ダンガンロンパZ 希望のライダーと悪夢のビデオ 作:ボルメテウスさん
「やるしかねぇな!」
俺の叫びに、最原が強く頷く。
「ええ! 彼女を止めるには、力がいる!」
俺は懐からエクスドリームライズカプセムを取り出した。透明な半球ドームに宝石状の凹凸。ライトグリーンの回転ダイヤルが、俺の覚悟に呼応するように鈍く光る。そして胸元のゼッツエクスドリームドライバーへ、叩き込むように装填した。
『フルライズ!』
電子音声が響き渡る。俺はドライバー右側の入力レバー、エクストリガムを強く押し込む。カプセム正面のダイヤルが回転を始めると、七色の光が万華鏡のように激しく明滅した。
『メツァメロ……! メツァメロ! メツァメロ!! メツァメロ!!!』
待機音が脳を直接揺さぶる。現実と夢の境界を超えるための起動シークエンス。俺は一瞬の迷いもなく、ダイヤルを縦方向へ回転させた。
「変身!」
『アブソリュート!ライダー!ゼッツ!ゼッツ!ゼッツ!ゼーッツ!エクスドリーム!』
白い結晶状の光が全身を包み込む。現実の重力から解き放たれたような浮遊感。七色の粒子が渦を巻きながら装甲を形成していく。黒い素体に金色の装甲が張り付き、メタリックグリーンと赤のラインが疾走する。肩、腕、脚に鋭いZ字型の装甲が展開し、大きな赤い複眼が暗闇を切り裂いて発光した。
仮面ライダーゼッツエクスドリーム。
隣では、最原もまたノクスドライバーを起動させていた。彼が装填したカプセムから溢れ出したのは、漆黒の影だった。闇が彼の身体を覆い尽くし、忍びや探偵のそれを思わせる軽量かつ鋭敏な装甲へと凝固していく。紫の複眼が静かに光り、闇に溶け込むような佇まい。
仮面ライダーノクスミッドナイトシャドウ。
「行くぜ、最原!」
「ええ、万津くん!」
「うおおおおッ!」
俺は床を蹴り、夢現へと肉薄する。手にはブレイカムゼッツァーの刃が光を放っている。エクスドリームの加速機能を全開にし、金色の残像を引き連れての横薙ぎ!
対する最原は、俺とは逆サイドから影を潜って急襲していた。ブレイカムバスターをカリバーモードに展開し、虚を突くような鋭い突きを繰り出す。
完璧な連携だ。俺の大振りを受けようとすれば最原の刺突が決まり、最原を払おうとすれば俺の剣が届く。そう読んでいた。
だが。
『……』
夢現は、動かなかった。
ただ静かに、細身の刀を立てただけだ。
ギインッ!!
乾いた金属音が響き、俺の剣が弾かれた。いや、弾かれたというより、「流された」。彼女の刀はまるで意志を持った生き物のように俺の剣筋を読み、最小限の動きで軌道を逸らしたのだ。
続いて最原の刺突が迫る。
夢現の刀がしなやかに返し、その切っ先をカリバーの腹に当てて軌道をずらす。シィン、という澄んだ音と共に、最原の攻撃も空を切った。
「なっ……!」
俺は驚愕に目を見開く。
反動で体勢を崩しそうになるのを踏ん張りで堪えるが、夢現は依然として微動だにしていない。いや、よく見れば彼女の左半身――覚醒側の装甲が微かに赤く発光し、俺の放ったエネルギーを弾き返していた。
「重い剣だこと」
夢現が呟く。声に感情はない。
「だが、迷いがある。芯がない剣など、ただの鉄屑だわ」
彼女の右半身――薄目を開いた眠りの側が、ふわりと陽炎のように揺らいだ気がした。その瞬間、俺の身体から力が抜けるような感覚。まるで攻撃の勢いごと吸い取られたかのような脱力感。
「万津くん、下がって!」
最原が叫ぶのと同時に、夢現の刀が動いた。
白銀の閃光。
ただの一振り。それだけで俺と最原は左右へ弾き飛ばされた。まるで台風の中の枯れ葉のように。俺は床を数メートル滑り、なんとかブレイカムゼッツァーを突き立てて停止する。
「くそっ……なんだあの刀さばきは……!」
俺は荒い息を吐きながら立ち上がる。
パワーでもスピードでも負けているわけじゃない。だが、「読まれている」。俺たちの動きも、意思も、何もかもがお見通しなのだ。あの左右非対称の身体は、攻撃と防御、奪うことと受け流すことを同時に成立させている。
「だけど、何かあるっ」