ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ   作:ボルメテウスさん

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先輩 Part4

(そうか……火事場の馬鹿力ってこういうことか)

 

俺は呼吸を整えながら伊達さんの動きを追った。先ほどの説明がまだ腑に落ちていないが、確かに身体は軽い。普段より俊敏に反応できている実感がある。

 

「お前の身体は確実に適応し始めている」

 

伊達さんが一歩踏み込む。鋭いパンチが頬をかすめる。反射的に腕を上げたが間に合わず、顎先を打たれる。

 

「痛ってぇ!」

 

よろめいた拍子に後頭部を壁に叩きつけた。視界が一瞬歪む。

 

「ここで死ぬか生きるかだ、万津」

 

伊達さんの声が遠く響く。痛みが脳裏で炸裂し思考が真っ白になる——はずだった。

 

「……おかしい」

 

次の瞬間、思考が冴えてきた。鼓動が加速し血液が沸騰する。視界の隅で伊達さんの動きが遅く見える。

 

「見えてきた……!」

 

咄嗟に体をひねると、死角から飛んできたハイキックをかわした。偶然ではない。確かに見えていた。

 

「ほう……」

 

伊達さんが眉を上げる。

 

(なんだこの感覚……痛みが逆に頭を冴えさせる?)

 

伊達さんが構えを解く。義眼が青く点滅している。

 

「やはりな」

 

「なにがです?」

 

冷や汗が首筋を伝う。自分でもわかるほど鼓動が速い。

 

「万津……お前のその能力は超高校級の不運から来ている」

 

「不運?俺の?」

 

思わず声が裏返る。伊達さんは小さく頷いた。

 

「お前は今まで数多くの死線を潜り抜けてきた。交通事故に遭い、落石で圧死しかけ、高所から転落し……挙句の果てには蛇に噛まれて命の危機に晒されている」

 

「全部本当だけど……」

 

「普通なら一度で魂が折れるレベルだ」

 

伊達さんの義眼が冷たく光る。

 

「だがお前は生き延びた。そして……その度に身体が対応する術を得たんだ」

 

「どういうことですか?」

 

「簡単に言えば」

 

彼は右手を握り締めた。

 

「死の淵に立たされた人間は生存本能が極限まで研ぎ澄まされる。いわゆる火事場の馬鹿力だ」

 

「それが……俺にもあるってこと?」

 

「あるどころか」

 

伊達さんは壁際に並ぶ電子ボードを操作した。立体投影画面が空中に展開される。

 

「お前のデータによると」

 

そこに映し出されたのは俺の体組織や神経系の詳細図。

 

「危機的状況下での脳波活性パターンが異常値を示してる。普通の人間なら一度の臨死体験で精神が崩壊するレベルだ」

 

「それって……俺の脳が壊れてるってことですか?」

 

思わず呟くと、伊達さんは首を振った。

 

「壊れてるんじゃない。進化してるんだ」

 

「進化?」

 

「不運がお前の身体を鍛え続けた結果」

 

画面が切り替わる。青と赤のグラフが縦横無尽に絡み合う。

 

「お前の火事場の馬鹿力は他者の比じゃない。しかも意識的に使える可能性まである」

 

「そんなの……まるで漫画じゃないですか」

 

「現実はいつも想像を超えるものだ。けれど」

 

「だが一つ問題がある」

 

伊達さんの声が突然低くなった。義眼の光が赤に変わる。

 

「その火事場の馬鹿力は諸刃の剣だ」

 

「どういう意味です?」

 

「お前の身体がその力を発揮する時」

 

彼は拳を握りしめた。

 

「脳内の神経伝達物質が異常放出され、筋組織に過度な負荷がかかり過ぎる」

 

「それってつまり?」

 

「現実で使い過ぎると、死んでしまうってことです」

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