ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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襲撃 Part5

目を開けると、そこは白かった。

 

いや、正確には白とグレーしかない世界だった。

足元には無機質なタイルが無限に続いている。壁も天井も、どこかのオフィスビルや病院の廊下のような作りだが、ドアも窓もない。ただひたすらに平行線が交差しているだけだ。

 

「……ここが、ソムニウムか」

 

俺は自分の掌を見下ろした。

現実世界で感じていた身体の重みはない。ゼッツドライバーは胸元にあり、装甲こそ展開していないが、変身に必要な準備は整っている。隣には最原が立っていた。彼もまた、ノクスドライバーを胸元に巻いたまま、鋭い目つきで周囲を警戒していた。

 

「変ですね」

最原が呟く。帽子のつばを指で押し上げながら、彼は足元のタイルを踵でコツコツと叩いた。

「今までのソムニウムとは、雰囲気が違います」

 

同感だった。

俺がこれまで潜ってきた深層世界は、もっとカオスで、もっと個人的な場所だった。対象者の記憶やトラウマが反映された歪な遊園地だったり、血塗れの教室だったり。それが「夢」だ。無意識の海から拾い上げられた、その人だけのゴミ溜めだ。

 

だが、ここは違う。

個性がない。

何もない廊下。何もない壁。色彩は限りなく乏しく、空気は死んでいるようでいて、微かに電子的なノイズが混じっている。

 

「これっていうのは……」

俺は視線を巡らせた。

「個人の夢じゃないってことか」

 

「ええ。NAIXが散布したTC-PERGEによって、感染者たちの脳波が強制的にリンクされている。ここは誰か一人の深層心理じゃない。全員の無意識がごちゃ混ぜになって、均質化された場所……そう考えるのが自然です」

 

最原が冷静に分析する。探偵らしい論理立てだ。

俺は無意識に拳を握りしめた。

均質化された夢。それが意味するのは、「迷子になりやすい」ということだ。道標となるトラウマも欲望もない。ただただ白い霧の中を彷徨うようなものだ。

 

「静かすぎるのも気になります」

最原が声を潜める。

「普通のソムニウムなら、もっと無秩序な音や幻影が見えるはずなのに、ここには……」

 

その時だ。

遠くの方から、カツン、と足音が響いた。

 

俺と最原は同時に身を固くした。

俺たちの足音じゃない。もっと乾いた、硬質な音だ。

 

「誰かいるのか?」

俺が声を張り上げる。だが、返事はない。

ただ、白い霧の向こう側で、何かが蠢いたような気がした。

 

「……万津くん」

最原がノクスドライバーに手をかけたまま、俺の背中に張り付くようにして囁く。

「気をつけてください。ここは敵地です。それも、物理的な敵じゃない。もっと質の悪い……『認識』そのものが敵になる場所かもしれません」

 

「分かってる」

俺はゼッツドライバーに手を添えつつ、ゆっくりと歩き出した。

不気味だ。

これまでの敵は、欲望や絶望という分かりやすい感情で動いていた。だがこいつらは違う。「現実なんてない」と断定し、全てを虚構で塗り替えようとする盲信者たちの夢。

 

「行こうぜ、最原。迷宮の入り口だ」

「ええ。真実は必ず見つけ出します」

 

白い廊下の奥へ、俺たちは足を踏み入れた。

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