ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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襲撃 Part4

外の轟音が、基地の壁を伝って震えてくる。

ドガッ、ガシャン、ギャイン! と、まるで巨大な金属塊同士がかち合うような衝撃音が、昼夜を問わず響き渡っていた。終天教団の五人のロードたちが、NAIXのパワードスーツ部隊と激突しているのだ。俺達はその戦いを、安全圏であるモニター越しに見守ることしかできない。

 

「外、すごいことになってるっすね……」

天海が、顔を青くしながらモニターを覗き込んでいる。画面の中では、まんじのロードツーが蝶のマントを翻しながら敵を切り裂き、丑寅のロードファイブが赤い拳でパワードスーツを粉砕している。派手だ。頼もしい。だが、このままではジリ貧だ。NAIXの連中はTC-PERGEをばら撒きながら、自爆まで辞さない狂気じみた戦い方をしてきている。

 

「如何にも、派手にやっとるのう」

夢野が、とんがり帽子の下から小さく呟く。

「でも、外で戦ってる人たちが頑張ってくれてる間に、私達はどうするんですか?」

赤松が、不安そうに俺を見上げた。

 

「感染の拡大を止めるのが先決だ」

伊達が、いつもの軽口を叩かない真顔で端末を操作している。

「だが、どうにも嫌な予感がする。ただの空気感染じゃねえ気がするんだよな」

 

俺も同じ違和感を抱いていた。

アイボゥの解析データを改めて眺める。TC-PERGEに感染した被験者たちの脳波パターン。そこには、単なる神経損傷のデータとは思えない、奇妙な同期現象が記録されていた。

 

「アイボゥ、この波形の乱れはなんだ?」

俺がモニターの一点を指差す。

『現在解析中よ。……興味深いデータが出たわ』

アイボゥの声が、スピーカーから冷たく響く。

『TC-PERGEに感染した被験者の脳波、その周期が完全に一致しているの。まるで、同じ夢を見ているかのようにね』

 

同じ夢。

その言葉に、俺はハッとした。

ソムニウム。深層世界。Psync装置を使って潛行する、夢の世界。

もしや、このウイルスは単なる生物兵器なんかじゃない。脳の深層領域に干渉し、感染者のソムニウム同士を強制的にリンクさせ、現実世界へと侵食させているのだ。

 

「まさか、NAIXの連中が言ってた『シミュレーションの外側へ脱出する』ってのは……」

最原が、帽子のつばを強く握りしめた。

「現実を、夢の世界で上書きするつもりじゃないか!?」

 

図星だ。

ウイルスによって媒介されたナノマシンが、脳内で偽の現実を構築する。それが伝播し、人々の認識を歪め、やがては物理法則すらも狂わせて、現実世界そのものをソムニウム化してしまう。それこそが、NAIXが目論む「現実の外側」への脱出。狂った論理だが、ウイルスの拡散パターンと脳波のリンク現象が、それを裏付けていた。

 

「だったら、ウイルスを物理的に除去するだけじゃ足りないってことか」

伊達が舌打ちする。

「外で戦ってる連中に申し訳ないが、これじゃあ兵隊の数を減らしたって、根本解決にはならねえ」

 

俺は、自分の手を見下ろした。

ゼッツの力。深層世界へ潛行し、夢の理を歪める力。

現実側の防衛線は、まんじたちに任せればいい。

だが、この侵食を止めるには、ソムニウム世界の内部から干渉する必要がある。

 

「俺が行く」

俺は顔を上げ、皆を見回した。

「ソムニウム世界へ。感染源となってるリンクの中心を、叩き潰す」

 

「万津くん、そんなの自殺行為だよ!」

赤松が叫ぶ。

「ウイルスに感染した状態で深層潛行なんてしたら、二度と戻ってこれないかもしれない!」

「それでも、行かなきゃならないんだ」

俺はゼッツドライバーに手を添える。

「現実を守るために、夢の中で戦う。それが俺達のやり方だ」

 

「ソムニウム世界へ。感染源となってるリンクの中心を、叩き潰す」

 

「万津くん、そんなの自殺行為だよ!」

赤松が叫ぶ。その瞳が揺れている。ピアニストの指先が、胸の前で強く組み合わされていた。

「ウイルスに感染した状態で深層潛行なんてしたら、二度と戻ってこれないかもしれない!」

 

「それでも、行かなきゃならないんだ」

俺はゼッツドライバーに手を添える。冷たい金属の感触が、掌を通して覚悟を呼び覚ます。

「現実を守るために、夢の中で戦う。それが俺達のやり方だ」

 

伊達が、椅子に深く沈み込みながらニヤリと笑った。

「無茶するガキだぜ。ま、お前がそう言い出すのは分かってたけどな」

「伊達さん! 止めてくださいよ!」

「止めて聞くタマかよ。こいつは昔っからそうだ。理屈より先に身体が動くんだ」

伊達は軽く肩をすくめ、それから真剣な目で俺を見た。

「だが、一人で行くのは許可しねえぞ。相棒」

 

俺が何か言い返そうとした時、静かな声が割って入った。

「僕も行くよ」

 

最原が、一歩前に出る。

彼は帽子のつばをグイッと持ち上げ、俺を真っ直ぐに見据えた。その眼差しには、もう迷いも怯えもなかった。才囚学園でコロシアイに脅かされながらも、真実を追求し続けた探偵の目だ。

 

「最原くん…」

赤松が息を呑む。

 

「ウイルスに感染したままソムニウムへ潛る。それは危険だ。万津くん一人じゃ、深層の迷いに飲み込まれるかもしれない」

最原は言い聞かせるように、淡々と続ける。

「それに、NAIXが仕掛けた罠の種類や場所。それを推理し、暴くのは探偵の仕事だ」

 

彼は腰元に手を伸ばす。

そこには、見慣れないベルトが巻かれていた。

黒と紫のラインが走る、ノクスドライバー。

ノクスの変身ベルトだ。

 

「まさか、最原くんも…」

俺が呟くと、彼は小さく頷いた。

「以前、伊達さんとテコさんに手配してもらったんだ。最終決戦に備えて、ね」

 

最原はドライバーのバックルを掴み、カチャリと構える。

「超高校級の探偵が、超高校級の絶望の仕掛けた謎を解かないなんて、思えないよ」

 

俺は思わず苦笑した。

こいつも、無茶な奴だ。たった一つの真実を求めて、ためらうことなく地獄へだって飛び込む。その強さは、きっと俺の力よりも頼もしい。

 

「…分かった。一緒に行こう」

俺はゼッツドライバーを構える。

「但有言実行だぞ、最原。絶対に、生きて戻る」

 

「約束するよ」

最原が帽子を深く被り直し、俺の隣に並ぶ。

「僕たちが戻るまでは、外の戦いを頼んだ。赤松さん、伊達さん」

 

「任せなさい!」

赤松が、拳を握りしめて応える。

「私が先頭に立つ! みんなが帰ってくるまで、この場所は絶対に守るから!」

 

「おうよ。俺とアイボゥがついてる。お前らの背中は任せとけ」

伊達が片目を閉じて、親指を立てた。

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