ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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悪夢 Part6

両腕が、刃に変わる。

 

まんじの黒い装甲が形を失い、先端から鋭く伸びていく。右腕は長剣、左腕は曲刀。異なる形状の刃が、赤い複眼の光を反射して不気味に濡れていた。

 

「その龍、飾りじゃねぇんだろ」

 

まんじの声が、仮面の奥で低く響く。

 

「だったら、斬り合って確かめようじゃねぇか。てめぇの覚悟ってやつを」

 

彼女が床を蹴った。

 

黒い残像が視界に残る。さっきまでよりも速い。施設の照準が彼女の動きを追いきれず、赤い光が壁を無秩序に走っていた。

 

俺は両手を広げる。

 

深紅の光が掌から溢れ、実体を持ち始める。握り込むと、ずっしりとした重みが腕へ伝わった。

 

ブレイカムドォーン。

 

パニッシュカプセムと共に現れた、二振りの剣。長剣と短剣を同時に構える。

 

長剣を正眼に構え、短剣を逆手に持ち替える。

 

「来い」

 

右の曲刀が、横薙ぎに迫る。

 

俺は長剣で受け流した。金属音が地下空間に響き、火花が闇を裂く。衝撃を腕で殺す間もなく、左の長剣が袈裟懸けに振り下ろされる。

 

短剣で軌道を逸らす。

 

刃が肩の装甲をかすめ、銀色の表面に浅い傷が走った。

 

「一撃目は挨拶だ」

 

まんじが踏み込む。

 

「二撃目からは、違うぞ!」

 

曲刀が突きに変わる。喉元を狙った鋭い刺突。俺は半身で躱し、長剣をまんじの脇腹へ流す。

 

彼女は曲刀を引き戻さず、左の長剣で俺の一撃を受け止めた。刃と刃が噛み合い、互いの体重が正面からぶつかる。

 

近い。

 

ゼッツダークネスの赤い複眼が、手を伸ばせば届く距離にあった。

 

「龍はどうした!」

 

まんじが叫び、頭突きを放つ。仮面と仮面が激突し、視界に火花が散った。

 

体勢を崩した俺の足元へ、曲刀が滑り込む。

 

まずい。

 

脚を狙った一閃。俺は後方へ跳んで躱したが、着地の瞬間にまんじが距離を詰めていた。右の曲刀が逆袈裟に跳ね上がり、左の長剣が上段から落ちる。

 

二方向同時。

 

俺は長剣を上段の受けに回し、短剣を逆手のまま曲刀の軌道へ差し込む。四本の刃が交差し、耳をつんざく金属音が響いた。

 

「いい反応だ」

 

まんじが押し込む。

 

「だが!」

 

彼女の両腕から、黒い波紋が刃へ流れ込む。剣の表面に蝶の紋章が浮かび、重さが倍に跳ね上がった。

 

膝が沈む。

 

「ぐっ…!」

 

「教祖様に近づく奴は、全員斬り刻んででも止める!」

 

まんじの怒声と共に、刃の圧力がさらに増す。床のタイルが俺の足元から放射状に割れ、破片が宙を舞った。

 

パニッシュドラゴンが、背後で唸る。

 

今だ。

 

俺は短剣を手放した。

 

「何…」

 

まんじの曲刀が、抵抗を失って俺の肩口へ食い込む。装甲を裂き、下の強化被膜まで届く。痛みが左腕を走った。

 

それでも、俺は倒れない。

 

手放した短剣が宙で止まる。龍の尾が巻きつき、意思を持つかのように回転した。短剣は弧を描き、まんじの背後へ回り込む。

 

「しまっ…」

 

まんじが振り返ろうとした瞬間、短剣が彼女の右の刃を側面から叩いた。

 

曲刀の軌道が逸れる。

 

押し込まれていた圧力が一瞬緩み、俺は長剣をまんじの左の刃から滑らせる。火花が散り、互いの武器が外れた。

 

俺は一歩踏み込み、長剣を横一文字に振り抜く。

 

まんじは両方の刃を交差させて受けた。衝撃で彼女の身体が数歩後退し、床に黒い靴跡が残る。

 

龍が短剣を俺の手へ戻した。

 

「今のは…」

 

まんじが小さく呟く。

 

「一人で戦ってるわけじゃねぇってことか」

 

「そうだ」

 

俺は双剣を構え直す。左肩からはまだ血が滲んでいたが、龍のエネルギーが傷口を覆い、出血を止め始めている。

 

「俺の背中には、仲間がいる。お前が背負ってきたものを、一緒に受け止める奴らが」

 

「仲間、ね」

 

まんじは両腕の刃を、ゆっくりと構え直した。

 

「だったら、その仲間ごと斬り刻むまでだ」

 

彼女の装甲から、さらに濃い黒い粒子が溢れ出す。粒子は刃へ吸い込まれ、切っ先をより鋭く、より重く変えていく。

 

