら首を振った。すると入間もまた、ふんと鼻を鳴らして笑う。その笑顔は教室で見せる毒のあるものではなく、素朴で温かいものだった。

 

「覚悟しろよ。オレ様の才能はとまらねえんだからな!」

 

「ああ。楽しみに待ってる」

 

俺が頷くと同時に、世界全体が光に包まれ――。

 

「いやぁ、悪いけどね、そういうのは困るんだよねぇ」

 

柔らかくも耳障りな声が響いた。反射的に振り返ると――巨大な鉄塊が宙を舞っていた。

 

「危ねぇっ!」

 

咄嗟に駆け寄り、入間を突き飛ばす。轟音と共にショベルカーのアームが地面に叩きつけられる。衝撃波で埃が舞い上がった。

 

「なんだよ!あれは……!」

 

入間が指さした先には、錆びついた鉄屑の集合体――工事用車両が無秩序に繋ぎ合わさった歪な巨人が立っていた。錆びたフロントガラスがギョロリとこちらを見つめている。ナイトメアだ。

 

「ナイトメアか!」

 

ゼッツドライバーを握りしめる。その時だった。

 

「ふむ、二度失敗したから試しに見に来たんだけど、なかなかに面白いね」

 

嘲笑混じりの声が割り込む。視界の隅に派手なタキシードがちらついた。金髪に黄色の蝶ネクタイ、不敵な笑みを湛えた男が悠然と歩いてきた。手には細身のステッキ。

 

「誰だ、お前は」

 

その問いかけに対して。

 

「あえて、名乗るとしたら、人類の滅亡を待ち望む者かな」

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