ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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集結 Part7

基地には静かな緊張が漂っていた。パソコンの画面には教祖の顔が映し出されている。意識が回復したばかりの彼は、まだ少し青白い顔色だったが、その瞳には確かな光が宿っていた。

 

「皆さん、ご無事で何よりです」

 

教祖の声は、スピーカー越しでも穏やかだった。

 

「こちらこそ、無事に目を覚まされて良かった」

 

最原が帽子を軽く上げて応じる。

 

「最終決戦の前に、どうしてもお話ししておきたかったんです。戦いが終わった後に、皆さんは何をしたいですか?」

 

教祖の問いに、俺は少し考え込んだ。戦いが終わった後のことなど、正直なところ考えたこともなかった。だが、その沈黙を破ったのは伊達だった。

 

「そうだなあ……」

 

伊達はわざとらしく顎に手を当て、天井を見上げる。

 

「俺はまず、六本木の高級クラブで一晩中飲み明かす。もちろん、周りは全員美人のママさんたちだ」

 

「伊達、あなたはもう少し真面目に答えなさい」

 

アイボゥが左目から冷たい声を発する。

 

「真面目だって。俺はいつだって真面目だろ」

 

「その真面目が曲がってるのよ」

 

「曲がってない。ちょっとカーブしてるだけだ」

 

「それを曲がってるって言うの」

 

俺は思わず口を挟んだ。

 

「伊達さん、一応これから最終決戦なんですけど」

 

「分かってるよ。だからこそ、だ」

 

伊達はニヤリと笑う。

 

「死ぬ前に言っておきたいことがあるんだよ。俺が死んだら、俺のハードディスクは絶対に開くなよ。特に『資料』ってフォルダは」

 

「資料って、どんな資料なんですか」

 

最原が恐る恐る尋ねる。

 

「聞くな。聞いたらお前も共犯だ」

 

「共犯って…僕は探偵ですよ」

 

「探偵なら、なおさら開けるな。証拠隠滅で逮捕されるぞ」

 

教祖が小さく笑った。

 

「伊達さんは、相変わらずですね」

 

「そういう教祖はどうなんだ」

 

伊達が画面に向き直る。

 

「教祖は復活して、これから何をするんだ? やっぱり終末を祝うパーティーか?」

 

「いえ、私は……」

 

教祖は少し考えてから、微笑んだ。

 

「私は、まんじと一緒に桜を見に行きたいんです」

 

「桜?」

 

「はい。終天教国にも、桜の木が一本だけあるんですよ。毎年、誰にも見られずに咲いて、散っていく。それを、一度だけでいいから、まんじと一緒に見たいんです」

 

その言葉に、基地が静かになった。

 

伊達は黙って教祖を見つめ、それから小さく笑った。

 

「そりゃあ、いいな。酒はいるか?」

 

「伊達さん、桜に酒は似合いませんよ」

 

「何言ってるんだ、花見と言えば酒だろ」

 

「教祖は未成年に見えるんですけど」

 

俺が冷静にツッコミを入れると、伊達は大げさに肩をすくめた。

 

「じゃあ、ジュースで我慢するか」

 

「そうしてください」

 

「お前は何なんだ、万津。戦いが終わったら、何をする」

 

俺は少し考えてから、口を開いた。

 

「俺は……日菜さんと、脱出ゲームに行く約束をしてます」

 

「おお」

 

伊達がニヤニヤしながら身を乗り出す。

 

「ついにデートか」

 

「違います。謎解きです」

 

「謎解きデートだ」

 

「デートじゃないです」

 

「最原、お前はどうなんだ」

 

突然話を振られ、最原が帽子を深くかぶり直す。

 

「僕は……赤松さんに、ちゃんと話そうと思ってます」

 

「お、告白か」

 

「ち、違います! 話です! 話!」

 

「何の話だ」

 

「それは……その……」

 

最原の耳が真っ赤になっている。アイボゥが冷静に分析を始めた。

 

「最原終一の心拍数が急上昇しています。おそらく、赤松楓への好意を自覚していることに対する動揺でしょう」

 

「アイボゥさん!」

 

「正確な分析をしたまでです」

 

「正確でも言わなくていいことがあるんです!」

 

教祖が、画面の向こうで静かに笑った。

 

「皆さん、それぞれの『戦いの後にしたいこと』があるんですね」

 

「そうみたいだな」

 

伊達が椅子にもたれかかる。

 

「ま、でも、こういう話ができるってことは、生きて帰る理由があるってことだ」

 

「伊達にしては、たまにはいいことを言うじゃない」

 

「たまには、って言うな。俺はいつもいいことを言ってる」

 

「そのいいことが、いつも下ネタで台無しになるのよ」

 

「それは『いいこと』に含まれないのか」

 

「含まれません」

 

俺と最原の声がハモった。

 

教祖が、微笑みながら俺たちを見つめる。

 

「では、約束しましょう。戦いが終わったら、それぞれの『したいこと』を必ず叶えましょう」

 

「そうだな」

 

伊達が立ち上がる。

 

「俺は高級クラブで飲み明かす。万津は日菜ちゃんとデート。最原は赤松ちゃんに告白。教祖はまんじと花見。アイボゥは……」

 

「私は伊達のハードディスクを解析します」

 

「おい」

 

「『資料』フォルダの中身、興味がありますので」

 

「やめろ。本当にやめろ」

 

「戦いが終わった後のお楽しみです」

 

伊達が頭を抱え、俺と最原が思わず笑った。

 

画面の向こうで、教祖も声を立てて笑っている。

 

最終決戦の前の、ほんの少しの穏やかな時間。

 

俺はこの光景を、絶対に守ろうと心に誓った。

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