ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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集結 Part5

「ちょっと待ってください」

 

俺はモニターの前に立ち、画面の中のテコを睨みつけた。

 

「キーボを改造するって、どういうことですか」

 

「言葉通りの意味だよ」

 

テコは研究所「龍宮」のラボから通信を繋いでいるらしい。背後には無数の工具や計器類が並び、青白いホログラムが空中に浮かんでいた。彼は平然とした顔で、手元の端末を操作しながら続ける。

 

「ゼッツエクストリームのボディを現実世界で再現するには、既存の機械装甲では限界がある。だが、彼のフレーム構造と成長型AIは、理想的なベースになり得る。だから改造するんだよ」

 

「だからって…」

 

俺は振り返る。

 

基地の中央で、キーボが拘束台に固定されていた。手足は金属製のベルトでがっちりと抑えられ、胸部の装甲パネルが外されて内部機構がむき出しになっている。

 

「ボクは、その…大丈夫です、万津さん」

 

キーボが、無理に明るい声を出した。

 

「テコさんの設計図は、事前に確認しました。理論上は、危険はありません」

 

「理論上は、な」

 

俺は拘束台に歩み寄る。

 

「そもそも、なんで拘束されてるんだ」

 

「それはですね…」

 

キーボの声が、少しだけ小さくなる。

 

「改造中に動くと危ないから、という説明でしたが、多分、入間さんが楽しんでるだけだと思います」

 

その瞬間、拘束台の向こうから高笑いが響いた。

 

「ひゃーっはっはっ! 天才のオレ様に任せりゃ、こんな改造は朝飯前だぜ!」

 

入間美兎が、両手に工具を抱えて現れる。腰まである金髪を振り乱し、ゴーグルを額に押し上げた彼女の顔は、興奮で紅潮していた。

 

「見ろよこの内部フレーム! 軽量なのに剛性が高くて、しかも自己修復機能まで搭載してやがる! こいつをベースにすりゃ、ゼッツエクストリームの装甲を完全再現できるぜ!」

 

「入間さん、工具が近いです。それ、多分ボクの顔面スレスレです」

 

「細かいことは気にすんな! 天才の仕事に口出しするんじゃねえ!」

 

彼女はキーボの警告を完全に無視し、むき出しの内部機構へドライバーを突っ込んだ。キィン、という金属音と共に、何かが外れる音がする。

 

「あ、今の、多分外しちゃいけない部品です」

 

「大丈夫だって! 予備は三つある!」

 

「予備がある前提で作業しないでください!」

 

俺は深いため息をつき、モニターのテコへ向き直る。

 

「テコさん、あんたが監督するって話じゃなかったんですか」

 

「僕は設計と指示を出す。実際の作業は入間が担当だよ」

 

「なんでよりによってあの人を…」

 

「彼女は超高校級の発明家だ。技術力は本物だよ。作業の正確性とスピードを両立できる人材は、彼女しかいない」

 

テコの声は冷静だが、口元がほんの少しだけ歪んでいる。あれは、面白がっている時の表情だ。

 

「それに、万津くん」

 

彼は眼鏡を押し上げながら、淡々と言った。

 

「NAIXとの戦いに備えて、より強いエクスドリームの変身だけでは足りない場面が、必ず出てくる」

 

「それは…」

 

「だったら、必要な改造だよ。多少のリスクは許容するべきだ」

 

「多少、で済めばいいんですが」

 

俺が呟いた瞬間、背後で大きな火花が散った。

 

「ぎゃああっ! なんでこの配線、逆に繋がってんだ! おいテコ、設計図が間違ってんじゃねえか!」

 

「設計図は完璧だよ。君が左右を間違えたんだ」

 

「うるせえ! 天才が間違えるわけねえだろ!」

 

入間が喚きながら、何かを力任せに引き抜く。キーボの全身がビクンと跳ね、緑色のランプが一斉に点滅した。

 

「ボクの、ボクの運動制御系が、一時的に、切断されまし、た」

 

キーボの声が途切れ途切れになる。彼の頭部の機械ユニットが、カチカチと不規則な音を立てていた。

 

「大丈夫だって! すぐ繋ぎ直すから!」

 

「入間さん、信用していいんですか!」

 

「あったりまえだろ! オレ様を誰だと思ってんだ!」

 

彼女は新しいケーブルを掴み、むき出しの端子へ勢いよく差し込んだ。

 

瞬間、基地全体が震えた。

 

すべての照明が一瞬消え、非常灯だけが赤く点滅する。パソコンの画面が乱れ、テコの映像がノイズに飲まれた。

 

「な、なんだ!?」

 

「あー…」

 

入間が、首を傾げる。

 

「もしかして、電源系統と動力系統をクロスさせちまったかも」

 

「かも、じゃないです!」

 

俺は拘束台へ駆け寄ろうとして、足を止めた。

 

キーボの全身から、白い煙が噴き出している。胸部の装甲がカタカタと震え、内部から異様な光が漏れていた。

 

「万津さん」

 

キーボが、静かに言った。

 

「多分、爆発します」

 

「え」

 

「爆発します。ボクの自己診断プログラムが、そう言ってます」

 

「ちょっと待て、入間! なんとかしろ!」

 

「無理だ! もう臨界点超えてる! 全員伏せろ!」

 

俺は反射的にその場に伏せた。

 

次の瞬間、轟音が基地を揺るがした。

 

煙が晴れた時、キーボは拘束台の上で真っ黒に煤けていた。頭部の機械ユニットからは、細い煙が細々と立ち昇っている。入間は壁に背中を預けて座り込み、ゴーグルがずり落ちていた。

 

モニターの中では、テコが平然と端末を操作している。

 

「ふむ。想定の範囲内だね」

 

「どこがだ!」

 

俺は思わず叫んだ。

 

「大丈夫。データは取れた。次は成功するよ」

 

「次があるんですか!」

 

「もちろん。僕は諦めないよ」

 

テコの口元が、確かに笑っていた。

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