ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
次の訓練室に入る。広さは体育館の倍ほどだろうか。壁一面が黒く塗りつぶされ、天井からは無数のカメラが監視している。
「万津。お前はゼッツになれると言っても、基本は一般人だ」
伊達さんが低く呟く。義眼のライトが鋭く光る。
「つまり……身体能力も知識も普通の人間レベルということだ」
「いやまぁ……そうですけど」
「ならばまずは基礎体力から鍛え直す必要がある」
伊達さんの拳が鳴る。冷酷なプロの眼差しだ。
「ええっと……具体的には何をするんですか?」
「簡単だ。俺と三十分間手合わせだ」
「ちょ……ちょっと待ってください!」
思わず後ずさりする。相手は現職の刑事だぞ?
「無理ですよ!俺なんか格闘技の経験ないですし!」
「知ってる」
伊達さんはポケットから小型注射器を取り出し腕に打ち込んだ。
「だがソムニウム空間での戦いは肉体依存率が高い。現実の疲労と痛みが反映されるからな」
義眼が青く輝く。アイボゥとリンクしているようだ。
「それに……」
冷たい目が俺を射抜く。
「ゼッツに変身すれば即戦力というのは幻想だ。万津の実力次第ではすぐ倒れる」
「そんな……」
「安心しろ。死なない程度に調整してある」
いや全然安心できないんですけど!?
「あと十五秒以内に構えないと開始する」
「はいはいわかりました!」
慌ててジャージの袖をまくる。
「ちなみに……訓練ってどんな内容ですか?」
「シンプルに肉弾戦だ」
伊達さんは手袋をはめる。
「ただしお前の場合は特別メニューだ。最初の五分はパンチなしのロックアップ。次に十分はグラップリング。残りは模擬武器を使った動きを練習だ」
「パンチ無しだって?余裕ありますねえ」
「舐めるなよ万津」
伊達さんの拳が鈍く光る。
「超高校級の才能でゼッツになったとはいえ……お前は根っこが一般人だ。つまりこういう戦い方は全く馴染んでないはず」
「……確かにそうかもしれませんね」
正論すぎて反論できない。
(ふぅ……なんとか持ち堪えたか)
俺は壁にもたれて息を整える。訓練室の床には汗が水たまりを作っていた。
「よし、今日はここまでだ」
伊達さんが時計を確認する。義眼のライトが青く点滅している。
「正直言って……予想以上だった」
「へ?」
驚いて顔を上げると、珍しく伊達さんが微笑んでいた。
「お前の……目の前の危機を見過ごせない性格はな」
「どういう意味です?」
「途中で何度か意図的に隙を作ったんだ」
彼が壁に背を預ける。
「例えば六分四十二秒あたり。お前が崩れ落ちそうになった時」
「ああ、あの時……」
「普通なら諦める。だがお前は踏ん張って耐えた」
伊達さんがゆっくりと歩み寄る。
「なぜだ?」
「だって……もし俺がここで倒れたら……」
俺は膝に手を当てて立ち上がる。
「ソムニウム世界で誰が人々を助けるんですか?」
一瞬の沈黙が流れる。
「……それが超高校級の不幸の本質か」
「はぁ?」
「才能がない分……人としての核が強いんだよ」
伊達さんの左手が肩に乗せられる。重い感触だ。
「これから俺が持つ中で最も危険なアイテムを見せてやる」
「えっ?」
突然の宣言に呆然とする。まさか……
「これだ」
取り出したのは一冊の古ぼけた本。
「っ!?ちょっ……伊達さん!それエロ本じゃないですか!」
表紙には際どい女性のイラストが全面に。ページを開けばR18指定確定の過激さだ。
「……やっぱりお前には刺激が強すぎたか」
「なに平然と言い張ってるんですか!」
俺は頬を引きつらせながら本を押し返す。