「教祖様を守るためなら、あたしはどこまでも強くなる」

 

「分かってる」

 

俺は長剣を前に、短剣を腰の高さに構える。

 

「だから、俺も強くなる。お前の強さを受け止められるくらい、な」

 

二人、同時に床を蹴った。

 

四本の刃が、地下空間の闇の中で火花を散らす。

両腕の刃が、闇を裂いて迫る。

 

右の曲刀が喉元を狙い、左の長剣が胴を薙ぐ。二方向同時。さっきまでなら受け止めるだけで精一杯だった。

 

俺は長剣で曲刀を弾き、短剣で長剣の軌道を逸らす。四本の刃が交差し、耳をつんざく金属音が地下空間に響いた。

 

「その罪は消えねぇ!」

 

まんじが叫ぶ。彼女の声は仮面の奥で歪み、怒りと痛みが混ざり合っていた。

 

「奪ったものも、奪われたものも、全部が夢の中で繰り返される! 目を覚ましても、犯した罪はなくならねぇんだ!」

 

彼女の曲刀が、俺の肩口を浅く斬る。銀色の装甲が裂け、下の強化被膜まで傷が走った。痛みが左腕を駆け抜ける。

 

それでも、俺は下がらない。

 

「分かってる!」

 

俺の長剣が、まんじの脇腹をかする。黒い装甲に深紅の火花が散り、彼女が一瞬だけ体勢を崩した。

 

「罪は消えない! 犯したことは取り消せない! 奪ったものは戻らない!」

 

俺の声が、地下空間に響く。

 

「それでも!」

 

短剣を逆手に持ち替え、まんじの曲刀を下から跳ね上げる。彼女の右腕が上がり、胸元が空いた。俺は踏み込み、長剣を彼女の胸部装甲へ突き立てる。

 

まんじは両方の刃を交差させて受けた。

 

刃と刃が噛み合い、互いの体重が正面からぶつかる。

 

「それでも、なんだ!」

 

まんじが叫び返す。赤い複眼が、すぐ目の前で揺れていた。

 

「罪を背負って、どうする! 犯した側はいつも忘れる! 犯された側だけが苦しみ続ける! なら、そんな罪に何の意味がある!」

 

俺は歯を食いしばり、彼女の刃を押し返す。

 

「意味なんてなくても!」

 

俺の叫びに、背後の龍が応えた。マゼンタ色の光が全身を駆け巡り、腕の力が跳ね上がる。

 

「罪を背負うことに、意味なんて必要ない!」

 

まんじの刃が、少しだけ押し戻された。

 

「俺は、自分が奪ってきたものを忘れない! 自分が傷つけてきた相手を忘れない! 生きている限り、この罪を背負って生きる!」

 

「ふざけるな!」

 

まんじが頭突きを放つ。仮面と仮面が激突し、視界に火花が散った。

 

「罪を背負って生きるだと? そんな綺麗事で、奪われた側の痛みが癒えると思ってるのか!」

 

彼女の声が震えている。

 

「教祖様は、人間の罪から逃げなかった! なのに、人間は教祖様を利用して、傷つけて、最後には檻の中へ閉じ込めた! これが現実だ! これが人間の罪の末路だ!」

 

曲刀が俺の右腕を斬る。

 

長剣が左の腿を裂く。

 

それでも、俺は倒れない。

 

「それでも!」

 

俺は両方の剣を握り直し、まんじの刃を受け止め続ける。

 

「教祖は逃げなかったんだろ! なら、俺も逃げない! 罪からも、痛みからも、この現実からも!」

 

「なんでそこまで…」

 

まんじの声が、一瞬だけ弱まる。

 

「なんでてめぇは、そこまでして教祖様に会おうとする…」

 

「会って、伝えたいことがある」

 

俺はまっすぐ、赤い複眼を見つめる。

 

「俺は、お前が背負ってきたものを知ってる。夢の中で見た。奪われる痛みも、守れなかった悔しさも、全部」

 

まんじの刃が、わずかに揺らいだ。

 

「だから言える。お前の痛みは、俺が受け止める。お前の罪も、俺が一緒に背負う。生きている限り、俺はこの罪を背負って生きる」

 

「…なんで」

 

まんじの声が、かすれる。

 

「なんで、てめぇがそこまで…」

 

「お前が、一人で背負わなくていいようにだ」

 

俺の言葉に、まんじの装甲から黒い粒子が溢れ出した。

 

それはさっきまでの攻撃的な波動とは違う。ただ、静かに、止めどなく、彼女の身体から流れ落ちていく。

 

背後の龍が、静かに唸った。

 

鉄格子の奥で、白い人影が両手を胸の前で組んでいる。

 

まんじの赤い複眼が、ゆっくりと揺れた。

 

「…てめぇ、本気で言ってるのか」

 

「本気だ」

 

俺は剣を構え直す。

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